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悪魔、毒師ステラを友達に誘う

 ステラは小瓶を棚から取り出すと、入っていた粉を揺らしてみた。


(よし、まだ”賞味期限”は切れてないわ、いける)


 小瓶の中の粉は、揺らしたせいかキラキラと光を放っている。これは毒師が使う初歩の毒魔法が付与された粉であった。


(この女には物質化した毒は効かないとみていい、それなら反対に毒魔法ならば効くんじゃないかと推測できる……まあ、そんな人いままで見たことないけどね)


 ステラはアーパル産のお茶をポットに用意すると、そこに小瓶の粉を入れた。


(あー、通常はこのぐらいで十分だけど、まあいいわ、全部入れちゃえ!)


 瓶の粉をすべてポットに入れると、攪拌用の木の棒を取り出してゆっくりと回した。


(よし! 十分でしょう、今度こそは!)


 取り出したカップにポットの茶を入れ終わると、「できあがりました、どうぞ」といってデルフィナの前に持っていく。


「あら、今回は早いのね」


「はい、これも希少なお茶ですので、どうぞ」


「ありがとう」


 お盆ごと差し出されたカップをデルフィナは片手で受け取って躊躇いもなくごくりと一口飲んだ。


 ゴクリと喉を鳴らした音は、デルフィナからではなくステラからだった。

 デルフィナは味を確かめるように口を動かしている。


「うーん」


「ど、ど、どうですか?」


「まあ、アーパル産よりはおいしいと思うけど……正直そんなでもないわね」


「はあ」


「あなた名は?」


「ス、ステラといいます」


「なるほど、お茶にこれほどの変化を加えることが出来るなんて私は素晴らしいと思いますよ」


「は、はい、あ、ありがとうございます」


「合格ね」


「え?」


「あなたわたしの友達にしてあげるわ」


「……」


「どうしたの? 返事ぐらいしてほしいものだわ」


「あ、ありがとうございます! 先生!」


「先生?」


「いえ! し、師匠! わたしをあなた様の配下に加えてくださいませ!」


「ふふ、いいでしょう、ステラ。私のためにもっと精進して美味しいお茶を入れなさい」


「はい!」


「おっと! こんなことしてる場合じゃなかった、ハーラルトよ」


「あ、待ってください! デルフィナ様」


「なに?」


「最初にお出しした極上の茶ですが、残りはアルビンが持っているんです。お、おそらく陛下にお出しするのではないかと……」


「あら、そうなの、じゃアルビンに会ったら分捕っとくわ」


「は、はい、お気をつけて」


「ふふ、いい心遣いね、ステラ。コリンナにも見習ってほしいものだわ」


 そう言うとデルフィナは普通にドアを開けて出て行った。


「ふうー、……あの人はタダものじゃないわ、わたし、やっと使えるべき主人と出会ったのだわ!」


 その頃、ハーラルトはルフィノや第一文官たちを牢から出すため奔走していた。


「父上、アルビンからの断罪状にサインしてはいけません、私の方で調べておりますので」


「わかっているよ、ハーラルト。ルフィノは処刑させない」


 ベッドの上で虚ろな目をしたパストルが息子にそう言った。


「この件はわたしに委譲してください、いいですか? 父上」


「ああ、わかった……」


 パストルはここにきてますます体が弱っていた。アルビンはそれをいいことにパストルを言いくるめて返事を取っているのだろうとハーラルトは予測する。


(その罪人に会ってみるか)


 それから斬り込んできた罪人に会いに行くと、後ろからアルビンが付いてきたため、ハーラルトはアルビンに罪人とは自分一人で会うと言って下がらせた。


 ルフィノたちがいる牢とは違った重犯が入る独房にその者はいる。


「誰だあんた?」


「ハーラルトだ、率直に言う、王妃に剣を向けたというのは本当か?」


「あまり記憶がない」


「記憶がない?」


「ああ、そこの記憶が曖昧なんだ。だからわからない」


「昨日、誰かに何かされた記憶は?」


「わからないが、これを持っていた。それ以外とくにない」


 そう言ってその者は持っていた紙を差し出した。


「なんだそれは、手紙か?」


「あんたが来る前に騎士がそれは証拠になりうるものだから聞かれたらこれを見せろと」


「はあ? おまえが持っていた者とは限らないではないか」


「いや、たしかに持っていた、それは憶えている、拘束されたとき確かに俺のポケットに入っていた」


 男はハーラルトにその手紙を渡した。

 

「どれ、文官と宰相の印か……こんなもん何の証拠になる、これは人から渡された物だろう?」


「わからない」


(これはいままでの罪人と同じだ。記憶がない、よくわからない、それでいて指示した者の造文書を持っている……これは埒があかんな、だめだ。ようは嵌められたということだ)


「そうか、でもおまえが実際に王妃に刃を向けたのは事実だ、誰かに何かされていてもだ」


「そうなるか、だがなぜかそれを受け入れる自分がいる、なぜだろう」


(あーだめか、もう廃人になっている)


 ハーラルトが牢を出るとアルビンが待っていた。


「いかがでしたか? ハーラルト様」


「……」


「事実ということで?」


「アルビン、母の所へ案内しろ」


「はい」


 王城、第二塔、王妃私室……


「あら、ハーラルト、最近顔を見せないから寂しいわ」


「母上、ルフィノは父上にとって大事な存在です。ご容赦をお願いしたい」


「ふふ、何を言うかと思えば、それは私も同じですよ。そうしたいに決まってます、けれど許されないこともある。そうでしょ? それを見逃せばそういう輩が沸いて出てしまうわ」


「罪人が持っていた手紙は証拠としては薄すぎます。あの紙切れ一枚でルフィノや文官を牢に入れるのは無理がある、今回の罪人は実際に刃を向けた者一人と判断します。いいですね?」


「はぁー、しょうがないわね。まあ、エミーリアが可哀想ですしね。わかりましたよ、今回は特別です」


「それではそのように……」


 そしてハーラルトはここがいい機会だと、ダフネに対して戦いを開始する一言を発した。


「それと……母上、オーア国から特使が派遣される連絡が正式に届きました」


「!」


「我が国の白宝玉を調査したいとのことです」


 その一言でダフネの顔は渋面を通り越して鬼のような形相に変化した。

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