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芽衣復活!最後のインターハイ

芽衣にとって、長い1週間は始まった。


周りが練習中、ひたすらにサーブ練習。腕の筋トレ、腹筋は毎日かかさずに。腰にも違和感があった為、毎日コルセットをまいての生活だった。


安静が薬だった為、何もできない自分にモヤモヤする。そして部員達の卓球を見ていると、居ても立っても居られなくなる。もうすぐインターハイ予選だというのに・・・


芽衣は夜になると香苗に連絡をとろうか毎日悩んでいた。香苗が豊富中学を去ってから、2人は連絡を取り合わないという暗黙のルールがあった。お互い連絡先はわかるのに連絡をとるのは帰省中のみ。連絡を取る事で甘えてしまう気がしたからだ。


でも初めての怪我。不安な気持ちを香苗に聞いて欲しかった。どこか心の片隅には、インターハイで会う時の言い訳になってしまうこともわかっていた。そしてそんな言い訳を考えている時点で前を向いていない自分に嫌気がさした。そして芽衣は香苗の連絡先を消した。"甘えたくない"その一心だった。

唯一気持ちを癒してくれる存在は颯だった。


芽衣 練習できないとおかしくなりそう。

颯  毎日毎日卓球ばかりやってきたんだ。いい機会だよ。

芽衣 香苗は今中国かな。愛菜は今年のオリンピック代表に選ばれていたね。

颯  そうみたいだね。オリンピックってすごいね。

芽衣 うん。香苗も目指してるのかな。

颯  どうかな。芽衣は目指してないの?

芽衣 私の体はついていけないな。それに安定した職につきたいと思ってる。


芽衣は知らず知らずのうちに少しずつ将来を見据えている自分に驚いた。そしてそれは心の1番真ん中にあるものだと感じた。


颯  立派だね。ごめんけどびっくりしたよ。

芽衣 私も自分で驚いた。私。進路は就職しようと思う。



そして颯の返信は待たず、芽衣はスマホの画面を閉じた。この決断を確かな自分の物にしたかった。

芽衣は、大学に行かずに就職するメリットや、誘いが来た企業を一つ一つ調べ始めた。


この怪我の期間は芽衣の将来を大きく左右した。

オリンピック・・・・プロ卓球選手・・・

輝かしくて煌びやかな世界。私には行くチャンスはあるのだろうか・・・就職したい気持ちと正反対にそんな言葉が頭にチラチラ浮かぶ。


そして1週間すぎるとかかとを自由に動かせるようになっていた。電気が走る痛みが忘れられない芽衣はガッチリサポーターで守って、なるべくアキレス腱に負担がかからない練習から始めた。


ようやくスタート地点に立てた。そして星野監督が高校生のみ集合をかけた。

「もうすぐインターハイ予選だ。代表メンバーを発表する。3年吉田さえ、田中玲、2年田中桜、佐藤愛 補欠に藤田芽衣だ。ダブルスはさえと玲。以上」


補欠・・・・今の私は補欠か・・・。


がっくし肩を落とした芽衣。玲は肩をポンッと叩いた。

「芽衣!インターハイ本戦であんたが活躍できるように予選くらいなら任せてや」玲の優しさは心に染みる。中学1年からレギュラーの芽衣にとって補欠は辛かった。しかし玲がそう言ってくれるのなら甘えよう。そんな気持ちになった。

「玲ありがと!よろしくね」


そして芽衣のアキレス腱は日に日によくなり、普段と変わらない動きにまで戻って行った。



インターハイ地域予選。

団体戦は芽衣の出場は無し。皆のサポートに回った。相手はエースを出さないことに少し腹を立てていたが、結果豊富高校の優勝。芽衣がいなくても予選でつまずくことはなかった。


