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悪魔、友達をストーキングする

「ハァ、ハァ、もうすぐ、もうすぐ」


 コリンナはなんとかライザ家の門にたどり着くと門兵に縋りついた。


「助けてください! 追われてるんです!」


「お、おまえ、コリンナか! 生きていたのか!」


「おい、すぐにレオポルド様に連絡を!」


 一人の門兵が隣にいる相棒に叫んだ。

 ガラガラと開けられたライザ家の敷地にコリンナは四つん這いになりながら

入った。


「た、助かった……」


「大丈夫か? とりあえず邸に入りな、レオポルド様が来られるだろう」


「あ、ありがとうございます」


 そのあとコリンナは、あてがわれた邸の一室で座って呼吸を整えていると、ライザ家当主であり、反王妃を堂々と掲げているレオポルド伯爵が顔を出した。まだ若く、その目からは覚悟を決めた眼差しを感じる青年である。


「コリンナ! 死んだかと思っていたぞ、心臓を撃ち抜かれて惨殺されたと……」


「申し訳ありません! レオポルド様、わたしだけ生き残って……」


「いいんだ、辛い思いをさせてしまったね。ミッションのことは仕方がない、みんな命を捨てる覚悟だったんだから」


「ですが、アルビンがこれを逆手にとって動くのでは……」


「そうだろうね、コリンナがここにいるとわかれば、その隙を執拗についてくるだろう」


「すみません、いっそうわたしも死んでいれば……」


「ちがうよ、コリンナ。わたしはダフネとは違う、邪魔な者を容赦なく殺すあの悪魔とはちがう、大丈夫、方法はある」


「……はい」


―――コンコン


「失礼します、レオポルド様」


「なんだ?」


「門の外に怪しい者がうろついております」


「篝火か?」


「それがどうもそうではないようです、黒髪の女性です。コリンナはいるかとしつこく門兵に聞いているようで……どうしたものかと……」


「篝火じゃない?」


「レオポルド様! あれは得体の知れない者です。王妃の手の者だと思ったのですが、なんか様子が違って……でもあれは近づいてはいけないものです、危険な存在です!」


「どういうことだ? ドナート、その者はそんな危険な奴なのか?」


「……いえ、ちらっと見ただけですが、わたしにはそんな風には見えませんでした、それに……」


「なんだ?」


「友達を探していると」


「友達? コリンナのことか?」


「ち、ちがいます、友達ではありません」


「要するに友達関係の揉め事ということか?」


「そうじゃないんです、わたしのことを一方的に友達でしょって……」


「ふむ、よくわからないが、付きまとわれてるということか? それに篝火はどうした? 近くに来てるはずだが……気になるな、わたしがどんな者か見に行こう」


「だ、だめです、関わっては」


「コリンナ、安心しなさい、わたしが近づかないように言ってあげるよ」


 そう言うと、レオポルド伯爵は騎士のドナートを連れて行ってしまった。


 それからすぐにレオポルドとドナートが門へ向かうと、その者はまだ門兵と言い争っていた。


「だから! コリンナは友達なの!」


「友達だったらなんでコリンナは逃げてきたんだ!」


「知らないわよ、追手から逃げてたんでしょ!」


「それはあんたのことだろ! あの状況ではあんたしかいない!」


「だから!」


 そこへ門兵の後ろからレオポルドが声を掛けてきた。


「落ち着きなさい、私が話を聞こう」


「レオポルド様!」


 そう言うとすぐさま門兵は場所を空けた。


「ハァ、あなたここの責任者? もう、話にならないわよ、この人じゃ」


「なに!」


「まてまてまて、わたしが話すから」


「す、すみません」


「あなた名は?」


「デルフィナ」


「率直に言う、デルフィナ、コリンナはあなたが付きまとって迷惑してるそうだ」


「うそよ! 彼女を出して! 私たち友達なのよ、城ではそう言ったわ」


「城? 君は城から来たのか?」


「王子付きのメイドよ、仮だけど」


「ハーラルト様の……そうか、それで彼女が心配で?」


「ええ、昨日、メイドをクビになったでしょ、彼女は」


「ああ」


「それでさっき王妃派のなんだって言ったかな、燈火だっけ? それに追われていたのよ彼女は。それをちょうど見つけて彼女を守ろうとしたらわたしを無視して逃げたのよ」


「おい、ドナート、やはり篝火が近くにいるようだ、警戒せよ」


「はっ!」


「ああ、大丈夫よ、そいつらは私が始末したから。黒ちゃんのごはんに一週間分の心臓を頂いたわ」


「……」


 そこへタイミングよく、外を警戒していたライザ家の騎士が来て報告した。


「レオポルド様、篝火の奴らが……五番通りの路地で何者かに惨殺されておりました。やった者は不明です」


それを聞いてレオポルドはあらためてデルフィナを見て言う。


「……あなたは王妃派の手の者ではないようだな、コリンナと会わせるかは別だが、話を聞きたい、中に入れ」


「だからわたしは王妃派じゃないって、無所属よ」


 怯えているコリンナとはまだ合わせることはできないと判断したレオポルドだったが、デルフィナからは話を聞かなければと応接室へと案内した。


 部屋でデルフィナの前にアーバル産の茶が用意されると彼は言う。


「とりあえず、私はあなたが我々の敵ではないと判断した。さあ、落ち着いて」


「フ~、まったく困ったことだわ、コリンナには」


 そう言って彼女は、高そうなソファーにドカリと足を組んで座り、出された茶を啜った。


「町での印象だけど、王妃派ってなんかこの王都を牛耳ってる感じだわね。それなのにあんたはよく生きていられるわ、反王妃派でしょ? 聞いたわ」


「まあどうだろうな、反王妃派は以外に多いんだよ。隠れているだけでその人たちから多く支援を受けているんだ。ただ、ダフネの後ろにはザーム国がいてね、それを考えれば、私たちの活動は彼女にとっては微々たる抵抗にしか見てないだろうよ」


「そうなの、ハーラルトも仲悪いのかな」


「ハーラルト様のことかい、ハーラルト様は公平な方だが、王妃の行動には何とかしなければと思っていることだろう、彼女の目的は出身国であるザーム国を誘致してフリート国を無傷な状態で明け渡すことだからな。そしてこの小国にザーム国にいる恋人を呼んで統治させることが目的だろう、驚いたか? このことは内密と言いたいところだが、これを知ってるものは意外に多いんだよ、だから反王妃派が出来たといえる」


「そうなの、じゃあ、ザーム国が来たらおそらくフリート国王もハーラルトも殺されるわね」


「どうだろうか、たしかに二人はザーム国にとっては必要ない存在だ。ハーラルト様はともかく、パストル王は邪魔になるだろうね。まあ、パストル陛下はもうすでに何回か暗殺や毒殺に遭っているがね、あー君には関係ない話だったな。しかしあなたが篝火を殺してくれたことは嬉しかったよ、あなたが王妃派だったらそんなことはしないだろう。で? 本題なんだが……どうやって殺したの?」


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