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王子、悪魔の胸に顔をうずめる

「そのようなことわたしは聞いてないわよ! ハーラルト」


「我が国は白宝典を主軸にしている国ですよ。なにかおかしなことでも?」


「ハーラルト、あなたわたしの気持ちを理解しようとしないのね。わたしはザーム国の出身よ」


「母上、それはこの国にとっては関係ないことだと何度も申し上げてきました。それになによりあなたは白い魔力をお持ちでしょ? どうしてそこまでオーア国を敵視するのです?」


「あなたには私がどんな思いでこんな小国に来させられたか理解できないの?」


「それは察することはできますが、だからといってこの国の民には関係ないことです」


「関係ないですって! よくもそんなことが言えるわね、民は私たち王族のためにその身を捧げる存在なのよ」


「ちがいます、母上。わたしたちこそが民のためにその身をささげるのです」


「ふざけないで、民が王族である私よりも偉いとでも言うの? 民など大国が攻め入ればそれに従うだけなのよ。そもそもこの国は私が来た時点でザーム国の傘下に入るべきだったのよ。それなのにパストルはオーア国との関係を切らなかった」


「オーア国はそれでもこの国を尊重してきたからです。だからこそ先代、先々代も白魔法を国の主軸としてきたんです。ただ、ザームはそうではないでしょ? この国を乗っ取ろうとしている、ちがいますか?」


「あなたもパストルと同じようにわたしの気持ちを理解しようとはしないのね。私はザーム国の王族、そのことに私がどれだけ苦しんだか、侮辱されたか、わかってるの!」


 そう言ってダフネはカップをハーラルトに投げつけた。


 幸い、当たらずに済んだそのカップはハーラルトの後ろでガシャリと音を鳴らして砕けた。


「……母上、苦しみを作っているのは他人ではない、あなた自身だと私は思う。それはあなた自身で取り除けることではないのですか」


「ふん、簡単に言わないで欲しいものだわ、けれどもう遅いのよ、ハーラルト。この国は大国には抗えない、そうでしょ? オーア国もいつ態度が変わるかわからないのよ」


「そうかもしれません、ただ今はその意思はない、しかしザーム国にはある。それは十分な理由になるんです」


「ハーラルト、もっと賢くなりなさいよ。白から黒へ変わることがそんなに悪いことなの?」


「……そうは思いません、ただ、王家の独断で簡単に変えていいものではないでしょ、この国はそれでも百年以上の歴史があるのです。先人たちが戦って守り抜いたものを個人の判断で変えるべきではない」


「そう、あなたはそれでいいのね、でもわたしはそうは思わないわ、オーア国をいま受け入れることは許しません」


「……最近、白宝典を汚している者がいる。これはこの国の法に照らせば国家反逆罪という重罪が課せられる。わたしは誰であろうと罰するつもりです」


「残念だわ、あなたは王族として致命的な判断ミスをしたのよ」


「わたしは間違ってはいないよ、母上」


「それはいずれ分かるわ、どちらが正しいか、まあ、今回特別にルフィノと文官たちは見逃してあげるわ、彼らだけわね」


 ハーラルトが退出していくと、ダフネは立ち上がって窓辺までいった。そして後ろに向かって声を出す。


「アルビン、もう時間はないようね、動くのよ。わたしは父に連絡するわ」


「了解しました。やっとですね、ダフネ様」


「ええ、それとハーラルトはもうダメだわ、この先邪魔になるだけ、わかっているわね?」


「はい、了解しました」


 一方、ダフネの部屋を出て廊下を歩くハーラルトの表情は硬い。

 先程のダフネのとの会話は、真っ向から母と戦う宣言をしたのに等しく、同時に両者の間にもともとあった亀裂をより鮮明にしたといえたからだ。


「クスクス」


「ん? デルフィナ?」


「聞いていたわよ」


「そうか」


「彼女を倒すには隠し持っている黒の宝玉を見つけないといけないんじゃない? レオポルドも言っていたように」


「それは至難の業だな。将来この国に添える宝玉をすぐに見つかるところには隠していないだろうよ」


「そうでしょうね、じゃ、どうするの? 宰相は救えたけど、彼女をより怒らせてしまったようだけど」


「そうしなければこの国は乗っ取られる、ここがもういいタイミングだろう。とりあえずまずは父に報告する。それからレオポルドも呼んで話し合おう」


 そう言うと、ハーラルトはいきなりデルフィナの両肩を掴んで壁に押し付けた。


「どうしたの」


「……」


「不安なのでしょ?」


「見ててくれ悪魔デルフィナ、わたしが次期王としてこの国のために、民のためにやるべきことを」


 顔を下に向けたハーラルトをデルフィナは両手で自身に引き寄せた。


「わたしはあなたの味方よ、安心しなさい、そして信念を貫きなさいよ」


 ハーラルトはデルフィナの引き寄せる力に身を任せ、その胸に顔をうずめると一言いった。


「ありがとう……」


 それからハーラルトは母の本心を炙り出したことにより、いよいよ積極的に行動していく決意を固めた。そしてさっそくレオポルドを呼んでどう動くか話し合った。


「母はオーア国から使者が来る前に行動を起こすと思う」


「ハーラルト様、黒の宝玉さえ手に入れば相手も大胆な行動はできないはずです。まずはそれを……」


「そうだが、そう簡単に見つけることはできないだろう、父上、どこか心当たりはありませんか?」


 ベッドに横たわっているパストルにハーラルトが話しかけるとパストルは弱々しい声で言った。


「いいや、まったく見当もつかんな。なんとか見つけたいところではあるが……ハーラルト、黒の宝玉を使われたら勝てるとは断言できないぞ、行動するからには勝てる戦いをしなければいかん。オーア国から特使が来るまで待てんか? 我々だけで正面から武力でもって当たっても彼女を拘束できるとは思えない、オーア国を巻き込まなければ勝機はないぞ」


「私もそうするつもりでした、ただもう時間はありません。ルフィノの次はおそらく父上に何かするはず、なのでここはもう強硬手段に出るしかありません。一刻も早く母を拘束するのです、父上、今こそ王令を発布する時です!」


「ハーラルト、待て。ダフネの拘束に動けばアルビンたち騎士が黙っていない、その時点でここは無政府状態に陥るだろう」


「ですがいまここで動かなければ父も私も殺されることになる」


 そこでレオポルドが言う。


「ハーラルト様、なんとか奇襲をかければダフネ一人を捕らえることはできると思われます。それぐらいの兵力ならばあります。我がライザ家の騎士とハーラルト様直属の騎士達を合わせればなんとか」


 レオポルドがそう言ったところでタイミングよく呼び出していた騎士が到着した。


「来たか、入れ、サヴァリオ団長」


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