そしてシングルスもいつもと変わらず、第一シードの芽衣は決勝で後輩田中桜とあたり、3-1で勝利し優勝した。

その様子を見ていた颯も安心した。そしてテーピングされた足を見て、こっそりと声をかけてきた。

「芽衣がテーピングしてるとカッコよく見えるよ。なんでも似合うな芽衣わ」

「そんな事ないわwしっかり戻ってこられて安心してる」


インターハイ本戦がついに始まろうとしていた。芽衣は最後のインターハイに気合いが入る。

会場についてまず視線を送る相手は毎年同じだ。山村高校の緑のジャージを見つけると近寄った。すると香苗が人目を気にせず走ってきた。

「芽衣!!!!怪我したのなんで言ってくれなかったん!!!!今芽衣のママから聞いたよ!大丈夫?アキレス腱だって?」

「大袈裟だよ香苗w大丈夫!しっかり山村高校を倒せる実力はあるw」香苗は芽衣の笑顔に安心した。

「よかった・・・ほんなら本気でぶつからせてもらうわw」すると愛菜もこちらに歩いてきた。

「愛菜ちゃん。オリンピック代表おめでとう。」

「ありがとう。芽衣ちゃん足大丈夫?」

「うん。もう平気!」

「芽衣ちゃん進路は?決まった?」

「まだなの・・・インターハイに今は集中かな」

愛菜は芽衣の心の迷いも見えず、ズバズバ芯をつく質問をする。芽衣の進路は香苗も気になっていたが、直接なかなか聞けなかった。


芽衣は聞かれたくない質問をされ、すぐに話を戻した。「愛菜ちゃんも香苗も決勝で待っててね!決勝まで必ずいくから!」愛菜も香苗も頷き、会話は終わった。


団体戦が始まった。豊富高校はベスト4まで順調に勝ち進んだ。準決勝。相手は四天柱だ。

1番 田中玲vs佐々木美羽 U18日本代表にも選ばれていた相手チームのエースだった。結果は0-3で玲は完敗した。

2番は芽衣の出番だった。もうかかとの怪我もすっかりよくなり本調子に戻った芽衣。ラリーでは気持ちよく芽衣の得意な形に入れた。結果3-1で芽衣の勝ちだ。

ダブルスは芽衣と桜ペアだ。3-2とフルセットになったもののダブルスも取ることができた。

4番手 吉田さえは決勝で香苗に当たりたい・・・その一心で戦っていた。相手は格上だったが最後まで集中力がとぎれることはなかった。3-2の接戦勝利した。次はいよいよ決勝だ。



豊富高校vs山村高校


ようやくこの舞台に立てる。芽衣も玲もさえも同じ表情、同じ気持ちだった。そして試合前、ストレッチしている香苗に視線を送る。この日のための努力だったんだ・・・


そして同期3人は顔を見合わせた。

さえ「この6年間の集大成ってことだよね?」

芽衣「うん!私たちのライバルはやっぱりこのチームよね?」玲が笑った。

玲「香苗もほんとは私達の中にこうしていると思ってた。でも香苗の存在が結局私達をこの舞台に立てるまでの実力をつけさせてくれたってことね」

さえ「さあ。香苗を倒しますかw優勝は私達よ!」

さえは円陣を組むために2年生2人の肩をたたき集合をかけた。



「いくよ!!!!ドラマを作る時よ!主人公は自分よ!!優勝するぞーーーーー」


オーーーーー!!!!!!!


豊富高校が息を合わせると観客達も一緒になって盛り上げてくれた。



それを横目でみる香苗。香苗は記憶が蘇っていた。それは中学総体日本一の記憶だった。

私もあの中にいた・・・・今から3年前、皆で顔を合わせてドラマチックに日本一を手に入れたんだったっけか・・・・3年前はもう前世の記憶かのように懐かしく思い出の1ページにしまい込んだ記憶だった。自然と笑みが溢れる香苗。変わらないさえや玲、芽衣の存在は幸せな思い出だった。そして現実を見た。香苗は自分で自分の頬を強く叩いた。

"芽衣はもう私の頬を叩いてくれないのよ。目を覚ましなさい"自分に唱えた。

"実力社会の今、私は来年からプロ卓球選手になりTリーグに参加する。甘えは禁物。誰に当たろうと、1セットもやらないわ"


こうして香苗はストレッチを終え、山村高校の円陣の中に入って行った。


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