0522 恋の導火線
「一つ屋根の下に住んでいる義理の妹が告白って状況は燃えない?」
ソファーに座っていた俺を逃がさないように、俺の両肩前から抑えてくる。
視線を上に向けると彼女は嬉しそうに言う。
「スミ。
俺を困らせるのは辞めてくれ」
「ヤダ。それにこれでも結構気を使ってるんだよ。
ずっと私を待たせているお兄ちゃんが悪い」
「俺たちは兄妹だ。
結婚はダメだろ」
「血が繋がってないから大丈夫だよ」
「母さんたちが良いと言わない」
「二人とも穏便に済ませるなら良いって言ってくれたよ」
「法律上俺は結婚できない」
「わかってる。
これは私が16歳になったからいつでも受け入れ大丈夫だよって話」
「学生結婚なんかしたら生活はどうするんだよ」
「お兄ちゃんが紐になっても生活できるだけの準備は出来ているよ」
「お前。こんなの常識的に考えておかしいだろ」
「常識は疑うに限るって言ってたのはどこのだれだっけ?」
「…俺はまだ学生だ」
「お兄ちゃんの意思を尊重するから大学は進学して良いよ」
「お前、おかしいぞ」
「ウザそうにしている割に私の事否定してこないって事は気があるって考えていいんだよね」
痛い所を突かれた。
正直俺もスミは可愛いと思うしお付き合いできるなら付き合っちゃいたい。
だがそれをすれば何かが良くないという事は良く分かる。
スミは有名なインフルエンサーで16歳でお金を稼ぎ未来への見通しが立っている。
しかし俺は矮小で陳家でどうしようもない。
今このまま彼女に流されたらダメ。---だと思う。
「なかなか決まらなさそうなお兄ちゃんに私が助け舟を出してあげよう」
「助け舟?」
「うん。
お兄ちゃんが22歳になるまで何も無かったら結婚しよう。
その間お兄ちゃんはどこに行っても、何をしてても良い。
これならお兄ちゃんは何の心配もいらないでしょ」
…なんか都合がよすぎる。
じっと俺を見下ろしてくる義妹が怖い。
もしかして何処かに何か見落としている爆弾が無いのではないか…。
そんな事を考えかけたその時、俺の顔に手を添えて顔を近づけてきた。
「お兄ちゃんは何も考えなくていいんだよ。
だから、ね」
直前まで考えていた何かが掻き消え、頭が真っ白になった。