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履歴書に記入したこと以外で、お伝えしたいことが……

作者: はやはや

私もまさに今、履歴書を作成中です!

 宮下菜帆みやしたなほ

 年齢は今年、三十二歳。

 ここまでは履歴書を見ればわかる。相手に伝えたいのは、今から話すことだ。




 私は夫のたぁ君(宮下匠みやしたたくみ)と三歳になる娘、真希愛まきあとの三人家族。仲睦まじく暮らしている。

 好きな言葉は〝楽しんだもの勝ち〟

 得意料理は鶏肉のさっぱり煮。


 たぁ君は会社で初めての育休を申請した育メンだ。初めての子育てだから、毎日がパニックだった。便ゆるくない? とかミルクを吐いたとか、寝てる時にピクッとしてるけど、痙攣じゃないよね? とか。


 でも、たぁ君が側にいてくれたから心強かった。私が騒ぐ度にネットで調べては、「赤ちゃんの便はみんなそんなもんらしいよ」とか「ゲップさせなきゃ」とか「モロー反射っていうんだって」とか教えてくれた。


 真希愛にも、そんな、たぁ君の頑張りが伝わっていたのだろう。パパっ子だ。たぁ君が仕事から帰ってくると、真っ先に玄関に駆けていく。


「パパー! おかえりぃ!」


 そう言ってたぁ君の懐に飛び込む。たぁ君が玄関先に置いた鞄を引き摺りながらリビングに持って来る。真希愛に先導される形でリビングに入ってくるたぁ君は、デレデレだ。


 それだけではなく、お風呂も添い寝もパパを指名する。仕事で疲れているはずなのに、たぁ君はまたデレデレする。


「真希愛はパパが好きなんだよな♡ もう、かわいいなぁ」


 そう言って真希愛の頬を、人差し指でつんつん突く。


「パパと結婚するからね♡」

「大歓迎! 楽しみだなー」


 二人で顔を見合わせ笑い合っている。

 おい! 私の存在を無視しすぎだろ! でも、二人がにこにこしているのは、幸せだ。でも、女としての危機感も沸く。たぁ君の気持ちを私に向けなくては。


 だから、真希愛が寝た後は、今度は私がたぁ君に甘える。こんな女二人に、たぁ君は平等に愛を注ぐし甘え返してくれる。


 まだ真希愛は幼いけれど、うかうかしていられないと思う。若干三歳にして色気づき始めた。たぁ君の帰宅時間が近づくと、洗面所に行く。


 初めは気にしていなかったのだけれど、毎日なので、ある日、後ろをついて行った。

 洗面台の前に、手洗いや歯磨きをする時に使っている小さな踏み台を持ってくると、鏡の横の扉つきの棚から何かを取り出した。


 おしゃれセットのドライヤーとブラシのおもちゃだった。ドライヤーで髪をセットする真似をしている。


「ふん、ふん、ふーん♪」


 と鼻唄まで歌っている。

 それが終わると棚の奥から、おしゃれセットの口紅のおもちゃを出し、唇に当てるふりをする。

 ……女だ……間違いなく、ここに女がいる……


 たぁ君にも裏切られた気分になっていた。真希愛がおもちゃを入れていたのは、たぁ君が使う髭剃りや、スキンケア用品(意外と美容にこだわってる)が入っている棚だったのだ。


 私が使う基礎化粧品類は、鏡を挟んだ反対側の扉つきの棚の中にある。だから、たぁ君の使っている棚の中を見たことがなかった。自分の棚におもちゃが入っていることは、たぁ君は知っていたはずだ。


「こんな所に、かわいいものを隠して……仕方ないなぁ♡」と思っていたのかもしれない。またしても、私の存在を無視しているではないか!


 この日を境に私も真希愛に負けじと、たぁ君の帰宅前にはメイクを直すようにした。



 と、いう訳で、


 日に日に女らしくなる娘に負けられないと思い、ここの美容部員のパートを応募してみたいと思いました。経験不問とのことでしたので。

 以上がお話したかったことです。

あ、ちなみにシフトに入れるのは月〜金の九時半から十二時半です。

読んでいただき、ありがとうございました!

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― 新着の感想 ―
[一言]  面白かったです。  旦那と娘の関係に嫉妬したり、危機感を持ったりする母親がリアルに描写されてて、ノンフィクションの独白にも感じます。  多分、赤の他人からしてみれば「考えすぎだよ」で済ま…
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