第一話
やばい、大変なことになってしまったのかもしれない。
『レベルが2に上がりました』
その日、俺ことキリサキユウは目を覚ますと何故か一面緑の草原にいた。
真っ直ぐと少し進んだ場所に街のような場所が見える。
左を向くと三人組のファンタジー世界の冒険者のような服装をした男たちが五匹のスライムと戦っている。
……は?
え、なになにこれ、なんかの撮影か?
つーか、なんで俺はこんなところにいんだよ。
『レベルが3に上がりました』
謎だらけである、何一つ意味がわからない。
「どうなってんだこれ……いててて」
頬を引っ張ってみても痛い。
この感じ、夢ではなさそうだ。
ならなんだ、周りを見ても撮影している様子もないし、スライムがリアルすぎる。
はは、まじか。
そこで俺は一つの答えに辿り着いてしまった。
多分これ、異世界転移というやつである。
そう、あのよくアニメや漫画やライトノベルで見るアレである。
ガチで異世界転移なんてものあったのかよ。
『レベルが4に上がりました』
「……うるせえーよ! さっきからなんなんだよ、聞いてみぬふりをしていたのによ! レベルってなんだよ! 何もしてないのに勝手に上がるはずがねーだろ、舐めてんのかよ!」と怒鳴る。
はあはあと息を整える。
『レベルが5に上がりました』
「だーかーら、うるせーっつってんだろうが!」
三人組の冒険者がスライムを全て倒し、こちらを見ている。
めちゃくちゃ恥ずかしいんですけど。
一旦落ち着くとするか。
さて、レベルアップが止まらないのだがどうしたことか。
「と、とりあえず異世界転移だもんなこれ」
本当はめちゃくちゃ、やったー、と喜びたいところだが先程の怒鳴りで三人組の冒険者がこちらをマジマジと見ているので心の中だけにしておこう。
しゃあああ──ッ!
なんでかはわからないがこれはもう異世界転移ってことでいいんだよな!
剣と魔法の世界っつーことでいいんだよな!
ガッツポーズを取る。
そうなれば、ひとまずあそこの街に行くとするか。
と、その前にこの世界の言語は日本語と同じなのだろうか。
さすがに違う気がするが……日本語が通じなかったらおしまいだ。
他にもなぜ異世界転移をしてしまったのだろうか。
……。
少し考えてみる。
しかし、思い出せない。
あれ、昨日まで俺は何をしていたんだ?
昨日より前の記憶全てがモヤモヤしてるんだけど。
『レベルが6に上がりました』
……また聞こえた。
本当にうるさいなあ。
何故レベルが勝手に上がっているのだろうか。
多分だがこの声は俺だけにしか聞こえていないで間違いはなさそうだ。
なんというか、直接語りかけられているような感じである。
ん? 待てよ、さっき息が荒い時めちゃくちゃすぐにレベルアップしたと声がしたぞ。
わかってしまったかもしれない、何故レベルが上がっているかについて。
俺は、はあはあ、と先ほどよりも長く大量に息を吐く。
『レベルが7に上がりました』
……ビンゴ、わかっちまったな。
俺って天才なのかもしれない。
憶測にしか過ぎないが、多分これ、俺が息を吐くことによってレベルが上がっている。
ち、チートだ。
息を吐くだけでレベルアップとか、チートすぎるだろ。
「そうなってくると、現在のステータスが見たいな」
異世界、それもレベルという概念があるのだ。
ステータスという概念があってもおかしくない。
「とりあえずあれだな、あそこの街にあるだろ冒険者ギルドくらいよ!」
これはそんな突然異世界に転移した少年の異世界生活である。