風莉のふわり異世界旅行(4) ミッション1・恐怖に打ち勝て!
「ルミ姉様!私に戦いの技術を教えてください!」
「フウリ、突然どうしたの?あっちでは充分強いんでしょ」
「それはそうなんですけど…それは遠距離戦だったり中距離戦の話なんです。近接戦はまだまだ技術不足で、お祖父様や羽瀬兄様にも近接戦の技術だけなら遠く及びません。ですから、近接戦のスペシャリストであるルミ姉様に剣を教えて欲しいのです!」
「…なるほど。いいよ、ちゃんと教えてあげる」
「ありがとうございます!ルミ姉様!」
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「フウリ、剣士が戦う上で大切なことはなんだと思う?」
「後衛を守るために何がなんでも死なないこと、ですかね?集団戦を基本とした陰陽師としての思考ですけど」
「それも間違ってなけど、こっちの世界だと少し違う。絶対に恐怖に負けてはならないこと。
絶対に勝てないとわかっていても、確実に死ぬとわかっていても、剣士はやらねばならない時がある。時には仲間を逃すため、時には生き残るための突破口を作るために…誰よりも先に危険地帯に踏み込んで、仲間を救わなければならない。
その役割において、恐怖は邪魔でしかない。怯えるのはいいこと。実力を見極め、勝てない相手に挑まなければ無駄に命を使わなくて済むかもしれない。でもその怯えは時に仲間を殺す。
人生、いつ何があるかわからない。何があろうと、最初に動かなければならないのは剣士だ。だからフウリ、剣士として生きるなら敵に対する恐怖は捨てろ。己を律しろ。できなければ、何も為さずに野垂れ死ぬだけだ」
「っ…」
「フウリに、その覚悟はある?」
「…やります。やらせてください」
「わかった。まず言うけど、私は結構スパルタだから」
「精一杯、頑張ります!」
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「木剣は持った?」
「はい、準備できました!」
「ねえルミナリア、私が呼ばれた時点で嫌な予感しかしないのだけれど…一応聞くわ、何をする気?」
「リタは治療よろしく」
「それで伝わると思ってる?本当に思ってるなら頭に治癒魔法かけてあげないと」
「鍛錬でボコボコにするから治療よろ」
「はぁ…仕方ないわね。ゲツヤの時と同じような感じでしょう?」
「やることだけならゲツヤよりえぐいかも?」
「…何やろうとしてるのよ」
「フウリ、私の攻撃を一回防げるまで今日の鍛錬は続けるよ。痛いし苦しいし、気絶しても叩き起こすから、そのつもりでやって。攻撃を恐れたら、もっと厳しくやるから攻撃を恐れることだけはしないで」
「…ふぅ…やるだけ、やってみます!」
「ん、じゃ始め」
ルミナリアの言葉の直後、風莉は一切の抵抗も許されず、その意識を刈り取られたのだった。
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「ま、まだまだ!」
また意識を失う。
「つ、次です!」
意識を失う。
「も、もう一回!」
認識することすらできず、気づけば気絶しているような状態になって陥ること十数回。風莉は身体に鈍い痛みを植え付けるその攻撃を、恐れ始めてしまった。ルミナリアが「行くよ」と言った瞬間、風莉は咄嗟に飛風家における『守り』の体勢を取ってしまった。すると、今度は気絶せず、代わりに左太腿と右脇腹に激痛が走った。
「っ、ぁ…!」
「言ったはず。攻撃を恐れるなって」
ルミナリアの表情にはただただ冷たい、そんな厳しい思い以外が乗っていないように思えた。風莉の中で『結構愉快な人だな』とされていたルミナリアのプロフィールは、段々と『一切の容赦がない鬼のような人物』へと変わっていく。怖い。ただひたすらに、彼女が怖かった。だが、それでも…
(雷獣に風狼、縁妖凪勿…今の状態じゃ、一切、戦いの役に立たない…!)
