0617 君の味方
「彼女が変な宗教にハマっちゃったんよね。
知らん人がいつの間にか家にいるし、家具が一式変わって変な祭壇出来ているし、いつの間にか共同貯金も使われていた。
俺が成功したのは神様のお陰なんて言っているけど正直身の毛がよだったよ」
「なるほど。
それで俺の家まで来たわけか…。
でもそれなら民事不介入の俺じゃなくて安室の方が良かったんじゃないか?
あいつ弁護士だろ」
「いや、その宗教を紹介したのが安室らしい」
「おい、終わってんな。
てか彼女さんその宗教何教って言ってた?」
「未界の教えって言ってた」
「…それカイコウ教だな。
ガチでヤバい奴だよ」
宗教の名前を聞いて俺は気を引き締めた。
「未界の教え」またの名を「カイコウ教」
現世界に救いが無いのはこの時間に神がいないから。神は未来の時間に存在しており、自分たちが会いに来るのを待っている―――と言うのが基礎的な考えでその教えを信じる者たちは『神に会いに行く為』様々な活動をする。
このカイコウ教。知名度はそこまで高くないし一般信徒も外面は物凄く良い。
しかし刑事4課である自分はカイコウ教のヤバさを知っている。
「ヤバい?
危険な宗教なのか?」
「10年前、東京府で飛行機が大電波塔に突っ込んで100名以上が無くなった事件あるだろ。
あれにカイコウ教が関わっているのはほぼ確実だな」
「え!?
教科書に載るレベルの大犯罪じゃん」
「正確にはカイコウ教はその時に組織されてなかったんだけど実行犯の男が教祖を名乗ってる」
「それ指名手配とかされてないの?」
「されてない。
あの事件は辺り一帯が焼け野原になった事もあって記録が残っていないんだよ。
手掛かりとして似顔絵は出されているけど確固たる証拠が無いから起訴されてないからね」
互に沈黙―――。
「お前逃げろ」
「え?」
「お前さん旅に出るのは得意だろ。
彼女さんと縁を切って逃げた方が良い」
「そこまで言うレベルなのか?」
「あぁ。
元々あの女ヤンデレ気質だったろ。
それがヤバい宗教と一緒になったら何が起こるか分からんし一度行方を暗ませた方が良いと思う」
「…だよな。
お前が友達で良かったぜ」
彼はその場から立ち上がって出口に向かう。
「んじゃ、今から半年くらいドロンするわ」
そう言って彼は部屋から出て行く。
本当に彼は半年間連絡がつかなくなるのだろう。
だが、それでもそれが過ぎれば再び連絡が取れる確信があった。
その時には新居を探したり仕事を見つけたり面倒事が増えるのだろう。
だがしかし、そんな気まぐれで危なっかしくフットワークの軽すぎる彼は私の誇りだった。
君の味方。
この言葉を聞いた時、「友達」ではないなと思いました。
友は良くも悪くも『味方』になりえない事があります。
なら味方になりえる人は誰なのか。
僕は「支援者」だと思い。友達と言うには希薄で、それでいて尊敬の念を抱く人間関係…ってのをイメージして書きました。