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悪魔デルフィナ、二人の仲を仲裁する?


 ヴェロニカとクリスタの衝突を聞いたハーラルトは溜息を吐いて言った。


「そうか……ヴェロニカ様と侍従長がケンカね……まあ、あり得る話だが……」


「それで話し合いの席を設けたいので殿下もそれに参加して欲しいとのことです」


「いやいや、こういうことは俺じゃなくてデルフィナに任せた方がいいんじゃないか」


「そのデルフィナ様からの要望なのです」


「そうなのか? あー仕方がない、わかったよ」


 それからすぐに話し合う部屋まで移動したハーラルトが部屋の中で見たのは、ヴェロニカが眉間に皺を寄せて座っている姿だった。


「あれ? ヴェロニカ様お一人ですか?」


「今あの者をデルフィナ様が連れてくるわ、まあ、来ないかもしれないけどね」


「クリスタを? ふふ、時間に厳しい彼女が遅刻とは珍しいことだ」


「まったくどういうことなのこの国は、とんでもない国だわ!」


「……」


 ハーラルトはクリスタがヴェロニカをそんなにやり込めたのかと首を傾げた。


―――コンコン


「あ、来たかな?」


「連れてきましたよー」


 扉が開くとデルフィナの後ろにはいつもの姿に戻ったクリスタが立っていた。


「えーと、これで揃ったかな」


 この場に集まったのはヴェロニカ、ヘンリク、デルフィナ、ハーラルト、クリスタの五人だった。

 

「遅れてしまい申し訳ありません、ハーラルト様」


「いやいいんだ、さあ、皆さん座って。揉め事ならば話し―――」


「ちょっとあなた! どういうつもりなの! 姿を隠して忍び込んでいるなんてその真意を知りたいわね、場合によってはデルフィナ様が許しても私が許さないわよ」


「……あなたはどうもヒステリックなところがあっていけないようです、冷静になってお話ししてくださいませ。まず今回の件はあなたが悪いのですよ。それは理解してますか?」


「わたしが聞いてるのはそういうことではありませんよ! どうでもいいでしょそれは」


「ハーラルト様、この者は陛下から賜りました区画を無断で焼き払おうとしたのです。わたしはそれを許すことができません、ハーラルト様からも厳重に注意をお願いします」


「あ、あんたね! は、話を!」


(な、なんだこれは? ヴェロニカってこんなんだったか?)


「ハーラルト様」


「あ、すまない、もちろんいけないことだと思いますそれは」


「だからそんなことはどうでもいいのよ! こいつはね!」


―――バン!


「ひっ!」


 クリスタは両手でおもいっきりテーブルを叩いた。ヴェロニカは思わず体を引いてしまう。


「こいつとはなんです? ここは王城ですよ、人をこいつと呼ぶような無礼な者がいていい所ではありません、ヴェロニカさん、あなたは礼節の基礎から学ばなければ今後ここにはいられませんよ」


「そ、そんなことはどうでもいいのよ、だからハーラルト、この者はメイドではないのよ、いいですか、天……うぐ!!」


「え? ヴェロニカ様、今なんて?」


 ヴェロニカは強力な魔力によって瞬間的に口を塞がれてしまった。


「だ、だから天……うぐ!」


「ん? どうしたのかな? 意味がわからないな。クリスタどういうことだ?」


「わたしも何を言っているのかわかりません、この方は少し頭がおかしいのかもしれません」


 強力な白魔法によって強制的に口を封じられていることにヴェロニカは目でデルフィナに助けを求めた。


(デ、デルフィナ様! こいつを……攻撃を受けてます!)


 必死の彼女の訴えにも静観していたデルフィナは無言で頭を横に振っている、その目はこいつには手を出すなと言っていた。


(て、天使であることを黙ってろと!)


 それに対してデルフィナは今度は頭を縦に動かした。


「うぐぐ……」


 デルフィナはクリスタの本気の魔力に、正体は絶対明かさないという強い意志を感じ取っていた。


 本人がそうしようというのならデルフィナもそれに同調せざるを得ない。なぜなら正体を隠していたのはデルフィナも同じであったし、クリスタは早い段階からデルフィナが悪魔であることを気づいていて黙っていたからだ。ただヴェロニカも怒りで魔力を放出させている状態で、その力は軽く王城を吹き飛ばす魔力だった。


「ヴェロニカ、沈めなさい。ここは話し合いの場ですよ、クリスタはなにもしてないでしょ?」


「うぐぐ!!」


「いいからヴェロニカ、相手が戦いを望んでいないのであれば一方的に力を使うことは私達悪魔としての矜持が許しません」


 それに対してクリスタも静かに言った。


「わたしとしても言いたいのは、区画を燃やそうとしたことについて過ちを改めていただきたいだけなのです。そうしていただければ言葉遣いを含め、今回は大目に見ましょう」


「わかりましたクリスタ侍従長。けれどヴェロニカにもプライドがあります、今回はわたしがヴェロニカに変わって謝罪しましょう、そのかわりこれ以上彼女を責めないで欲しいのです。ヴェロニカはこの国に来てまだ数日です。知らないことも多いでしょうから、この通り、わたくしに免じて今回は……」


 そう言ってデルフィナは頭を下げた。


「わかりました、デルフィナ様、あなたの言葉で今回は矛を収めましょう。ハーラルト様、分をわきまえず、お騒がせしたことを謝罪いたします」


「うぐぐ!」


「あ、いや……そんな、ではヴェロニカ様、そういうことで何卒お怒りをお鎮め下さい」


 そう言ってハーラルトも頭を下げた。


「……うぐぐ」


「ヴェロニカ」


「……うぐ……」


「皆あなたの言葉を待ってますよ」


―――ガタン


 やっとのことで白い魔力を飛ばしたヴェロニカは最後に大声で叫んだ。


「このクソ天使が! 次はないからな!」


 そう言い放って勢いよく部屋を出ていったのだった。


「「……」」


「何を言ってるんだろう……ヴェロニカ様は」


 ハーラルトの言葉にデルフィナは「生活になじめず疲れているから休ませてあげましょう」と言うだけだった。

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