《琴葉とすもも②》身を張って
小学生になった『琴葉』とすっかり、成年となった『すもも』は、いつもの日課であるすももの散歩へと出掛けていたのだった。
家の近所を1周回るだけの、約10分程度の軽い散歩コースだったが、今日に限って、もう30分も経つのに、二人はまだ、帰宅していなかったのだった。
少し、胸騒ぎしたあたしは、家の玄関で二人が帰ってくるのを、待っていた。
すると!!!
「ワン!ワン!ワン!」
遥か彼方から、赤いリードを引きづってこちらに走ってくる白い犬の姿が見えた!
「すもも! 琴葉は!!!」
そこには琴葉の姿がなく、いつもは穏やかなすももが、一人、あたしに何かを伝える様に、激しく吠えていた!
「琴葉に、何かあったのね! すもも! あたしをそこに連れてって!!!」
そこには言葉はないけど、あたしはすももの訴えがはっきりと分かったのだった。
その訴えに覚悟を決めて、すもものリードを握りしめたあたしは、すももが引っ張って行く方へと、激しい動揺の中、走っていった。
(琴葉、琴葉! 無事でいて、、、!)
すももは、身体にリードをくい込ましながら、全力であたしを引っ張っていた!
そして、近所の曲がり角を抜けた先には、一人の男子学生と自転車、そして地面には、しゃがんで泣いている琴葉の姿があったのよ!
「琴葉ぁぁぁぁ!」
「ワン!ワン!ワン!」
怯えた顔をした男子学生を横目に、あたしは、しゃがんで泣いている琴葉に近づいて行った。
「琴葉!!! 大丈夫???」
「うん、、、」
あたしの焦った口調に、琴葉は小声で答えた。
(ふう、良かったわ! 血は出てるけど、擦り傷で済んだみたいね!)
そう安堵した矢先、
「すみませんでした。ごめんなさいぃ!」
と、震えた声で謝罪してきた男子学生の姿があった。
一瞬、鬼の形相になったあたしだったが、その男子学生の怯えながら謝罪する姿を見たあたしは、急にその怒りが冷め、その一部始終をその男子学生から聞いたわ!
その男子学生の証言では、こうだった。
スマホを見ながら、自転車に乗っていた彼が、曲がり角を曲がろとした時、
突然その前に、琴葉とすももが現れて、自転車は琴葉に直撃を免れない状態だったらしいの!
慌てふためき自転車のハンドルを左右に振った男子学生と、恐怖で動けなくなった琴葉。
あわや直撃!と、男子学生が観念した時、リードで繋がっていた『すもも』が、その小さな身体で、全身にリードをくい込ませながら、琴葉を引っ張って、その身体を転がし、琴葉を引きづって直撃は避けれたみたいだったの。
間一髪だったらしい。
その状況を聞いた瞬間、あたしは、男子学生に対する怒りより、すももの体を張って琴葉を救ってくれた事に、猛烈に感動していたのだった。
「すもも、ありがとう! その小さな身体で琴葉を助けてくれて、、、」
「クゥ~~ン」
お礼を告げたあたしに、すももは寄りそり甘えてきた。
「よしよしよし~♪ ありがとうね~すもも♪」
あたしは、リードの跡が残っている痛々しいすももの胴体を、両手でスリスリしながら、懸命に感謝をすももに伝えたの。
「クゥ~ クゥ~」
その時、なんだかすももは、「当たり前だよ!」って言って来た気がした、、、
そうして、あたしは男子学生に厳しく厳重注意し、足を怪我した琴葉をおんぶしながら、すもものリードを持ち、あたし達は帰路を歩いて行ったのだった。




