本編 第二十三話 また紡ぎ合いし縁、そしてこれから
お世話になります。
いつも読んで頂き、誠に有難うございます。
圭子復活回です。そしてついに・・・
取り敢えず、未だ混乱状態の圭子を【異空間部屋】に連れて来た。
そう。そこは圭子の記憶を奪った部屋。
落ち着かせるためにソファーに座らせて、備え付けの冷蔵庫からP◦Nジュースを出し、注いで圭子の前に置く。
飲むように促して、自分も飲むと、ひと呼吸して口を開く雄二。
「大丈夫か?」
幾分落ち着いてきたのか、周りをキョロキョロしながら「はい」と答える圭子。
ジュースを一口飲んで、雄二の顔を見ながら、
「あ、あのぉ…あなたは…え…と・・・なんか…なんか…とても…」
両手で頭を挟むようにして必死に何かを思い出そうとする圭子。
しばらくは黙ってそんな圭子を見つめていた雄二だが、ポツリと一言。
「それ」と言いながら圭子の装着しているブレスレットを指さす。
ブレスレットに手を添えながらそれを見やり、何かを感じたかのように、
「えっ?・・・あっ!!」と、声を漏らす圭子。
また少し沈黙が流れたのち、意を決して、恐る恐る圭子が聞いてくる。
「えっと…ひょっとして…私の事、知ってますよね?」
雄二は短く「うん。」と答える。
「このブレスレット…もしかして…あなたが?」探るように聞いてくる圭子。
「うん。」またも短く答える雄二。
瞬間、圭子の頭の中がスパークしたように閃光する。思わず目を閉じて、両手で自分の頭を抱え込む。そして「う…あ…」うめき声を上げる圭子。
雄二は【状態改変】、【常識改変】を使い、雄二の記憶を再び圭子の中に戻すのだった。
そして、ついに雄二が名前を呼ぶ。
「圭子・・・」
それを耳にした途端、圭子の全身に電流が流れたかのような衝撃が走る。
一瞬ビクッとなり、やがて・・・圭子の目からこみ上げてくる泪。
口を両手で覆い、どんどん溢れ出てくる泪を拭うともせず、
「雄・・・ちゃん・・・?」
雄二が名前を呼んだのがトリガーとなって封印されていた記憶が今、再び解き放たれたのだ。
蘇る記憶。圭子の頭の中をグルグル駆け巡ってゆく記憶。湧き上がってくる想い。
「うわぁぁぁぁ~~~ん!!!」と叫びながら、雄二の胸に飛び込む。
号泣である。泣き止むまで待つ事にした雄二は抱き着く圭子を努めて優しく抱き寄せ、片手で頭をぽんぽん。
十数分、一頻り泣いた圭子はようやく落ち着きを取り戻すと、いきなり核心を突く。
「ねぇ、雄ちゃん?私、何で雄ちゃんの事だけ記憶失くしてたの?それと、何で雄ちゃんが私の前にいるの?ってゆぅかぁここってどこ?前も一度来たような…ねえ、雄ちゃん?」
立て続けに尋ねてくる圭子。
どう説明するか?考えあぐねていると「全部話して?正直にね」と言う圭子。
少し考えて、腹を括って「わかった!」と伝えると、一度深呼吸する。
「まず、何で俺に関する記憶だけ失ったかと言うと、俺が消したからや。」
そう言われ、わけがわからない、というように「はあ?…」と戸惑う圭子。
「信じられんかもしれんけど、聞いて欲しい」と雄二が語りだす。
昨年の夏、自分が入院していた時に神々に邂逅して頼まれ事をされ、それをこなしたらその神々から不思議な神の力を与えられた事。そして、昨年末に圭子が西ドイツに行かざるを得なくなって、雄二と離れ離れになる事を悲観して心が壊れ始めたため、それを救う為に、普通の生活ができるようにする為に仕方なく雄二に関する記憶だけを消した事。このブレスレットには圭子を守る為に神の力を注いである事。このブレスレットを付けてたおかげで今日、あの大聖堂でテロが起きるのを知ることができ、圭子を助けることができた事。ここまではその神の力で転移してきた事。そしてこの空間もその神の力で作られていて、周りからは認識できない事。を順番になるべくわかりやすく話した。
