本編 第五話 帰ってきました。&復学
お世話になります。
最近、やっと少しずつですが、読んでいただけるようになってきたみたいです。
ありがたい事です。
読んでいただいた方々、謹んで感謝申し上げます。
有難うございます。
病院から自宅まで約40分。車窓から見覚えある懐かしい風景を眺めながら、
(うあぁ~!すげぇ懐かしい~)などと思いのほか感慨にふけっていたが、
「お父ちゃん、お母ちゃん、長い間色々と心配かけて本当にごめんなさい。それから今までありがとう。おかげでやっと退院できたわ」
頭を下げながら、ぽつりと、だがはっきりした口調で謝罪と感謝の気持ちを表す。
(一応ケジメやしな)
すると父親は「親が子供を心配するのは当たり前や。」とバックミラー越しに笑ってくれた。
一方、母親は「ほんと、心配やったわ~。良かった。良かった…」涙ぐみながら喜んでくれていた。
両親の深い想いを受け止めて雄二は、
(せっかく生き直しできて、まともな身体も手に入れたんやし、今度はもうちょっと親孝行せなあかんなぁ)
そう心に深く刻み込むのであった。
やがて車は生まれ育った街に入っていった。
より一層感動に浸ってしまう雄二なのであるが、ふと、気になったことを尋ねてみた。
「学校、いつから行けるんやろ?」
すかさず母親が、
「まず体調を見て、大丈夫そうやったら一度学校へ行って、先生との面談してみて決めたらええよ。そういう話になっとるしな。」と、説明してくれた。
「わかった。そうするわ」と返事をしておく。
その後もたわいもない会話を続けていると、なじみの深い小道に入っていき、定位置である駐車スペースにて車は停車した。そしてそこから徒歩で200メートルほど。
ついに我が家に到着した。
稲村家は既製服の縫製を家業としており、自宅兼作業所という造りになっている。
玄関に入るとすぐ、幅広の階段があり、2階がそのまま作業所である。
靴を脱いでいると、上から声がかかる。
「お~、ゆーじ!お帰り~!退院出来てよかったなぁ」
「ゆーちゃん、お帰り~!退院おめでとう!」
うちで働いてもらっている従業員のこうちゃんとはるみちゃんである。
こうちゃんは今の母親の一番下の弟であり、血は繋がっていないが雄二にとっては叔父にあたる。
余談だが、タイムリープ前、雄二が小中時代の頃もこのこうちゃんをはじめ、母方の兄弟は皆 雄二に対して気さくで優しかった。
はるみちゃんは父親が自分の田舎から雇う為に連れてきた女の子である。このはるみちゃんも雄二には特に偏見も無く、普通に接してくれていた。
ちなみにこの二人、その後夫婦になるのだが、この時はまだ職場の同僚であり、初々しい付き合い始めたばかりのカップルだったはず。
二人にも心配をかけたお詫びと感謝を告げて、自分の部屋に入る。
自分の部屋は2階にある作業所を通り抜けた奥の方にあり、広さは6帖である。
部屋には勉強机とベッド、本棚。サッシ窓の上にエアコン、その上には従兄からもらったビート〇ズの大き目なパネル。勉強机の上には買ってもらったばかりの『ラジカセ』・・・この頃から雄二は新しもの好きで特に機能重視派だった。このラジカセも付加価値がウリのイロモノっぽい物だった。
<この~木何の木♪>で有名な某電気機器メーカーがまだ元気だった頃、発売していた多機能ワイヤレスマイクが付属の機種だ。
(・・・懐かしすぎて目から鼻水が。。。)
タイムリープする前と全く同じ状態の自分の所有物に感動するあまりただ…立ち尽くす。
(当時はカセット全盛でUSBメモリはおろかCDも無かったよなぁ…)と、思い出しながら震える手でラジオを点けてみる。
流れてきたのはちょうどこの頃、世界的な人気を誇っていた米国の兄妹デュオグループ『カーペン〇ーズ』のヒット曲“トップオ○ザワールド”だった。
立て続けに起きた感動に打ちひしがれていると、下から呼んでいる声がしたので、ラジオを切って部屋を出た。
母親から、「明日は12月1日で日曜日なのでゆっくりして明後日、月曜日にとりあえず学校に連絡してみるけど大丈夫か?」と問われたので「問題ないよ」と答えておく。
居間でのほほんとテレビを眺めていたらワイドショウみたいな番組の中でプロ野球の話題が流れていた。
(ああ、そういえばV10逃してミスター引退したんだっけ?)などと記憶の確認をしていたら、妹が小学校から帰宅してきた。
居間に入ってきて雄二を見つけるやいなや、飛びついてきて、
「おかえりぃ~!お兄ちゃんっ♪」と、笑顔満開で言ってくれた。
(えっ?!…ちょっと待て。こいつってこんなにブラコンやったっけ?)
