0517 浴衣姿
浴衣。
現代じゃ夏限定の仮想衣装扱いだが本来は室内着としての役割を持っている。
つまるところ着心地が良い。
「ので、俺は夏場浴衣を部屋着にしているんだ」
「…まぁ部屋着なら良いんじゃないか?」
「あぁ、俺もそう思う。
だが浴衣男子って言うのの母数がいない。
俺が部屋で浴衣を着ていた所で誰も何も見向きもしない訳だ」
「もしかして浴衣を見せたくて俺を呼んだのか?」
「まぁそう言うのもあるんだけど、どうやったら全国の部屋着浴衣を増やせると思う?」
「…はぁ?」
「お前そう言うの得意だろ?バズらせのプロ」
まぁ得意ではある。
と言うかこういうのはどれだけ手段と考え方を知っているかと言うだけで別に特殊な技法でもないのだが、それよりなにより動機が気になる。
「お前何で部屋着浴衣バズらせたいの?」
「同じものを好きな奴を増やしたい。自分が好きな物を知ってもらいたい。それに理由なんているか?」
「いる。
どういう理由でバズらせたいのかによって取る手段が変わるからな」
友人は少し無言になってから消え入りそうな声で言う。
「そりゃ…使いやすくてカッコいい浴衣が増えて欲しいからな」
「…洒落っ気0だったお前が浴衣に目覚めるとはな。
なら一般大衆向けのバズらせって事になるわけか」
頭をひねり考える。
ファッションに無頓着だった友人の嬉しい変化に心躍らせる。
今年の夏が面白くなる予感を肌で感じながらペンと紙を手に取った。