プロローグ
新作です!適度に気分転換をして投稿頻度を頑張って上げていこうと思います。
どこにあるかもわからない和室の中で、和服の女と一人の靄がかかった男が顔を合わせていた。
「いやはや月夜、お主は初めてここに来た時とは変わってしもうたの」
「すみませんね、あの時は荒れてたもんで」
「うむ。自らの非を認められることは大変素晴らしい。そして私から、感謝の言葉を表明しよう。よくぞ魔の神を打ち倒してくれた。心より感謝を」
「こちらこそ。荒れに荒れている俺が変わるキッカケを作ってくれたのは神様です。それに、運命の出会いもできましたので」
「うむ。ならば事前説明していた異世界からの帰還時のお主の願いは、」
「はい。"剣聖"ルナミリアと、ともに帰還したいと考えます」
「わかった、と言いたいところじゃが、ちと面倒なことがあってのう」
「どういうことですか?」
男の顔は靄で見えないが、怪訝そうな表情をしているのは声だけでわかった。
「別にお主を利用しようとしてるわけじゃないんじゃよ。ほれ、お主は元はあの世界の住人じゃろ?じゃが剣聖は違う世界の人間じゃ。私が安易に送れば世界が歪んで壊れてしまうんじゃ」
「え?でも俺は大丈夫でしたよね?」
「ああ、世界が耐えられるように事前に結界を張ったのだな」
「…つまり、その結界をあちら側に貼らなければいけない、と?」
男の言葉に、女神はニヤリと笑った。
「察しが良くて助かるのじゃ。お主があちらに結界を作るのじゃ。術式はお主の記憶に付与されるようにしておこう」
「それをあちらの世界に張れ、ということならすぐに…「まあ待て」何故ですか?」
「その結界はあまりにも特殊なんじゃ。術式発動後は結界展開後の結界の維持に必要なエネルギーを自動で集めるんじゃが、いくら妖が存在し、ただの世界よりも大きなエネルギーを内包するお主の世界といえど、一年はかかるじゃろうな。そのエネルギーが集まるまで結界は展開されないしの」
「つまり?」
「帰ってから一年待て」
「りょーかいでーす」
「軽いな…よいのか?」
「構いません。一年くらい、すぐに終わりますし」
「うむ。良い心意気だ。ではまた会うだろが、頑張るのじゃぞ。あとお主、忘れておるかもしれんがお主の世界でも三年経っておるし、行方不明者扱いじゃからな、色々と頑張るんじゃぞー」
「待て待て待て、それ重要なことj」
男は突如として現れた穴に落ちていく。これは、その男、雹牙月夜が起こす、英雄をやめた男の物語。
「大して重要じゃないし、お主が頑張れがどうとでもなる、頑張れ」
「ふざけんなこんにゃろー!」
…元々英雄だった者の物語である。