そう驚きつつも秀美にも心配をかけたことを詫びる。その際、何故か無意識に頭をナデナデ。
この行為は雄二自身も予想外だった。
(ま、まあ…本人は目を細めて嬉しそうやし、いっかぁ。可愛いし。。。決してシスコンじゃあないんだからねっ!。。。たぶん)誰に言うでもなく、そんな言い訳をしてしまう雄二であった。
その日の夕食は雄二の快気祝いという事で母親が頑張ってくれた。まったくもって感謝である。
一家団欒の幸せなひと時を過ごした後、入浴を済ませて少し早いが就寝することにした。
ベッドに寝転がって、天井を見る。
(ふむ。。確かに見覚えがある天井やわな。)
改めて自分が再びこの時代に舞い戻った事実を実感すると同時に、今度こそ、見誤らないように、そして充実した人生を歩もうと、心に誓う雄二であった。
翌日は日曜日だったこともあり、家業も休みのようで家族それぞれゆったり過ごしていた。
雄二も部屋でくつろいだり、妹の相手をしたりして過ごした。
TVを点けてみると、『ロッ○歌のアルバム』などという懐かしすぎて涙腺が決壊しそうな番組が放送されていた。「一週間のご無沙汰です。玉○宏でございます。」のお決まりフレーズを久々に聞けた。(お口の恋人ってどんなんやっ!?)と改めてツッコミを入れながら。
次の朝、つまり月曜日。朝食を摂るために下に降りると、母親が体調を尋ねて来たので
「大丈夫っ!問題ないよ。」と答えると「じゃあ学校に連絡を取ってみるけど?」と言ってきたので了承しておく。
朝食後、居間で久々に朝刊を見てみる。
「そういえばこの年って企業を狙った反体制派(赤軍とか革マル派など)による爆破事件とかハイジャック事件とか多かったよなぁ」
と、呟きつつ、ぼんやり新聞を眺めていた。
それも飽きたので、自分の部屋に戻り、中学校の教科書に目を通してみることにする。
その際、『第二の権能』の設定を<10>にし、【アカシック・レコード】も繋ぎっ放しにしておく。
主要5教科を中心に1時間程度かけて、理解確認をやっておく。
(これで学校に復学するようになっても問題ないやろう。使えるもんは使わんとだよなw)
あとは『第一の権能』のレベルも<5>に設定しておく。
この状態で普段の生活が過ごせるよう、カスタマイズする。
(まあ、あんま目立たんように、極力手は抜かんとやけどなぁ。特に身体能力は)
『第一の権能』がレベル<5>の状態でさえ、どんな競技であっても間違いなく世界記録を軽々塗り替えるレベルなのである。
ついでに『第五の権能』の中の【プレコグニション】と【アナライズ】は常時有効にしておく。
この二つは意識すれば作動するようになっている。{ご都合主義万歳。}
既に雄二が無自覚に非常識なほどの設定してしまっているのだが、お構いなしに満足していると、母親が呼んでる声がした。
行ってみると、母親曰く、
・学校と連絡を取ったところ、今週木曜日から期末試験である。
・試験後から登校することにするのを勧めるが、この場合、冬休みに補修が必要。
・試験を受けるつもりで登校することも可能ではあるがこの場合、念のため現状の学力を診たいので、可能なら本日昼からにでも学校に来て欲しい
との事。
「どうする?雄ちゃんのええ方を選んでな?無理せんでええからね?」と母親に問われ、
ちょっと考えるフリをして、「昼から学校行ってみるわ」と、答える。
母親は笑いながら「ほーか、わかった。なら学校にそない伝えるわ」てな具合に応じてくれた。
その後、「『じゃあ昼の1時半ごろ来てください』だって」と教えられ、その準備をする。
時計が1時を回った頃、「送ろうか?」と父親が言ってくれたが、「久々やし、歩いていくわ」と答えて靴を履く。
家から中学校までは徒歩で10分程度であった為、通学路を確認しながらも余裕で辿り着いた。
久しぶりの母校である。(俺の実際の感覚で言えば四十数年ぶりやから、ほんと久しぶりやなぁ。)そんな感想を持ちながら、校門(裏側)を抜け、職員室にまっすぐ向かう。
扉を開けると、記憶にある顔が複数、一斉に雄二を見やる。そのうちの一人、小柄な女性教諭が近づいてきた。
この頃の担任だった酒巻先生である。担当教科はたしか音楽だった。
「稲村君っ!もう体は大丈夫なの?みんな心配してたんだよ?ほんとに」と言われたので、
