0525 輝く笑顔
池袋の東口、某カフェ。
四人掛けの丸テーブルを陣取って、野郎二人で座っていた。
互に店の中で一番安いコーヒーのSサイズをチョイス。俺はアイス。あいつはホット。
互に嫌な予感を感じてニコニコ笑顔で対面し早5分。
「俺さ、家無くなったんだよね」
「え、マジ?
俺もなんだよね」
「うっそぉ!仲間じゃん!!」
「マジかぁー!」
互に笑いあった。
俺の傍らにはおっきなカバンとキャリーケース。
あいつの傍らにもキャリーケースが二つ。
「それ荷物?」
「そうそう。
家電とかどうした?」
「長野の実家に送ったよ。
お前は?」
「うっぱらったわ、ハハハ」
「ハハハハハハ」
輝くほどの笑顔だった。
「で、どうする?」
「お前を頼るつもりだったんだけどさ、別の奴頼むわ」
「俺もそうするけどガヤちゃんとかどう?」
「あぁ、それ良いかもな」
目の前の男はその場で電話を取り出し耳にスマホを当てる。
「ガヤちゃん―――うん?あ、うん…。
なるほど、消防は?
うん。
おっけ」
電話を切って俺に向って笑顔で一言。
「ガヤちゃんち燃えたって」
「アハハ、燃えちゃったか」
「燃えちゃったかぁ―…」
互に笑いあって俺はコーヒーを飲み切った。
「あと一人家ない奴いねーかな」
「うわぁ、物騒。
で、そんな奴探してどうするの?」
「そんだけ家ない奴がいれば集団割引きでカプセルホテル泊まれそうだからな」
「なるほどなるほど。それなら皆で1件借りるか?」
「あー。アリかもな」
「んじゃ、まずは家無い奴探すか」
「オッケー。イガちゃんに落ち着いたら来るように言っといて」
「ん、任された」
トントン拍子で話が進む。
ヤバい事のはずなのにこいつらとつるんでると何事も無いように進むから面白い。
何事もない平凡な幸せを噛みしめ俺は連絡先を探った。