風莉は己を奮い立たせて、無理矢理立ち上がる。
「ルミ姉様、もう一回、です」
「…ん」
ルミナリアが剣を振るった姿が一瞬見え、それを最後に風莉は気絶した。無我夢中で身体を動かしたせいで攻撃を防げたのか、防げなかったのかわからない。それでも、できる限りやった。だから今は、少し休もう…
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「ルミナリア、やりすぎ」
「ごめんなさい…」
「あのとち狂った鍛錬はゲツヤとかいう頭のネジが外れた人間だから耐えれただけで、普通は人間がやる鍛錬方法じゃないんだよ!途中で止めるか悩んだんだから!あの子自身の意思で頑張ってたから黙って見ててやったけど、普通なら再起不能の大怪我だよ!?左大腿骨が真ん中ら辺でポッキリ折れて、しかも一部内臓が衝撃で破裂って…過激にも程があるってものでしょ!」
風莉が寝転がっている布団のある部屋で、ルミナリアは正座させられ、リタから説教を受けていた。風莉が目覚めたタイミングで始めたため、風莉としてもなんと反応すればいいのか困るところである。
「まあまあ、私は人間じゃないですし、治ったからいいじゃないですか」
「フウリちゃんも自分の身体をもっと大事にしなさい!せっかく可愛い顔してるのに傷跡が残ったらどうするのよ!」
「か、かわ…でも、私は妖なので、あの程度なら1日待たずに治るんですし良くないですか?」
「はぁ…ルミナリア」
「何?」
リタが正座しているルミナリアを呼び寄せ、そのまま自分の目の前にまた正座させる。
「万歳して」
「…バンザーイ」
「えいっ♪」
「!?!?!?!?!?」
リタはルミナリアに万歳をさせ、その隙に服を掴むと驚くほどの早技でルミナリアの上半身を包んでいる服を引っ剥がした。
「ほら、傷跡もなくて若々しくてモチモチの肌!こんな肌を見せればどんな男でもイチコへぶっ!?」
「フウリ、リタを取り押さえて」
「はい!ルミ姉様!」
生き生きとした笑顔で語り出すリタの頬をルミナリアが引っ叩き、「ぐえっ」と地面に倒れたところで風莉にリタの拘束を命じる。風莉は面白そうだと感じて素直に従い、リタを拘束する。
「ちょっ、フウリちゃん、離してー!」
「…ルミ姉様の命令なので…えへっ」
「あら可愛い…ってちょっと待ったー!ルミナリア、何する気なの?そのわしゃわしゃしてる手の動きは何かしら?」
「やられたらやり返す、相手よりも過激に。フウリ、これも覚えていって」
「わかりました!」
「あらなんて元気のいいお返事なんでしょう…てか力強っ!?動けないんだけどー!?」
リタはジタバタして風莉の拘束から抜けようとするが、パワータイプではないとはいえ王級の妖である風莉が身体強化の術を使っていれば簡単に抜けられるはずもなく、なす術なく押さえつけられていた。
「リタ…覚悟!」
「ひええ!許してー!」
リタがどういう目にあったのかは…読者のみなさんのご想像にお任せいたしょう。
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「ひ、酷い目に遭った…」
「ふっ、自業自得」
「ルミ姉様もリタさんも喋ってないでさっさと服を着てください」
…そういう方面の妄想をしていた方には申し訳ないが、最終的な結果はルミナリアはリタの胸を羨ましそうな顔で突っつき、リタはルミナリアのモチモチすべすべの肌を羨ましそうにムニムニしていただけである。ちなみに風莉はほぼ見ていただけだ。
「お二方って仲いいですよね〜」
「何年付き合いがあると思ってるの、今年で14年よ、14年!」
「そんなに…すごいですね」
「ルミナリアのことならなんでも聞いてね!大体知ってるから」
「じゃあ…ルミ姉様の月夜さんとの馴れ初めが知りたいです!どんな感じだったのかなぁ…と思いまして」
「ルミナリアとゲツヤの馴れ初めかー…いつからだったかは覚えてないけど急に距離感というか相互依存度?が増加した時期があってね、それ以降は見ているだけで面白かったよ」
「ゲツヤがきっかけがあったとは言ってたけど、教えてくれなかった」
「恥ずかしかったり嫌なきっかけの可能性あり、か…フウリちゃん、元の世界に戻ったらゲツヤを問い詰めといて」
「き、聞くだけ聞いてみますね」
話がひと段落したタイミングで扉をノックする音が聞こえた。そして、ノックをした人物は誰かしらの返答を待たずに勢いよく入ってきた。
「アッロハ〜!ルミちゃん元気してた〜?ウリウリ〜」
そのままの勢いでルミナリアに抱きつくと指で頬をグリグリし始める。ルミナリアは諦めているのかすべてを悟ったかのような表情で固まっていた。
「アロハ?」
「大丈夫よフウリちゃん、今は冬だから。夏じゃないよ。この人が異常なだけだから」
「おうおうリタちゃん、言うじゃないか〜。んで、そっちの子が件の?」
「風莉といいます。えっと…」
「そういえば名乗ってなかったね…みんな私のこと知ってるせいで自己紹介なんてほとんどしないからすっかり忘れてたよ。私はリリィ・ミルトイド。朽ちることなき『常夏の賢者』さ」
リリィ・ミルトイド。2000年を超える時を生き、いくつもの世界を巻き込んだ神々の戦争…神魔大戦唯一の生き証人である。
リリィ・ミルトイド
身長169cm
体重?kg
年齢2000歳over
今でこそその温厚な性格と普段からアロハシャツを着てたりすることから『常夏の賢者』と呼ばれているが、昔は血気盛んだったため、『血塗れの賢者』だとか、『仇討ち姫』だとか呼ばれていた。亡国、ミルトイド天帝国の元皇女。魔王出現時、彼女が滞在していたリゾート地は魔族の支配領域がほど近かったにも関わらず、魔王が討伐されるその時まで1人で守り抜いたのは有名な話である。




