《学生編①》春の陽気に誘われて
【短編小説】
《犬愛情物語り①》電車の中で大きな寝言を叫んでしまい、少し恥ずかしかったのですが、、、なんだか心が暖かくなりました。
の、その後です。
そんなあたしも、地元の高校を無事に卒業し、この春から都内にある大学へと進学する事となった。
その初日、、、
「うわぁ~ 桜がいっぱい! 綺麗♪」
あたしは今、桜並木が続いている大学内のメイン通路を、不安と希望が入り交じった気持ちのまま、歩き進んでいた。
その道の両脇の満開の桜に、その目を奪われながら、、、
すると、その時!
「ワンワン!」
どこからか犬の鳴き声が聞こえたの。
(あれ? ここは大学の中なのに、犬? それにこの鳴き声!何だか聞いた事があるような、、、)
あたしは、そんな事を思いながら、後ろを振り向くと、そこには犬ではなく、一人の青年がしゃがんで居たの!
「あの~ すみません。このクリアファイル、落としましたよ!」
「あっあっ!」
その清潔感ただよる好青年は、あたしが脇に挟んでいた筈のクリアファイルを差し出してきたの。
「あっ ありがとうございますぅ!」
あれれ?知らないうちに脇から、落としていたらしい。
そのクリアファイルを受け取ったあたしは、慌ててお礼を言った。
しばしの沈黙を経て、彼が恥ずかしそうに話しかけてきたの。
「あの~ もしかして、君も新入生かなぁ?」
「あっ はい!そうですけど?」
そう答えると、彼は頭を抱えながら答えた。
「やっやっぱり、いやぁ~ 僕も今日、田舎から出てきたばかりで、初めての都会で、、、
ちょっちょっと、迷っちゃっててさぁ~
君も今からこの案内に載っている集合場所に行くの?」
「は、はいそうですけど、、、?」
すると彼は申し訳そうに、手を合わしながらお辞儀した。
「お願いします!僕もそこに連れてってください!」
「、、、クスクス」
あたしは彼のそのリアクションに、思わず笑ってしまった。
そうして、あたし達は会場までの短い道のりを、自己紹介しながら一緒に歩いたの。
彼の名前は、「多屋部 颯太」さんって言うの。
東北からはるばる都内まで、進学してきたらしいの!
地方から一人で出てきて、一人暮らしって凄いなぁ~
あたしなんて、、、自宅通いの未だに親のすねかじりだよぉ~トホホホ
そんなこんなで、短い時間だったけど、彼との会話はとても楽しかったの。
のんびりとした故郷の事。
こっちに受験に来た時、大雪で大変だった事。
そして何より盛り上がったのが、犬の話だったの!
突如、あたしが昔、チワワの『もも』を飼っていた話になった時、彼は今、東北の実家に置いてきた、子供の頃から一緒にいる犬がいる話となった。
もちろん、その子は今も元気に生きているらしいの。
もう、10年以上も飼っているシニア犬らしいけどね!
それでも、あたしは羨ましかった。
彼のその犬の話を聞いている内に、あたしは昔に亡くなったチワワの『もも』 の事を思いだし、胸が熱くなった!
そしたらふと、さっきクリアファイルを拾ってくれた時に聞こえて来た犬の鳴き声が、『もも』に似ていた事に気付いたの。
まっ、そんなはずないもんね!
『もも』は、とっくの昔に亡くなってしまってるんだから、、、
そんな事を思いながら、あたし達は会場へとたどり着いたのだった。
そしてこれが、あたしと『颯太』との初めての出会いだったわ。




