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6.5
白い世界。
例の女性がそこにいた。
「……」
「……どうした」
「また、お願いします」
同じセリフに苛立ちを感じながら、彼女の表情を見る。彼女の目はやはりどこか悲しそうで、同情を誘われる。
「わかった、わかったけどさ、名前ぐらい教えてくれないかな。あとどうやって俺を呼んでいる?」
「名前は……少し考えさせてください。これが出来なくなったらどうしたらいいか……」
「……そう」
「もう一つの質問なんですけど……私、呼んでいません。私も気が付いたらここにいて。でも、あなたが助けてくれるって……」
「え?」
ちょっと待て、と手を伸ばすが、彼女の存在は認識できなくなっていた。この夢は、彼女の意思ではない? 彼女自体も、何かの力によって導かれている……そういうことなのか?
消えゆく意識の中、俺の右手に大きな擦り傷が見える。
白の世界に、溶け込んでゆく。