表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ラリー 〜思いを球にのせて〜  作者: Macou
神明クラブ編
6/43

愛菜vs香苗 芽衣の焦り

次の日。香苗の決勝トーナメントと奈緒の試合の日だ。

奈緒は中学に入り、急激に成長した。実力も伴い、2年の今ではレギュラーだ。友達もでき、順風満帆に中学生活を送れているようで父と母もほっとしていた。普段は寮生活の為会うことができないので奈緒に試合の応援はとても楽しみな親達だった。

他の生徒達も親が応援にかけつけ、久しぶりの対面に喜んでいた。


父、母、芽衣「奈緒ーー久しぶりーー!!」

芽衣「奈緒ーー会いたかったよーーー!」

奈緒「あれ?芽衣試合は??今日決勝トーナメントでしょ?」

芽衣「会って第一声それ?またビンタされた話しなきゃならないのー?!」笑いながらため息をついた

奈緒「そう言うことね♪芽衣でもそんなことあるのね」奈緒は芽衣が特別な存在に見える為、そんな芽衣にも失敗することがあるんだと安心していた。

父「奈緒ーなんだか背が伸びたか?」

奈緒「そうね♪背だけじゃないわ!実力もよ!」

母「それは今日が楽しみだわ♪」

そんな会話をして、父と母と芽衣は豊富中学の先生達に挨拶をしに行った。


母「奈緒がお世話になります。」

豊富中学の野々垣監督「あぁ。藤田さん。奈緒は強くなりましたよー!それより芽衣!!!佐野監督が怒ってたぞー何してるんだよ笑」笑いながら芽衣の昨日の試合をいじり始めた。

月に一度練習に行っている為、野々垣監督は芽衣と香苗にもよく関心を持ってくれていた。芽衣は下を向き小さな声で謝った。

「すみません・・・」

野々垣監督「昨日の芽衣の分まで今日奈緒が頑張らないとな」

父と母は笑った。


奈緒は他の部員達とストレッチを始めていた。香苗も他の神明クラブの人とストレッチをしていた。芽衣はそんなみんなの様子を見ながら1人、持ってきたポテトチップスをボリボリ食べながら気楽に父と過ごしていた。


小学生5.6年の部の決勝トーナメントの第一シードは全国でも有名な阿部愛菜という選手だった。よくテレビからの取材を受けていて、将来のオリンピア候補の1人の子だ。香苗は準決勝で安倍愛菜選手に当たる予定だ。


試合は始まった。香苗の調子は絶好調。いつもの攻撃的なスタイルで次々相手を撃破した。相手は全国か

ら集まったスーパー小学生。3回戦ではフルセットの試合になった。香苗も相手も負けたくなくて最終セットは泣きながら勝負をしていた。まだまだかわいい姿に大人達は笑った。それでもなんとか勝った香苗だった。王コーチも香苗の母も香苗が強気に試合ができるようにフォローに必死だった。


そして次の相手は第一シード安倍愛菜になった。


阿部愛菜選手は香苗と芽衣と同じ小学5年生。母は中国人という噂だ。全国大会ではメディアが来ていて、皆が愛菜選手を追っていた。愛菜選手が登場すると慌ただしくカメラが動いていた。それを芽衣は観客席でぼーっと見ていた。すると隣にドスっと佐野監督が座った。

佐野監督「芽衣はお気楽だなー。香苗は安倍愛菜と当たる事を緊張しておるぞ」

芽衣は反省するふりをして小さく頭いた。佐野監督は過ぎたことには言及しなかった。普段と変わらない佐野監督に芽衣は安心した。


佐野監督「香苗は相手が強ければ強いほどいい試合をすると思うで。さてどんな試合をするか見ものだなー。」

佐野監督が香苗を期待している事に芽衣は嫉妬した。なんで私はこんなところでおやつ食べてるんだろう。芽衣は急に焦り始めた。

芽衣「香苗の応援行ってきます。」

芽衣は香苗の試合のなるべく近い観客席に行き、神明クラブの人たちと一緒に全力で応援を始めた。口では「香苗頑張れー」と叫びながらも心は「香苗・・・置いていかないで」と叫んでいた。


そして阿部愛菜vs多田香苗の試合は始まった。香苗はサーブを構える前に「さっ」と言って気合いを入れる。その辺の小学生がかける回転よりはるかにキレている。レシーブでつっつきをしても回転に負けてネットにかかってしまう。ラバーの面をもっとねかせろと王コーチはジェスチャーしていた。


香苗はすぐに理解した。

"王コーチと試合してるみたいだ"そんな感覚で香苗は思い切り相手に挑むことができた。安倍愛菜は淡々とキレのいいサーブを出す。そしてパターンが決まっているかのようにレシーブされた3球目の球を強めのドライブで撃ち抜く。香苗はなかなか喰らいつくことができなかった。


香苗も愛菜選手の真似を始めた。サーブをした後の三球目を狙っていた。香苗は試合中にもどんどん成長していた。段々と球のスピードにも慣れてきて時々3球目のドライブもブロックすることができるようになってきた。でも愛菜選手は強い。いくらブロックされてもまた次の球も攻撃してくる。香苗はブロック、ブロック・・・なかなか香苗からは攻撃できない試合展開になっていた。


そんな愛菜選手の試合を間近に見た芽衣は開いた口が塞がらなかった。

「つ、つ、つよい・・・同じ小学生5年生なのに・・・・。私も香苗も小学5年生では地域で強いとみんなに言われてきた。でも上には上がいる・・・。香苗はあの相手についていこうとしてる・・・。私・・・本当にやばいかも。置いてかれるかも」

芽衣はどんどん焦る気持ちと何もできない今の状況がもどかしくいてもたってもいられなかった。



香苗は負けた。3-1 1セット取れただけでも奇跡だ。

王コーチも香苗の母もよく頑張ったと励ましても香苗は悔しくて、泣き続けた。負けてなくのはいつもの事だけど、安倍愛菜選手に負けても同じように悔しがる香苗の根性を王コーチと佐野監督は褒めていた。



芽衣は焦りからか、目の前が急に暗くなる感覚だった。芽衣はこんな感情が初めてで、言葉が何も出なかった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