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悪魔ヴェロニカ、天使の出現にびっくりする

「まずはあんたがその汚い手を離しなさい」


「いいえ、離しません。いま何をしようとしていたのか言いなさい」


「は? 誰あんた。ずいぶん上からじゃないの、わたしのこと知らないと言うの、侍従のくせに」


 ヴェロニカは周囲にいる侍女たちを見てこの人頭おかしいわと目で訴えた。


「誰であろうとかまいません、その魔力を沈めなさい!」


「ク、クリスタ様、こ、このお方は……」


「あなたはもういいから下がりなさい、他の者達も下がっていなさい、わたしはこの者と話があります」


「クスクス、あー可笑し、ほんとここ田舎だわね、こんな礼儀も知らない者がいるなんて信じられないわ」


「礼儀はあなたより心得ております、礼義を知らないのはあなたの方ですよ」


「あっそう、もういいわ、いいわよね、メイドの一人ぐらい消えても、いいでしょ別に?」


 そう言ってヴェロニカは今も周りで突っ立っている侍女達に言った。


―――だ、誰かひとを!


 その言葉に周りのメイドたちは危険を察知して大声を上げた。しかしヴェロニカはそれにかまわず魔力濃度を上げていく、ところが……


「ん?……え?」


 ヴェロニカから発した黒魔力はいきなり現れた白魔力に封じ込まれてしまった。ぼわっと発生した白魔力は目の前にいるクリスタから放出している。意表を突かれたヴェロニカは力をそがれてしまい、黒魔力は瞬く間に収束してしまった。しかもそれだけではない、目の前のクリスタの雰囲気も少しずつ変化していた。髪の色が金に変わり、目の色も白く変化している。さらに外見も急に若くなったように見えた。


「え? な、な、な」


 ヴェロニカは目の前の人が突然対極のそれに変化していっていることに恐怖した。


「なに? うそでしょ、なにあんた!」


「侍従達が大切に育てている花壇をあなたの悪趣味で燃やすことは許しませんよ!」


「え? ちょっと待って、なにこれ? 嫌、離して」


「わかりましたか!」


 黒い魔力が完全に消えたことにクリスタはようやく手を離した。


「え? うそうそ、なに? どうなってるの?」


「聞いてますか? 次は許しませんからね、いいですか」


 解放されたヴェロニカは混乱したまま城へと走っていった。


 そして第三棟、デルフィナ専用部屋がある廊下では……


「デ、デ、デ!!」


「なに?」


「デ、デ、デ!」


 真っ昼間から廊下で奇声をあげている声が聞こえると部屋に戻っていたデルフィナはお茶の用意をしているステラに言った。


「嫌だわ、まだ昼間なのに気が触れている人がいるみたい」


「あの声は普通ではないですね、出ない方がよろしいかと」


「そうね」


―――ドンドンドン!


「うわー、こっちにきた!」


「デ、デ、デルフィナ様!」


「開いてるから、ドアを叩かないでちょうだい」


―――バタン


「デ、デルフィナ様!」


「ヴェロニカじゃない、何してるのあんた? 気が触れたのかしら?」


「そ、そんなこと言ってる場合じゃありません!!」


「うるさいわね、わたしもう身分が高いのよ、騒がないでちょうだい」


「ち、ちがうんです! この国ヤバイです! いいですか、落ち着いて聞いてください、天使です! て、天使がいる! すぐに離れましょう!」


「あーそのこと?」


「は? そのことってどういうことですか! 知ってたんですか!」


「騒がなくても大丈夫よ、彼女とは共同戦線を組んでいるから」


「なんですって! どういうことです? 聞いてませんよ!」


「ちょっと落ち着いて」


「デルフィナ様は知ってたんですか!」


「だからそう言ってるじゃない、もちろん向こうもね」


 ヴェロニカは天を仰いだ。


「あーなんてことを……天使と同じ領域にいるなんて! アンシェラ達が知ったら怒られますよ」


「いいのよ、他の交戦的な天使だったら衝突していたでしょうけど、彼女はそうじゃなかった、だからわたしもそうしたのよ、大人でしょわたし」


「そういう問題じゃ……としたらあの者は誰が召喚したのかしら? 何故この国に? しかもメイドに化けて」


「知らないわ、興味もないし。まぁメイドに化けてたのは私もだけど、クスクス」


「デルフィナ様!」


「わかったから大声出さないで。しょうがないわね、そろそろ話し合わないといけないようね」


 デルフィナはハーラルトも呼んで話し合おうと渋々立ち上がったのだった。


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