過去話(6.7 side Ruminaria)
「報告します!魔族による襲撃が確認されました!」
「なんじゃと?衛兵や冒険者による迎撃は!?それに結界はどうした!」
「結界を無理矢理すり抜けて来たようです!現在は現場の衛兵や冒険者の避難誘導が迅速に行われており、比較的順調なそうです!」
「うぬぬ…現在ここにいる勇者一行とバルトラを呼べ!現場の支援へ回すのじゃ!」
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「魔族の襲撃だ。現在はたまたま居合わせたゲツヤ殿が単身で対処中とのことだ」
「わかった。すぐに行く」
ルミナリアがその言葉を聞いて即座に飛び出そうとするのを法皇が宥める。
「一旦待つのじゃ。あの襲撃自体が囮の可能性もある。戦力の分散は必須じゃ」
「ん。じゃあリタとそこの筋肉馬鹿を借りてく。ゲツヤはすぐ無理をするからリタは必須」
「おい待て、ササミってなんだ、まさか俺のことじゃないよな?」
「ん、お前。黙ってついて来い」
「んな無茶苦茶な…陛下、よろしいですか?」
「構わん。行ってくるのじゃ」
「承知」
「もう行く。リタ」
「なんですか?」
「喋ったら舌噛むよ」
「え?うにゃあああああぁぁぁぁぁぁぁ!」
「陛下、私も行って来ます」
「行って来い」
ルミナリアがリタの服の首の襟を掴むと走り出す。悲鳴を上げるリタを無視して走るルミナリアの後を、バルトラは追うのだった。
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「!おい剣聖!あのエネルギーは!」
「ん。ゲツヤで間違いない。急ぐ」
「ぴえええ…な、ナチュラルに服引っ張らないで…首が、首が〜!あの聞いてま、ッ〜!」
「喋らないで、また舌噛むよ」
「ふぁい、きをつけまふ」
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魔族の襲撃から1週間が経った。月夜の傷は癒えたが、流した血の量が多すぎたのか未だに目覚める気配はない。
「ゲツヤ…」
「ルミナリア、貴女少しは休んだらどう?この頃ずっとゲツヤのところにいるじゃない」
「ゲツヤが起きた時に誰もいなくて寂しい思いさせたくない」
「ゲツヤが起きた時に貴女がずっとここにいたと知ったら申し訳ないとか考えるやつよ、それ」
「ん…」
「それにね…そういうことするとゲツヤに気があるって思われて噂されちゃうよ?主に私に」
「……そんなことない」
「おっと〜?その間は…本当に気があるのかな?心なしか顔も赤いってごめんなさいやめてやめて剣抜かないで私死んじゃう」
ルミナリアはため息を吐く。この聖女、この類の話が好きすぎるのだ。断じてゲツヤが好きなわけではない。ないったらないのだ。
「ふわぁ〜」
「あら、可愛らしい欠伸だこと。貴女も寝なよ、もう遅い時間だし、貴女ただでさえ睡眠時間少ないんだから」
「わかってる。ちゃんと自分の部屋で寝るから」
「ならいいんだけど」
「…リタ」
「何?どうかしたの?」
「私、もっと強くなるから」
「ふふっ、そんなの当たり前よ。私だって強くなるわ。頑張りましょ」
「ん。がんばろ」
月夜が目覚めたのは、リタとルミナリアが会話した次の日の朝であった。




