俺が休みの日にやらかしてくれたな
休憩室のドアをゆっくりと開けて、成田 佳代子は入ってくる。
「ここに座って。何のことかわかっているだろう」いつもは昼休みなど
の休憩に使われるテーブルを前に店長は、幾分怖い顔をして座っている。
「花村さんのことですか?! 私、別に間違ったことは言っていません」
しかし、昨日俺の休みの時にやらかしてくれたなあ。確かに、成田の言いたいこともわかるが…。
いち早く、昨日ピクルス(凛子)からは同期の成田と揉めて店を辞めるかもしれないと泣きそうな文面が送られてきていた。まだ、俺がつうてん様とは知らないから素直な気持ちが伝わる文面だった。
翌朝早く店に行って、さすがに何もしらないふりをしていたが。他のスタッフが俺の顔をみるなり昨日の出来事を詳細に語ってくれた。周りも、休みの日まで電話するべきかどうか悩んでいたようである。
「花村さんが品出しの担当だったんですが賞味期限まじかのものが残っていたんですね。そのことを成田さんは、自分が間違えたものを人のせいにしているといちゃもんづけから始まって花村さんの為にいちいちメモに書いたりといったことや、今までは暗黙の了解もいちいち説明しなくてはならないことに腹をたてていたんです。それに加えて、面と向かって時給泥棒ってまで言い放って」
彼女は負けず嫌いでしかも花村さんと同期だから、彼女の仕事ぶりは見ていて歯がゆかったんでしょうね。
花村さんも何も言い返さず「ごめんなさい、今日は早退します」と言って帰っていったわ。まあ、確かに彼女がいなくても仕事はまわるんだけど。なんだか、スタッフ間に気まずい空気はずっと漂っていたということだった。
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「店内に入ったすぐに昨日の事はすぐ俺の耳に入った。今日も花村はシフトに入っているのに来ていないじゃないか」
「花村さんが、いなくても何も困らなかったですよ」
「そういう問題じゃないだろ。それに彼女のためでもあるが、初歩でつまづいたんだったら原点に戻って見直すチャンスを上げてもいいじゃないのか?」
「……なんで私たちまでつきあわなきゃならないんですか。店長はいろんな店の改革をしていて、名をあげたいだけなんでしょう?!」
「……」顔が幾分、険しくなっていた。
「ちょっと、私服に着替えて待ってろ」そう店長は言い放って部屋を出ていった。
(なんで、まだ終了時間じゃないのに着替えなきゃならないの? もしかして、花村を迎えにいくとかいわないでしょうね。ぜったーい。嫌よ。なんで、あんな愚図に謝らなきゃならないの。私、皆が思っていることを代弁しただけなのに…なんで、私だけが悪者になるわけ?)
「着替えたか?」店長は一足早く、私服に着替えて声をかける。
「花村さんに謝りに行けっていうんですか絶対に、嫌です!」
「そうじゃない。君は言いたいこと言って満足かもしれないが、店の空気が重たい。少し、空気の入れ替えをするためだ」