それを黙って聞いていた圭子は気が付いたことを確認する為、質問する。
「じゃあ、私がバイクに轢かれそうになった時とか悪い人に絡まれそうになった時、助かったのも?全部雄ちゃんが?」
「うん、まあそういうことやな。実際はこいつの働きやけど」
そう言いながら圭子の影に潜んでいた使い魔『茶々』を呼び出す。
突然現れた犬を見て、しばし固まっていたが、やがて笑顔で茶々を抱きしめながら、
「あなたが?あなたがいつも守ってくれてたんだぁ?ありがとうね♪」お礼を言う圭子。
「わんっ!」と答えて尻尾をブンブン振る茶々。しばらくはナデナデされたりしていたが、圭子が手を離すと再び圭子の影に隠れる。少し残念そうにしながらも、今度は真剣な顔で雄二を見つめながら、
「まるでマンガとか物語の話よねぇ。。まだ信じられないけど、さっきの魔法?みたいなのをあんなに見せられちゃね…信じるしかないよねぇ。。。あっ!そう言えば昨年の冬休み前にこのブレスレットを使って会話ができたよね?…あれも?」と尋ねる圭子に「コクッ」と頷く雄二。
「あははは…凄いねぇ!雄ちゃん。…で?詰まる所、雄ちゃんって神様なのぉ?」
「いや、俺はまだ人間のつもりやし、当面は普通の人間として暮らしていくつもりや…ただ自分の周りにある大切なもの、かけがえのないものを守る為やったら遠慮なくこの力、使うけどな」
雄二はそう言って真っすぐ圭子を見つめる。
「圭子。お前もその一人や。」と茶化すことなく尚も真顔で付け加える。
真っ赤になり、照れながら「ありがとう♡♡♡♡」と一言告げる圭子。
「また…雄ちゃんに逢えてよかったよー♡♡♡♡」しみじみ呟く圭子
「・・・ごめんな。。。仕方がなかったとはいえ、勝手に記憶を消して」
頭を深く下げながら圭子に謝る雄二。
「ううん…それだって私を助ける為にしてくれたわけだし…それに」
「それに今はまたこうして記憶を戻してくれて…傍にいてくれる。」
そう言いながら、再び雄二に抱き着いてくる圭子。
そんな圭子に言いにくいけど、どうしても言わなければいけない事がある雄二は、
「あのさ・・・圭子、怒らんと聞いて欲しいんやけどな?…」と伝える。すると、
「うん。わかってる…さっき、頭になんか流れ込んで来たよ?…いるんでしょ?私の他にも」
図星をつかれ、「うっ・・・・・」言葉に詰まる雄二。
それを見て、柔らかく微笑みながら、雄二の顔を両手で包み込んで、
「確かに今までの私なら…多分…怒ったり、凄くへこんだり、ヤキモチが酷かったり、嫉妬で大変だったかもしれない・・・でも…でもね…今ならわかる気がするの。」
一旦言葉を止めて、唇を重ねてくる圭子。唇を離すと再び笑いながら、
「雄ちゃんは大きすぎるもの…たぶん私ひとりじゃとても支えきれないし、色々と無理そうな気がするの…それにね…雄ちゃんを必要とする人はまだまだいると思うの…そんな人達を蔑ろになんてできないもんね♪…雄ちゃんは♡♡♡♡」
「私は雄ちゃんにこうやって何回も助けられて…今まで以上に雄ちゃんの事が大好きになって…」
