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悪魔ヴェロニカの力

 フリート国の東側には小国家が二つ連なっている。この二国もフリート国と同じようにオーア国と同盟し、白魔力を国の象徴にしていた。


 これら小国家の歴史は意外に長く、フリートと同じくオーア国との関係を良好に保つことで生き長らえてきた歴史だった。そして一方の大国ザームはオーア国との全面戦争を避けるため、これまでなかなか小国家に手を出すことができず、小康状態のまま月日だけが過ぎていた。しかしオーア国と違ってザーム国は領土拡大の野心を捨てることはなかった、そんなところにザーム国に奇跡が舞い降りる。念願だった最高位魔法である召喚魔術を遂に成功させたのだ。ザーム国で年に一度行われる召喚祭、今回は今まで例を見ない一万人の黒魔法師を集めて行うことを決める。その類を見ない数が功を奏したのか、一万人の魔導士の命と引き換えに悪魔ヴェロニカは降臨した。国王バルブロは一万の魔導士が命を落としたことに悲嘆するどころか、逆に笑みを浮かべて言い放った。


―――この国は神に選ばれたと


 ザーム国南東に位置する小国家、フベル国、王の間……


「オーア国から連絡はまだか!」


「は、はい」


「こ、これでは間に合わん!」


「陛下、民の命を守るならば降伏するしか……」


「く……」


 そこで国王の背後に控えていたフベル国軍大将カレルが言う。


「ふざけるなよ! 戦わずして国を明け渡すというのか!」


「しかし、あの大軍と戦えば……」


「陛下、わたしは反対です! 何のためにわたしに軍団長を御命じされたのですか? それはこの時のためではないのですか? どうか陛下、わたくしめに戦う許可を!」


「だがカレル、勝算はあるのか? 相手はザームだぞ」


「あります! この日のために白兵隊、二千の兵は訓練してきたのです。必ずや勝利をお見せいたします!」


「……」


「陛下!」


「カレル、相手の数は一万だぞ?」


「陛下、大事なのは戦略です、数ではありません!」


「……しかしなぁ……宰相、あの噂は……」


「悪魔の召喚に成功したという話ですか?」


「そうだ」


「申し訳ありません、詳細がまだ掴めておりません」


「ザーム国が突然動いたのは何か理由があるはず……」


「陛下! そのようなこともう調べている時間はないのですよ! 早く準備しなければ遅きに失します!」


「わ、わかっている」


「今ここで御決断を!」


「わかったカレル、この国を守ってくれ」


 その言葉にカレルは無言で敬礼した。


 一方のザーム国軍陣営では……


 ザーム軍を自ら率いてきた国王バルブロは、フベル国、王都から五キロの所で陣を敷いていた。


 バルブロは優雅にワインを一口飲み込むと、前に並んでいる者達に言う。


「敵は愚かにも軍を出してきた、マルセル」


「はっ!」


「この軍の総大将はマルセル、其方だ」


「はっ! わが軍の力見せてやります!」


「うむ! 初戦だ、必ず―――」


「ちょっと、盛り上がってるところ悪いんだけど……」


「皆! 静まれ! ヴェロニカ様が喋られる!」


「あなた達が戦ってたらいつ終わるかわからないじゃない?」


「い、いえ、すぐに……」


「わたし、こんなテント暮らししたくないのよ、寝心地も悪いし」


「汚いところで申し訳ありません! すぐに替えを……」


「いえそうじゃないの、別に一日ぐらいなら文句言わないわ、でも連日は嫌なのよ、早く目の前の王都に入ってゆっくりしたいの」


「はい!」


「だから、もうわたしがささっとやっちゃうからいいわ」


「え? と言うことは……」


「目の前の敵は私一人で十分よ」


 それから翌日もフベル軍は王都外に陣取ってザーム軍に睨みを利かせていた。


「昨日話し合った作戦をもう一度ここで確認する。まず白魔力で先制する、一通り撃ち終わったら騎士が突撃、そしてわたしの合図で素早く退け、騎士が一回退いたところで左右にまわった分隊が側面から突撃、いいか、敵は大軍だ、これは時間をかけて少しずつ敵を減らしていく作戦だ、長期戦は覚悟しろ!」


「カ、カレル様!」


「なんだ!」


「て、敵が出てきました」


「そうか、では作戦通り……」


「そ、それが……」


「なんだ! まだ何かあるのか」


「て、敵は一人?のようです」


「は? なんだって」


「敵は一人なんです!」


 カレルは急いで外へ出た。すると彼の目には荒野のど真ん中で一人椅子に座っている者がいる。その者の左右には侍女を侍らせていて団扇を仰がせていた。


「……なんだあれは? ふざけてるのか」


 フベル軍が皆それに釘付けになっていると、突然、周囲からボンっと火柱が立ち上がった。それは二千のフベル軍を囲むようにボンボンと円形に立ち昇っていく。


「な、なんだ、これは!」


 火柱が二千の軍をぐるりとすべて囲むと、次第に彼らの地面がぐつぐつと煮立つように熱くなり蒸気がそこら中から吹き出てきた。そして終いには地面が割れてそこから上に勢いよく炎が噴き出していく。


「あ、熱い! に、逃げろ!」


 カレルのその言葉もすでに遅い、二千の軍は瞬く間に炎に包まれて焼け死んだのだった。


 ヴェロニカはそれを見て一言いった。


「あー熱いわ」と。

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