矢
519:名無しの村人:20XX/10/25 21:46 ID:Ri2988iNH
私は特殊な村に生まれた。
大学入学のために村を出てから、私は本当にたまげた。
私の村があまりにもおかしいと気付いたから。
ドラマとかで見るたびに「やっぱ大都会は違うなー」
なんて思っていたし家族もそんな感じだったけど、
他と違うのは私の村の方だった。
村は、10代の若者は数えるほどしかいない。
小さい子どもはゼロ。
ほとんどが高齢者になってしまって、限界集落みたいな感じ。
場所は伏せさせてね。
私は大学を卒業して村の外の世界を知り、
自分では垢ぬけたと思いながら村に帰った。
都会での就職に失敗しちゃったの。
資格の勉強をして就活をして、
食つなぐためにバイトを入れまくってってしてたら、
お金も体力も尽きてしまっていったん実家に戻ることにした。
520:名無しの怖がりさん:20XX/10/25 21:47 ID:28rI+osur
特殊な村! 興味深いな
521:名無しの怖がりさん:20XX/10/25 21:49 ID:MnJuTyRdf
何が特殊なんだろうwktk
522:名無しの村人:20XX/10/25 21:50 ID:Ri2988iNH
村に帰ったらね、なんと20代の若者がお嫁さんを連れて帰ってた。
村は大喜び。
なぜって、その家の屋根に矢が刺さってたの。赤色の矢。
奥さんが村に来た一月後くらいに、
朝、起きだしたその家のお婆ちゃんが発見した。
これ、私の村では“赤ちゃんを授かったよ”っていう合図なの。
その矢が刺さった家
村の神様が弓矢で教えてくれるのよ。
ちなみに黒い矢だと、“×人が出る”って意味になる。
私は日本全国そうだと思っていて、大学で大恥をかいたことがある。
他の村や町の神様が、人間に対してそういう合図を送るのが
当たり前だと思ってたの。
都会はあまりにも人間が多すぎて
神様が足りなくてやらないんだって思ってた。
今思い出しても恥ずかしいや。
まぁとにかく、村は新しい命にとても喜んだの。
村の子どもは誰しも、誰が矢を屋根に刺したのか気になって
徹夜で見張ったりしたものよ。
懐かしいなぁ。
誰も矢が刺さるところを見た人はいないけどね。
523:名無しの怖がりさん:20XX/10/25 21:52 ID:MnJuTyRdf
そういう系か!
10代後半まで日本全国そうだと思ってたってなかなかだなw
524:名無しの怖がりさん:20XX/10/25 21:53 ID:mnBHBYueq
かなり閉鎖された村ってイメージになったw
525:名無しの村人:20XX/10/25 21:56 ID:Ri2988iNH
ただね、村の人たちは歓迎ムードだけど、
奥さんはものすごく怖かったみたい。
まあ、よその土地の神様なんて怖い存在なのかも知れないね。
それか、矢って武器だから、
そんなものが家の屋根に刺さってたら
身の危険を感じるって意味で怖かったのかも。
私は村の外の世界を経験しているから分かる。
大学の友人には何それこわっ! て言われたし。
そりゃ知らなかったら怖いよねって思うけど、
村の人は生まれたときからそれが当たり前だから怖いが通じない。
奥さんは、私が村の外を知ってるって分かると、
私によく話しかけてくるようになった。
私も知らない風習の場所にひとりきりって気持ちが分かるから、
歳も近いしね、一緒にお茶して、奥さんの話し相手になったの。
奥さんは検査薬と病院で妊娠を確認して、
だんだんつわりやお腹が大きくなってきた。
そうしたら、奥さん、ヒステリーっていうか、
興奮したり落ち込んだりがかなり激しくなっていった。
私は怖くなってお母さんに相談したら、
妊娠中ってあるみたいね。人によって程度も症状も様々だけど、
お母さんもそんな時期があったって。
奥さんの旦那さんや旦那さんの実家の人たちは
みんな朴訥としていて優しい人たちだから、
奥さんを一生懸命支えてた。
526:名無しの怖がりさん:20XX/10/25 21:58 ID:sdzxcnMIk
奥さんノイローゼでは
527:名無しの怖がりさん:20XX/10/25 22:00 ID:Po+ku7HV5
できれば奥さんを奥さん実家とかそっちの病院に
連れて行ってあげて欲しい……
528:名無しの怖がりさん:20XX/10/25 22:02 ID:+ksy4t45B
奥さん大変だけど
矢が刺さるってなんやねん怖いわ日本昔話やん
白羽の矢が立つっていうんは神様の生贄って意味だったと思うが
529:名無しの村人:20XX/10/25 22:03 ID:Ri2988iNH
奥さんは村の外の病院に入院することになったよ。
でも、駄目だった。
お子さんを生んだけど、その子を手にかけた。
奥さんは、『これは私の子どもじゃない』って叫んでいたそう。
『弓矢を持った化け物の子だ』って。
その日、そこの旦那さんの家には黒い矢が刺さってた。
ちなみにうちの村の神様は悪い神様じゃないよ。
ただ村人に矢で教えてくれるだけで、何の害もない。
村では時節ごとにその神様の神社でお祭りがあるけど、
ふだん食べないごちそうが各家に並んで
男衆の後ろについて子どもも回って
色んな家でごちそうが食べられて、
お菓子とか貰えてとても楽しかった。
私はまだ村に子どもがいた時代だったけと、
数人しかいなかったから可愛がられて歓迎されたから、
嫌な思い出とか全然ないの。
村の人は神様を信じてるし、神社にまつってる。
だってもし化け物なら、私も他の村の人も、
みんなその“化け物”の子どもになっちゃうじゃない。
でも残念ながら、いたって平凡な人間です。
530:名無しの村人:20XX/10/25 22:09 ID:Ri2988iNH
でも奥さんはそっちの方向に考えてしまったのね。
朝起きたら屋根に矢が刺さってるなんて、怪奇現象だもの。
そして手遅れになるほど追い詰められ、悲劇が起きてしまった。
恐らく、奥さんは怖いとずっと訴えていたはずなんだけど、
村の人も旦那さんも旦那さんの家族も
おめでたいことだと信じてるから(実際そうだから)、
家に“誰が射たのかも分からない矢が刺さってる”恐怖
って心理を理解できなかったんだろうな。
私はもちろん、この旦那さんのこと知ってる。
子どもの頃、お兄ちゃん、お兄ちゃんって
子どもたち皆が慕ってついていってた、
優しくて頼りになるちょっと年上の男の子だった。
村の人も皆仲良しで、フレンドリーだったから、
私は外の世界の無関心さや攻撃的なところに心底驚いた。
私だって大学で親友っていえる友達ができたから良かったけど、
そうでなかったらたぶん鬱になってた。
本当に数ヶ月は辛かったから。
きっとこの村に来た外の人も同じ気持ちになると思う。
理解できない文化っていうか。
カルチャーショック? 違うかな?
特に妊娠なんて体調とかホルモンとかすごく変わるっていうし。
私たちには分からないくらい辛かったんだと思う。
でも、そこまで恐れている妊婦さんを村にとどめた、
この村と村人が一番ホラーだよね、って話。




