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【完結】伝説の悪役令嬢らしいので本編には出ないことにしました~執着も溺愛も婚約破棄も全部お断りします!~  作者: イトカワジンカイ
最終章 逆襲編

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悪役令嬢らしいので②

察したカテリナがイリアの方を振り向いたので、イリアはそれには直接に答えず、ただ口角少し上げて笑った。


「少しだけ協力をお願いしただけですよ。ふふふ、国を乗っ取ろうとしているのですもの、無策で来るほど馬鹿ではないですよ。あぁ、大丈夫です。とりあえずはここまでは攻撃しないように伝えてありますから。私は武力でこの国を制圧したいとは思ってません。ただ、あなた達の悪行からこの国を守るという目的のためにこのような行動をとっているので」


「悪行…。ふっ、我らが何をしたというのだ」


「カテリナ、そしてアリシア。あなた方二人がこの国に伝染病を振りまき、多くの人を死なせたことです」


聴衆と化した参列者の貴族たちがざわめいた。

今まで何が起こっているのか理解が及んでなかった貴族たちも、ここにきて何か重大なことが起こるということを理解したようだ。


そしてこの聴衆こそが証人となる。

白日の下にカテリナとアリシアの罪を晒すことで、教会の権力によってその事実がねじ伏せられるのを防ぐ。

だからイリアは皆に聞こえるよう大きな声で話を続けた。


「!!」

「伝染病…?なにを言っているか理解できぬ」


イリアの言葉にアリシアはびくりと肩を震わせた。

その一方でカテリナは平然と言った。


「我らが伝染病を流布させた?妄想も甚だしいな」

「そ、そうよ!言いがかりよ!証拠があるなら持ってきなさい」

「証拠ですか…ありますよ。こちら、見覚えがありますよね」


イリアは乳白色の石を取り出し、二人に突き出すように見せた。


「死の魔石…知らないとは言わせないわよ。カテリナとアリシア、あなた方がウィルに依頼して作らせてものね。そしてこれを利用して伝染病を偽装し、人を殺したのよ」


「私は知らないわ。大体ウィルって誰の事よ!」

「我も知らぬな」


その言葉にイリアの後ろに控えていたウィルに一歩前に出るように促した。

そしてウィルに質問した。

さながら裁判の証人尋問のように。


「この魔石を生み出したのはあなたよね」

「あぁ、そうだよ。これはボクが生み出してしまった罪の証。人を死に貶める恐ろしい魔石だ」

「この魔石の作り方を知っているのは誰?」


「魔石を生み出すことができる魔法陣を知っているのは教皇カテリナだよ。そもそも魔石の生成依頼をしてきたのはカテリナなんだ」


カテリナは何も言わずイリアを見つめている。

顔色一つ変えないカテリナを揺さぶるのは少しだけ時間がかかりそうだ。

だからイリアは先ほど動揺の色を見せたアリシアにターゲットを変更した。


(こっちを揺さぶったほうがボロを出しそうだわ)


アリシアは蒼白になりながら、エリオットの腕の服を握っている。


「魔石の生成を依頼してきたのはカテリナだけかしら?」

「いや、あの日…教皇のほかに、もう一人女の子が来て魔石の生成を依頼してきたんだ」

「その女の子がアリシアなのね」

「あぁ、そうだよ。しっかりとこの目で見た。彼女と挨拶も交わした」

「…わ、私は知らない。貴方なんかと会ってない!」


叫ぶように否定するアリシアに対し、ウィルは淡々と言った。


「この魔石を生み出すには人の命が必要だ。材料に使う罪人や奴隷の引き渡しは彼女がしたんだ」


「嘘!嘘よ!そもそも、私達が依頼したのは死の魔石なんかじゃない!私の治癒魔法を強めるための魔道具の制作を依頼したのよ!それなのに、あなたが勝手に死の魔石を生み出したんじゃない!」


