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王子、戦闘力がないため一撃でやられてしまう

「サヴァリオ様、ほんとにやる気ですか?」


「おいおい、王命だからな、怖ければ参加しなくてもよかったんだぞ、フィーヌ」


「いえ、わたしは騎士ですからやりますよ。ただ王妃を倒したらザーム国が黙っていますかね」


「その時はオーア国に救援を送るんだろうよ、さあ、今は目の前の敵に集中だぞ」


「はい」


 第二塔の門番は二名と以外に少ない、彼らはアルビン所属の騎士たちである。そして当然、塔の中にも王妃近衛騎士たちがいた。彼らはザーム国出身の者たちでサヴァリオ達第三、第一騎士団との横の連携は一切ない。そのことからダフネがいるこの第二塔はまるでここだけ別権力が存在しているかのようであった。


「私が先陣を切る。道を開いたらそのまま押し込め、それから五十人程、門の外で待機、外から来る敵を迎撃しろ」


「はい」


「フィーヌ、おまえは外の部隊を頼む」


 城にはいない非番の騎士達は別棟にいた。フィーヌたちはそこから来るであろう騎士たちを相手にする。


「わかりました、団長、死なないでくださいね」


「……突撃する前に縁起でもないこと言うんじゃないよ」


「励ましたつもりだったんですが」


「ああ、そうなのか、それはありがとう」


「……なんかほんとに死にそうな空気漂ってますよ」


「馬鹿者、もういくぞ!」


 そう言うとサヴァリオは目立たないようまず門兵を倒すため単身で一気に走った。

 彼の持つ細い剣は重量がない分、パワーには劣るがそのかわり素早い攻撃が期待できる。それによって瞬く間に門兵を斬り倒すと手を挙げて突入の合図を送った。その合図に待機していた騎士団は一気にそこから中へと雪崩れ込んだ。そして突き進んだ先でも意表を突かれたダフネの騎士達が攻勢に転ずる暇もなく倒されていく。


「いいぞ! このまま勢いを落すな!」


 一方、レオポルドがいる北門も問題なく侵入していた。


「ドナート、外から来る敵は頼んだぞ!」


「はい、レオポルド様、お気をつけて」


 レオポルドもサヴァリオ隊と同じように門前に分隊を待機させると、ダフネがいる上階を目指して一気に走った。途中、遭遇する第二騎士団をこちらも難なく倒していき、一人も死者を出すことなく上階へ駆け上ることが出来た。するとレオポルドの視界にはドドドっと前からサヴァリオ達が来るのが見えた。


「団長! 上手くいったようだな」


「レオポルド殿も無事か、ここまでは順調にいけたな」


「ではこのままダフネの部屋までハーラルト様のために道を作るぞ!」


 レオポルドはそう言うと、後ろに向かってすぐに指示を出す。


「ではハーラルト様に連絡を頼む! 今が好機だぞ、外の騎士達もまだ来ていないだろう」


「はい、すぐに!」


 レオポルドは「侵入に成功、ダフネの部屋にて待つ」と伝言を頼んだ。


 その頃、ハーラルトは執務室にいてサヴァリオ達からの連絡をじっと待っていた。


「ヘンリク、そろそろ頃合いではないか?」


「はい、連絡兵がそろそろ来てもいい頃です、様子を見てきます」


「ああ、頼む、わたしも準備をしよう」


 ハーラルトは剣の柄に手をかけ、ゆっくりと鞘から引き抜いた。そしてセットされた白い宝玉を確認すると再び鞘に納める。


「よし、ん?」


 しかし、鞘に納めようとした時、ピリという音が剣から聞こえた。


「なんだ?」


 ハーラルトはもう一度鞘から剣をゆっくりと外へ引き出す。


「な! これは!」


 鞘から出してよく見ると、白い宝玉にヒビが入っていた。彼は慌てて白の書も手に取ってみる。手に取った瞬間、白の書も黒く汚れていく。


「こ、これは……!」


 驚きながらも次の瞬間、ハーラルトは誰もいないはずの部屋に人の気配を感じた。この部屋に人がいるはずがない、扉は前方に一つ、背後の窓にはなにも異常はない、それにここは第三棟の上階に位置する、外から侵入など不可能だ。そう自分に言い聞かせたのだが、暗闇からいきなり聞こえた声にびっくりして目を見開いた。


「残念でしたね、ハーラルト様、本当に残念だ」


 部屋の角にいつの間にか黒い人影がいる。その者はゆっくりと前に出てくると、その身知った者にハーラルトは叫んだ。


「アルビン! いつからここに!」


「王妃様の魔法によって気配を消しておりました。あなた方の動向はすべて筒抜けですよ。ああー、ハーラルト様、本当に残念です、あなたは判断を誤られた。ダフネ様は今まであなたには温情を掛けてくださっていたはず。殺すのもパストル王だけのはずだったのに……あなたは自ら自滅の道を選んだんです。そのため私はあなたをここで殺さなければならない。命令されたダフネ様もさぞかし悲しんだことでしょう。あなたがもっとダフネ様を理解していれば死なずに済んだことでしょう……残念ですよ」


 白の宝玉が黒く変化していっていることにハーラルトは焦った。この白の魔力がなければダフネに勝てる手段が閉ざされることになる。そして自分がこの剣を持って第二塔まで行かなければ、決死の覚悟で付き従ってくれたレオポルドやサヴァリオたち騎士が単なる謀反人として処刑されるだけである。


(まだ魔力はある、こいつを倒さなければ!)


「おおお!」


 ハーラルトは宝玉がセットされた大剣を両手で構えた。それによって残り少ない白い魔力が光る、しかしその輝きは見るからに弱々しい。


「ほう、さすが宝玉だ、まだ魔力を有していたのか、だが……」


 アルビンもゆっくり剣を抜いた。それによってセットされていた黒宝玉の魔力が外へ流れるように放たれた。


「おまえ! それは黒の宝玉か?」


「いいえ、ハーラルト様、これは黒王の魔力が詰まった欠片です。ふふ、御覧なさい、この魔力を。黒王の魔力は優に一国の宝玉を凌駕している」


「は? 黒王? なんのことだ!」


 その質問に答えることなくアルビンは素早く黒い魔力をハーラルトに向かって解き放った。その魔力は反応が遅れたハーラルトに直撃してしまう。それによって勢いよく壁際に吹っ飛ばされたハーラルトはその衝撃で気を失ってしまった。


「ハハハ、剣もろくに振ったことがない王子がよくそれで勝つ気でいたな」


 壁にもたれかかるようにへたり込んだハーラルトから白の宝玉がポロリと落ちて砕けた。




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