心配をかけた事の謝罪と感謝の言葉を口にする。その後、幾人かの教師と挨拶を交わし、学年主任の先生、酒巻先生と連れ立って別室に通され、意思の確認、今までの成績の確認を行なうみたいだ。
既に常識改変されている為、<学業成績は断トツで№1、運動能力にも優れており、素行や授業態度、友人関係も全く問題ない>という事になっていた。もう一度言おう。{ご都合主義万歳!}
それでも念のためという事で用意された5教科の試験を行なう。1教科30分程度の問題なのだが、それをとっとと片付けていく。5教科をまとめて1時間足らずで終えた。その場で採点された訳だが、勿論 全教科満点である。
先生達は揃って目が点になり、固まってしまった。
いち早く再起動した学年主任が「いやはや・・・さすがやねっっ!長期病欠していたのに。。。」と、興奮しながら讃えまくってくる。酒巻先生も「も、問題ないみたいやね」と、ポツリ。
「じゃあどうしますかねぇ?明日1日体調を整えてもらって、問題なければ明後日から登校という事で宜しいかな?明日になって何かあったら又、連絡をもらうという事で。どうですかね?」
と、学年主任が提案してきたので「僕は問題ないです。」と答え、酒巻先生も同意する。
という事で、明後日から復学することに相成り、段取りを決めて、その後、挨拶をかわして学校を出て帰宅することにした。
帰り道はのんびりと周りの景色を眺めながら歩くことにした。
(そういえばこの辺、小径とかが多かったよなぁ。)そう思いながらある小路に目をやると何かのお店らしきものが視界に入ってきた。
(あれぇ?こんなとこに駄菓子屋なんかあったっけ?記憶にはないのだが?)と、首をかしげながら近づいてみる。お客はいないようだ。入ってみたいがあいにく持ち合わせがないので諦めて踵を返した。
(また今度寄ってみよ。)
帰宅して仕事をしている両親に学校での件を報告した。明後日から学校へ通うことを了承される。
既に12月に入り、寒くなってきたので石油ストーブが絶賛稼働中であった。時計が4時過ぎ、少しすると妹が学校から帰ってきたので、「おかえりぃ~」と出迎えると「ただいまぁ~♪」と言いながら、しがみついてきた。
身体が冷えてたのか、少し冷たかったので擦ってやると嬉しそうに顔をうずめてきた。
(ほんとに秀美はどーしてまったんかなぁ?こんな事するようなキャラじゃなかったはずなんやけど?)
妹のあまりな懐き方に戸惑っていると、母親が「秀美はほんと、お兄ちゃん子やねぇ!」と、笑いながら話している。
どうやらこれがデフォルトらしい。。
「ねぇ、お兄ちゃん?勉強教えてぇ」と、お願いされたので「まず、手洗いとうがいをして着替えてからやね」と答えておく。
母親の話によると、妹はあんまり勉強は得意ではないらしい。特に算数は壊滅的みたいだ。
(ふむ、そういうとこは以前と変わってないみたいやな。なんでか安心するわぁ♪)
準備ができたとの事なので、秀美の部屋に入って勉強をみてやる。
(この部屋も見覚えあるわぁ。漫画雑誌がぎょ~さんあるし。。『なか〇し』とか『り〇ん』とか。いやぁ懐かしいなぁw)
暫く教えていると、どうやら根本的に目の付け処が少しずれている事に気付く。
そこで打開策を【アカシック・レコード】と相談して決めてゆく。徐に『第五の権能』の中の【状態改変】、【常識改変】を行使して、意識改革と思考制御がスムーズに行えるようにする。更に暗示をかけるように、
「秀美はやればできる子や。少しやり方、考え方を変えれば、簡単にわかるで?秀美は頭がええ子。お兄ちゃんの妹やから大丈夫や♪」と、優しく言い聞かせる。
すると、「なんか段々わかるようになってきたぁ~♡」なんて言いながら、自力で勉強しだした。
「またわからんくなったら呼べばええから、ちょっと自分でがんばってみ?」そう言い残して、いったん秀美の部屋から出ることにした。
ちなみに秀美の部屋は雄二の部屋のすぐ隣である。
(これで多分大丈夫やろっ♪)身内にはというより妹にとことん甘い雄二なのであった。
いよいよ次回から学校生活が始まります。
たまに権能を使い、ヤリ過ぎます。でも後悔は全くしないw
ヒロインらしきものもそろそろ出そうかな、っと