表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/13

第十一話 完成、そして離脱

惑星を脱し、

宇宙空間へと至ったUAUは、

先ほどまでとは明らかに異なる挙動を示していた。


散開は行われない。

軌道の交差もない。


すべてが一列に整列し、

等速のまま、

CUTBEへと向かって進行していた。


惑星上で見られた個体差は影を潜め、

そこにあるのは、

秩序だった帰還行動だけだった。


UAUの帰還は、

CUTBEの複数の観測系によって捉えられており、

すべてのUAUは個別の反応として確認されていた。


秩序だって帰還してくるUAUの映像が複数並ぶ中で、

その一部は、一機のUAUにしか見えなかった。


UAUはそのまま、

進路を変えることなくCUTBEへと向かい、

隊列を崩すこともなく、

吸い込まれるように帰還を終えた。


帰還行動を終えたUAUは、

順次、格納区画に割り当てられた位置へと収まっていった。


所定の位置に固定された後、

そこに可動部や接続部が残ることはない。


視認できるのは、

初めからそうであったかのような、

継ぎ目の存在しない壁面だけだった。


全区画の状態が安定したのち、

セバスチャンが報告する。


「マスター。

すべてのUAUが帰還し、格納を完了しました。

UAUおよびモノリスから送信された情報は、

現在、CUTBEにより集約・解析が進められています」


中空には、海洋惑星を模した球状の立体図。

大陸と海、海流と地形。

各所に設置されたモノリスの位置。


情報は簡潔に整理され、

惑星全体の状態が一望できる。


マスターは指標を確認し、口を開いた。


「……設置に問題はないようだな」


その言葉に、

アリアがわずかに間を置いて応じる。


「つまり――

これで箱庭は完成、ってことね」


マスターはすぐには答えなかった。


「……そういうことだ」


アリアは小さく胸を張った。


「それで?」


「初期の恒星系に介入して、

この海洋惑星は整ったわけだけど」


「まさか、

ここからはこの惑星を眺めてるだけ、

なんてことはないわよね?」


「流石にそれだと、

変化が平坦すぎて――

暇つぶしが、

暇になっちゃうわ」


マスターはすぐには反応しなかった。


「……確かに、ここからは待つだけになるな」


少しの間のち、セバスチャンが口を開く。


「よろしければ、提案がございます」


マスターが視線で先を促す。


セバスチャンは一礼した。


「以前、巡回した恒星系の中には、

 探査機やモノリスを設置した惑星が複数存在します」


「それらの惑星を再訪し、

 現在の状態を確認しては、いかがでしょうか」


「一定数を観測した後、

 再びこちらへ戻る形であれば、

 経過の比較も可能です」


「あら、いいわね、それ」


アリアは軽い調子で続ける。


「このままここで観測してたら、ただでさえ動かないマスターが……

 椅子と同化しちゃうもの」


マスターは何も言わず、アリアを見る。

アリアはすぐに目をそらした。


「……冗談は置いておいて」


「マスター、それ、いいんじゃない?

ちょうど頃合いになってる惑星もあるでしょうし。巡回、行きましょ」


アリアはセバスチャンを見る。


セバスチャンはうなずき、マスターへ向き直った。


「候補はいくつかございます。いかがなさいますか」


マスターはわずかな間を置く。


「……候補の数と巡回順は、二人に任せる」


アリアはセバスチャンへ目を向ける。


「じゃあ、いくつか候補を出して。

全部じゃなくていいわ。今、見に行くのに向いてるやつ」


「承知しました」


表示が切り替わる。

球状の立体図は縮退し、整然とした一覧が展開された。


惑星の組成と環境条件、生命反応の有無。

観測上の短い注記が添えられている。


母星型惑星――高酸素濃度。巨大生物を確認。知性未獲得。

連星系惑星――乾燥。現状、生物反応なし。生命の可能性は僅少。

潮汐固定惑星――昼夜境界面の一部が安定。生命反応あり。知性体なし。


同様の項目は、さらに下へと続いていた。

だが、今この場で必要なのは“全部”ではない。


アリアは一覧を見渡す。


「微生物の段階を見張ってても、今は面白くないわね。

現状、楽しめそうなのは――巨大生物がいる惑星かしら」


指先が最上段で止まる。


「ここにいる間に、他の惑星でも変化は出るでしょうし。

とりあえず、まずはそこ。行きましょ」


セバスチャンもうなずいた。


「現状、その惑星が無難かと存じます。

他の候補にも可能性はございますが、現段階では、変化が平坦になる可能性のほうが高いと思われます」


セバスチャンは一歩前に出る。


「当該惑星を優先巡回対象として設定いたします。よろしいでしょうか」


マスターは応じた。


「……分かった。それでいい」


セバスチャンは一礼する。


「承知しました。

軌道中の環を格納し、移動準備に入ります」


展開されていた環が動き出す。

それは静かにCUTBEへ吸い込まれるように格納され、元の姿へ戻った。


「格納、完了しました。

時空圧縮移動を開始します」


その宣言と同時に、CUTBEは巨大生物が確認された恒星系へ向け、時空圧縮を開始した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