「こんなに…こんなに優しくて…こんなに強くて…こんなにカッコイイ雄ちゃんを私だけが好きになるわけないじゃない?私だけが独り占めできるわけないじゃない?…そうでしょ?…ねっ♪雄ちゃん♡♡♡♡」
「それに雄ちゃんなら何人お嫁さんが増えても皆、平等に愛してくれるでしょ?皆、平等に幸せにしてくれるでしょ?」
ここまで一気に捲し立てると圭子は置いてあったジュースを一口飲む。
メルや詩織に言われた事と全く同じ事を圭子にも言われ、少し苦笑いの雄二。
「そうやなっ!それだけはちゃんと約束する。必ず!!」雄二はそう言いながら圭子の左手を取って、リングを生成する。メル。そして詩織に贈ったものと同じ『エンゲージリング』。
それをジッと見つめながら、また泪を溢れさせる。
「えっと…圭子で3人目なんやけど…なんか、ごめん」と申し訳なさそうに言う雄二。
首を横に振り「ううん…そんなこと、どうでもいいの…ありがとぉ♡♡♡♡♡雄ちゃん」
と微笑みかける圭子。
「色々、ごめんな…圭子。・・・けど、もう離さんから」と言いつつ抱きしめる雄二。先程から謝ってばかりの雄二である。
「うん!うん!もう…離さないでね♡♡♡♡♡絶対にっ♪」泣きながら縋りつく圭子。
そしてどちらからともなく唇を重ね…何度も口づけを交わし・・・。
やがて、圭子は自分から着ているものを全て脱ぎ捨てると、
「雄ちゃん・・・私もあなたのモノにしてください。…私のすべてをあなたに捧げます。…だからいっぱい愛して♡♡♡♡♡」
「・・・圭子っ!」と言いながら、即座にベッドを生成して圭子と一緒に倒れ込む。
ここにきて、ついに、圭子と雄二が結ばれたのだった。回り道はしたけど、とうとう圭子の初恋が実を結んだのである。
圭子も雄二と結ばれた事により、あらゆるものが注ぎ込まれていき、詩織同様、人間の枠から外れるのだが、そんなことになろうとは夢にも思ってない二人であった。
この後、しばらくは色んな事を話して、今まで逢えなかった空白の時間を取り戻すのだった。
詩織の事、異世界の姫 メルの事、全て包み隠さず話したのだ。
それが誠意だと雄二は考えたのだ。
圭子も黙って聞いてくれた。そして「そのうち会わせてね♡♡」と笑っていた。
そしてエンゲージリングの説明とブレスレットの強化と説明を済ませ、使い魔はもう必要無いから、連れて帰ると言ったのだが、このままにして欲しいと強請られたので、そのままにした。『茶々』も喜んでいるみたいだった。ついでに圭子にも普通に呼び出せるようにしておいた。
こうして圭子の仕様を色々変えていって、そろそろ異空間部屋から出る事にした。
無論、時間操作していたので、時刻は午後5時40分になっている。
さっきまでの襲撃事件現場に居合わせたお客さん達とテログループ達の記憶を改変して【結界】も解除した。テログループ共は意識を奪ったまま、放置しておく。どっちみちフルボッコされ、更には脳内出血状態なのでほっといても、もうまともな生活はできない。運良く生きながらえても重い後遺症が残るだけだ。敵対する奴らにはどこまでも鬼畜な雄二である。
こんな風に事後処理を終えたのち、圭子の住居まで送る事にした。
やってきたのは住宅地の一角。既に暗くなってきている為、母親らしき人が玄関前の道まで出てきていた。
「圭子!遅いから心配したじゃ…」やっと帰ってきたかと思ったら、男の子と一緒の娘を見て唖然とする圭子母。
「あっ!…えっとぉ…」どのように雄二の説明するか悩んでいる圭子を尻目に
「初めまして。自分は圭子さんと日本で同じ中学だった稲村雄二という者です。」