叫ぶウィルにアリシアは一歩後ろに後ずさり、首を振ってそう答えた。

彼女は自分の失言に気づいていない。

ただ動揺し、自分の罪から言い逃れようとしているだけだった。

イリアはそれを見て、冷静に彼女の言葉について指摘した。


「アリシア、貴女が依頼したのは治癒魔法を強化するものよね」

「そうよ!」

「なるほど。では少なくともあなたはウィルと会っているということね」

「そ…それは…」


「そしてこの魔石が死の魔石だと言い、死の魔石はウィルが〝勝手に〟生み出したと言った。これは魔石の生成方法を知っているからそういう発言をしたのではないのかしら?」


ここにきて初めてエリオットが口を開いた。


「どういう意味だ?魔石の生成方法?それに奴隷?」


エリオットを始め、聴衆にも分かるようにイリアはゆっくりと説明をした。


「少し説明しましょう。この乳白色の魔石。これは私達が〝死の魔石〟と呼んでいるもので、口にすれば人を死に至らしめる毒となる魔石なのです。そしてこれは治癒魔法の魔道具に必要な〝生命の魔石〟を生み出す際にできる副産物なのです」


イリアがアリシアに視線を移すと、アリシアの表情は張り詰めたものとなった。


「そしてアリシア。貴方はそのことを知っているからウィルが〝勝手に生み出した〟とう発言になったのだわ」

「くっ…」


イリアは再度エリオットへ向き直る。


「殿下のもう一つの疑問。奴隷という言葉がなぜ出たのかも説明しましょう。この二種類の魔石を生成するには人の命をエネルギーとして使用して生み出すものなのです。ですからこの魔石を作るためにアリシアは奴隷をその材料として提供していた。ウィルが先ほど言った『アリシアが材料に使う罪人や奴隷の引き渡しをした』という言葉はそのことを言っているのです」


さぁっとエリオットの顔色が青ざめた。

愛しい恋人が悪魔の所業を行っていたのだ。驚くのも無理はない。


まぁエリオットの反応などイリアとしてはどうでもいいので、すぐにカテリナへの追撃へと話を移した。


「そして魔道具制作を依頼したカテリナ、貴女もこの事実を知っていたはず。つまりあなた達は共謀してこの死の魔石の生成を行っていたのよ」


カテリナはというとイリアの言葉を否定する術がないようで、少しばかり眉間の皺を寄せたのちに反撃してきた。


「私が魔石生成を行っていたとする根拠はなんだ?言いがかりに過ぎない」


「根拠はいくつかあるわ。死の魔石を生み出したウィルにあなたは『利用する価値がある」と言っていたそうね。死の魔石の存在を知った時、貴女は考えたのよ。死の魔石と生命の魔石を利用する方法を。死の魔石は口にすれば死に至る毒になる代物で、生命の魔石だけが唯一それを解毒する代物。だから死の魔石を服用させた者を生命の魔石の力で解毒する。つまり、魔石を流布して伝染病に見せかけ、それをアリシアが生命の魔石から作った水を聖水として与えて助ける。ほら、聖女の救済劇の完成だわ」


大分話の核心をついたであろう。

聞いていた聴衆からもざわめきが起きた。


「そんな絵に描いた餅のようなこと、できると言えるのか?」


「たしかにそれは机上の空論。だから貴方達はまずはトリアスの農村を使って実験したのよ。私が城で伝染病の研究をしていた時、その報告書によれば最初に伝染病の集団感染が起こったのはトリアスの農村だった。トリアスはアリシアの出身地。そしてその後アリシアの行動ルートと共に少しずつ王都まで広がって来ていたわ」


「なるほど…。ではどうやってその毒を使って伝染病を流行らせたというのだ?伝染病というからには人に伝播させねばならないだろ?」

「経口感染を使ったのよ」


ここで初めてカテリナの顔色が変わった。

それを見てイリアは確信を持ってその方法を述べた。


伝染病が流行する原因には四つある。

空気感染、接触感染、飛沫感染。そして経口感染だ。イリアは今回の伝染病の特徴をいくつかまとめたが、空気感染や飛沫感染、接触感染であるならば、感染者に関わりのある人間は高確率で発症するはず。


