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ラリー 〜思いを球にのせて〜  作者: Macou
神明クラブ編
3/43

芽衣vs香苗

奈緒は中学1年生 入寮した。

芽衣は寂しかった。毎日一緒に通っていた神明クラブ。行きの車内で流れる音楽をいつも一緒に歌いながら通っていたのにもう芽衣は歌わない。1人じゃ楽しくなかった。歌わない行きの車内も少しずつ日常になり、芽衣は慣れていくしかなかった。

神明クラブにつけばいつでも元気いっぱいの香苗がいる。そんな香苗に芽衣は助けられていた。それは母も同じ気持ちだった。母と芽衣は月に一度の豊富中学の練習がとても楽しみだった。奈緒の顔が見られるからだ。


香苗と芽衣が豊富中学の練習に行くと奈緒は皆にバレないようにこっそり笑顔を見せてくれる。中学1年生は先輩の言うことが絶対だ。まだレギュラーになれない奈緒は厳しい練習についていくことに必死の様子だった。先輩や監督の前では常に真剣な表情をしていて、バレないようにこっそり見せてくれる笑顔がたまらなく芽衣は嬉しかった。香苗と芽衣の視線は奈緒を追いかけてばかりだった。そして母はそんな奈緒の様子をいつも心配そうに見ていた。


芽衣も香苗もどんどん強くなっていった。中学での練習も対等にできるようになってきている。


それは通っている小学校でも有名だった。

藤田芽衣は卓球が強いらしい。周りの小学生は放課後公園に集まって遊ぶが、芽衣は行ったことがなかった。毎日卓球の練習で忙しいからだ。周りの友達もそれを知っていた。時には大きな大会の為、学校を欠席したり、学校の行事に出られないこともあった。芽衣は何より卓球大会を優先した。それによって学校で芽衣は友達が少ないと感じていたが、同じ境遇の親友香苗の存在が芽衣の心は強くしてくれた。

香苗も別の学校で同じ思いをしていたが、芽衣も同じなんだと思うとへっちゃらだった。


2人はいつも同じ気持ちでいた。



小さい大会ではいつの間にかシード選手になるようになった。中学生相手にどんどん勝ち進む事ができるようになってきた。香苗はいつも芽衣と争っている。芽衣より多くトーナメントを勝ち上がれることだけを意識し、時に芽衣のが1つ多く勝ち上がると、香苗は悔しくて芽衣と口をきかなかった。芽衣はそんな香苗の扱いも慣れていた。


「たまたま私がベスト8に入れただけでしょ」

「うるさい。今は芽衣の顔見なくない」

2人は競い合いながらどんどんレベルが上がっていった。


ある小さな大会。その日はついにやってきた。2人が決勝まで勝ち上がったのだ。練習でゲームをすることはあっても、本当の大会で戦うのは初めてだ。決勝戦 藤田芽衣vs多田香苗。


香苗は芽衣との決勝戦に気合十分だ。

芽衣「香苗!ようやくこの日がきたね。どっちが勝っても恨みっこ無しよ♪」

香苗「当たり前♪」


中学生まで出場できる市内の大会で決勝戦は小さな小学4年生の二人。観客は拍手喝采だった。そんな拍手を誇らしげに観客席で見る佐野監督。そして大喜びする香苗と芽衣の母達。


香苗と芽衣は試合前、握手をした。

いつもは同じ神明クラブのチームメイトが応援してくれるがこの決勝戦は同じ神明クラブ同士なので応援は無しだった。広い体育館がシーンとしている。2人のラリーの音、シューズが床を擦れる音だけが響いた。


コトンコトンコトンコトン・・・キュッキュッキュ

香苗は緊張していた。そして試合が始まった。


香苗も芽衣も普段一緒に練習しているので手の内がわかる。出すサーブも帰ってくるレシーブも。それによって一点一点長いラリーが続く。激しい打ち合いだ。攻撃を自分からしかける香苗。1セット目は香苗がとった。ホッとタオルで顔を拭う。芽衣は流れを変える為、靴紐を縛り直した。


2セット目は芽衣の得意のバックハンドがよく効いた。バックハンドの打ち合いになると点をとるのは芽衣だ。2セット目は芽衣のものだ。



香苗は1セット取られただけなのに泣きそうな顔になっていた。セット数は1対1。

3セット目、香苗は普段芽衣に見せたことのないサーブを出し始めた。芽衣は困惑した。芽衣対策で香苗の母に教えてもらったサーブだった。いつも芽衣との対戦を香苗は考えていたのだ。香苗が流れを掴み出した。

3.4セットと取ったのは香苗だ。



芽衣は負けた。




普段負けても泣かない芽衣なのに香苗に負けると悔しくなった。芽衣はタオルで顔を隠して、汗を拭くフリをしながら香苗と握手した。


香苗は誇らしそうに賞状とメダルを受け取っていた。芽衣は2位の賞状を受け取るとすぐにトイレに走って逃げた。誰もいない個室に入るとようやくポロリと涙を落とす事ができた。



「悔しいぃ・・・・2番なんていらない・・・」

芽衣は泣きながら怒りながら悔しがった。


佐野監督は2人の試合を誇らしそうに周りに自慢していた。

香苗は芽衣に気を遣ってなるべくその日は話しかけないようにした。芽衣が泣いているのがわかったからだ。普段よく泣く香苗とは違って芽衣の涙は珍しい。



そして試合の帰り道の車内、母が運転する車に芽衣はタオルで顔を抑えたまま乗った。

母「泣いても香苗には勝てんで。練習せなね」

こんな時くらい励ましてくれたっていいのに・・・そう思いながら

「わかっとる。何も言わなくてもわかっとる」芽衣は精一杯強がった。

母がそんな事言うのは誰より母もすごくすごくすごく悔しかったからなのだ。



芽衣と香苗は大きい大会でも少しずつ勝ち上がるようになった。まだまだ大きい大会に出てくる中学生には負けてしまうが、小さい大会の卓球部に入っている公立中学の選手には勝てる。次の小さな大会も決勝戦は芽衣vs香苗だ。


2人が決勝戦で当たることも多くなった。

6割香苗の勝ち。4割芽衣の勝ちと少しだけ香苗が優勢だ。芽衣は香苗に負けても泣かなくなった。一方香苗は芽衣に負けると毎回大泣きした。



2人は周りからスーパー小学生と言われていた。

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