「圭子さんに逢う為、日本から来てしまいました。突然現れて申し訳ありません。」
と母親に自己紹介とここにいる理由を告げる雄二だった。
そんな雄二と圭子を交互に見て、圭子の雰囲気で何かに気が付き、
「ああ…あなたが圭子の…へぇ~…まあまあ…わざわざ?…あらあら、ふふふ」
「いつもうちの圭子がお世話になってたみたいで…ふふふ、ありがとうございます。」
と言ってくる圭子母。
「じゃあ僕はこの辺で失礼しますね。圭子さんを送ってきただけですので」と雄二。
「ええっ?そんなことおっしゃらずにお茶くらい飲んでいってくださいな。」
そう誘われるが、人を待たせているのでとかなんとか理由を捏造して、どうにかその場を離れる事に成功し、人の気配が無いところから自室に転移すると寝巻に着替えて、ベッドに潜り込むのであった。
(なんて日だっ!)と思いつつ、眠りにつくのだった。
次の日の朝、昨夜のイベントてんこ盛り祭のせいで、起きるのが遅かった。
「ふぁあーーっ」大きなあくびをしながらダイニングに向かおうとする。
母親から「休みやからって夜更かしばっかしとったら、だしかんがねっ!」
てな具合にお小言をくらう雄二。「すんません」と頭を下げる。
遅い朝食を摂っていると、リビングにいた清美がやって来て、
「おはよー♪雄ちゃん」元気に挨拶してくる清美。
「おはよーさん」と返すと、耳元まで近づいてきて、こっそりと
「夕べはおおきになぁ~♪Chu~♪」どさくさに紛れて頬にキスされた。
「あーーーーーーーーーーっ!!!」秀美が大きな声で叫ぶ
どうやらタイミング悪く目撃されてしまったようだ。
(はぁ…なんだかなぁ…)朝から元気な妹様である。
こうしてその日は特に何もなく過ぎてゆくのだった。
夜中、前日のような清美の襲撃(?)もなく、静まり返った部屋の中。
昨日起こった事の説明を詩織にする為、『Cルーム』に招いた。
昨日は色々あった為、珍しく詩織には逢ってなかったし、連絡も取ってなかった。
「やほっ♪ゆうくんっ。1日逢えなかっただけでもさみしかったよぉ」
「ごめんな;;しーちゃん。夕べは色々ありすぎて連絡取れんかった」
甘えてくる詩織の頭をナデナデしながら謝る雄二。
そして夕べ起こった出来事のあらましを全て隠さず、詩織に話した。
従姉の清美に告られ、不可抗力とはいえ、キスされてしまった事。
圭子が事件に巻き込まれているという反応があった為、西ドイツまで転移した事。
圭子が危機的状況だった為、テログループを相手に喧嘩をして圭子を助けた事。
圭子に自分がどんな存在であるか。何故記憶が無くなったか。等について話した事。
圭子の記憶が戻り、関係が修復され、ごく自然な形で圭子を抱いた事。
そして詩織の存在。メルの存在について。更には詩織、メルがどれ程かけがえのない存在であるかを話した事。詩織、メルと同じ指輪を贈った事。
全てを聞き終えて詩織は雄二を愛おしげに強く抱きしめながら、
「ゆうくんっ!よく頑張ったね♪エライエライ!良かったっ!本当に良かったねっ♡ゆうくんっ♡♡♡」
この上ない眩しい笑顔を向けて至上の愛を注ぐ詩織なのであった。
「機会があれば圭子さんとも会いたいなぁ」一頻りイチャつき満足した詩織が何気なくそう呟く。
「そやね、近いうちに会えるようにするわ」と答える雄二。
そのあとは二人でのほほんと過ごして時を刻むのだった。
そして、あくる日の午前中には清美は自分の家へ戻っていった。
当面レギュラーは3人ですかねw
サブは何人か出るかもです。