だが最初に集団感染が認められた村の人間に接触していた人物は誰一人として感染しなかった。つまり残された可能性としては経口感染が高いのだ。

それを聞いたカテリナはイリアの推論を鼻で笑いながら聞き返してきた。


「では問うが、何を食したらそうなるのだ?まさか我らが一人ひとりに毒を盛ったとでも?そんなことは不可能だと赤子でも分かる」

「砂糖を使ったのよ」

「砂糖だと?その根拠は?」


ピクリとカテリナの眉が動いた。

アリシアの顔色も蒼白でイリアは自分の推理が核心に近いことを悟った。

だから冷静にこれまでの推測を理論立てて話す。


「まず最初の発症患者を除くと、貧困層の発症は極めて低かった。そして逆に富裕層が多い。つまり、口にする食べ物ならば嗜好品である可能性が高いわ。

だけど貴族でも乳児の症例はほとんどなかった。それは乳児が摂取しないものだと言うことになる。

食べ物で貴族が口にする嗜好品となるとコーヒー、紅茶、アルコール、菓子なんかが該当するわ。一方で発症の割合は圧倒的に女性や子供に多い傾向にあった。

となるとアルコールについては子供は飲めないし、紅茶やコーヒーになれば男性も一般的に摂取する。

そこで私は男性の発症者の生活習慣について、調査を行ったわ。その結果、皆、菓子や甘いものが好物だった」


男性の発症例は多くなく調べるのが安易だったし、総じて体型がぽっちゃり型だった。

女性も糖分を多く摂取していてふくよかな人物が多かったことから、その原因を導くことができたのだ。

それにイリアはドニエ男爵のところで死の魔石を粉末にして砂糖に混入させているところも見ていた。

それも推察させる要素の一つだった。


「このことから砂糖であるという結論に至ったわ。それに砂糖の原産地は限られてるけど、トリアスもその原産地の一つよね。だから流通させやすいという理由もあったはずだわ」


全ての点が繋がった瞬間だった。


「さぁ、何か反論はおありですか?」


「もしそうであっても聖女の力が無くてはこの伝染病は治らない。この国の砂糖の産出量の殆どはトリアスであり、もしそなたの言い分が正しいとするならば国中の砂糖に死の魔石が混入している。砂糖を使用するなというわけにもいかないだろう?それともそなたは生命の魔石を生み出すために、人を犠牲にしてそれを作ろうというのか?」


「それについては心配ありません」

「なに?」

「辺境の魔術師、ディボの協力のもと、人の命を代償にしなくても生命の魔石のみを生み出す方法を開発しましたから」


この言葉はカテリナの予想を超えたようで、目を大きく見開いてイリアの言葉を聞いていた。


「ふふふ…聖水を作れる人間が聖女ならば、私も聖女ということになるわね。あなた方の筋書きならば、聖水を作れる唯一の存在となった私には皆逆らえないし、だから国を牛耳ることが出来るようになるわけよね?さて、皆様、私とこの方たち、どちらに付けば利があるのかは一目瞭然ですよね?」


アリシアとカテリナの犯罪が白日の下に晒され、伝染病を治せるという聖女の力ももはや不要。

しかもイリアのバックにはランディックがいるのだ。

事実上ガイザールはイリアに降伏するしかなくなったのだ。

聴衆からもイリアを支持する反応が伝わってきた。


だがカテリナの目からはまだ敗北を認めない強い力が残っている。

それは権力を欲する者の目であり、権力への執着心が垣間見えた。

だがイリアにはそれ以上に復讐に燃える炎が見える気がした。

なぜそう感じたのかは分からない。そして何に対しての復讐心なのかも分からない。

ただ激しい感情がその目に映っているのは間違いなかった。


「まだだ…」


カテリナが絞り出すようにそう呟いた。


「そなたの主張はウィルの証言の上、そなたが推測したに過ぎない。我々が伝染病を広めただと?その証拠はどこにあるのだ」

「貴方達だって同じことをしたわ。なんの証拠もなく誰かも分からない人間の証言のみで私を追放した」


イリアも負けじとカテリナを見据えた。

だが内心は焦りも感じている。

確かにこれまでの内容はウィルの証言を基にしたものだ。

状況証拠や調査結果はあるものの、決め手に欠けているのも事実だ。


「ウィルという一人の人間の証言だけで我らを罪人呼ばわりするとは片腹痛い」


(あと一歩だったのに。…落ち着いて考えるのよ。逆に何を証拠とすればいいのかをカテリナに提示させる?それとも逆にウィルの証言が嘘だと言う根拠を出させるとか?)


イリアは素早く考えを巡らせる。

だが即座に反論できなかったイリアに対し、カテリナがダメ押しとばかりに圧をかけてきた。


「さぁ、ウィルという男の証言以外に何か証拠はあるのか?」

「ではそれ以外の証言があればいいのか?」


イリアも、そしてカテリナも、言葉を発した人物を見た。

それはイリアも予想していなかった人物の発言だった。


長セリフ多くてすみません…

論文とかだともっと簡潔に書けるのに…技術不足…


それでもブクマや星をくださる方がいて、本当にありがとうございます

ラストスパートなので頑張ります!

引き続き読んでいただけると嬉しいです

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