本編 第二十二話 た、ただの従姉だよな?そして再びの・・・
お世話になります。いつもありがとうございます。
ヒロインになれなくたって・・・これくらいはいいよね?w
雄二が帰りついたのは午後5時を少し回ったあたりだった。
秀美達は既に帰宅しており、リビングでTVを見ていた。
「お兄ちゃんおかえりぃ~!」「おかえりぃ~♪雄ちゃん」
リビングに入るとすかさず、秀美が寄って来て「クンクン…クンカクンカ」
「た、ただいま…なにやっとん?」秀美に問いかけると、
「ん?…匂いチェックだよ?クンクン…今日は大丈夫みたい」と、答える秀美。
「何が大丈夫なんだよっ!」と、ツッコむ雄二。それでも平然と
「女の匂いに決まってんじゃんっ!!」さも当たり前のように返す秀美。
兄妹の会話を今まで黙って聞いていた清美がここぞとばかりに切れ込んでくる。
「へぇ~!秀美ちゃんの話してた事ってほんまなんやね?」
「もちろんっ!全て真実だよっ!清美お姉ちゃん。まったくこのお兄ちゃんは!」
(・・・・・ん?…どゆこと?)嫌な予感しかしない雄二。
「毎日のように可愛い便箋のお手紙はいくつも貰ってくるわ、バレンタインにはチョコが目一杯詰まった大きな袋2つ抱えて帰ってくるわ、こんな可愛い妹をほっといて他の女の子とイチャイチャするわ、かと思えば他の子とデートするわ、この前なんかねぇ…大人の女性の香水の「もう勘弁してくださいっ!!秀美さまっ!!」
綺麗な土下座をかます雄二。妹によって饒舌に語られる雄二の女性関連の赤裸々な武勇伝に耐えられる程タフではない雄二は成す術もなく、速攻で全面降伏する。
秀美の怒涛の波状攻撃によって蜂の巣状態の雄二のガラスのハート。この時、雄二のHPは0に限りなく近かっただろう。
清美はお腹を抱え大爆笑である。そしてこの兄妹の力関係を把握した。
こうして雄二にとって拷問のような時間が永遠に続くかのように思われた瞬間。
「でもね…お兄ちゃんがモテるのは仕方ないんだよね…誰にでも優しいし…」
(おろっ?・・・)
「それに…何でもできちゃうし…こんなにかっこいいし…だからね」
今度は明らかにデレ始める秀美さん。
「モテモテなんだよねぇ…女の子がほっとかないもんね…私だって…」
(ちょ…ちょい待とうか!?秀美さんや)別の意味で焦る雄二。
「そうやねぇ♪見ててわかるわぁ~、秀美ちゃんの気持ち」と同意する清美。
何とも言えない雰囲気が漂い始めた時、天の助けとも言うべき声が響く。
「ゆうっ!ちょっと来てくれ!」上から雄二を呼ぶ父親の声。
この時程、父親に感謝の気持ちが沸いた事がないとばかりに逃亡する雄二なのだ。
その後、夕食の際、清美が家族全員に向かい、
「うち、明後日帰るからよろしく♪」と言ってきた。
「ええぇ~!もう帰っちゃうの~?清美お姉ちゃん」秀美は残念そうだ。
夕食も終わり、リビングでみんなくつろいでいる。TVでは桜の開花の話題。
そろそろ自室に戻ろうかとリビングを出て二階に上がろうとする雄二にあとを追ってきた清美が耳元で「夜、少し話がしたいさかい部屋に行くね?かまへん?」と言ってきた。
(…おいおい…どーする?これ…)【アナライズ】でわかってしまった雄二。
時計はやがて日付が変わる頃になっていた。
「雄ちゃん?起きとるん?」「うん、起きとるよ」「中、入っていい?」「うん」
入口が開けられ、清美が部屋に入ってきた。パジャマ姿で。
「へぇ~、ここが雄ちゃんの部屋かぁ」部屋を見まわし清美がそう言う。
「なんもないやろ?男部屋なんてこんなもんやて」頬ポリポリしながら雄二。
「そかなぁ?うちの兄やんの部屋なんてもっと汚いでぇ?」
こんな風にたわいもない会話がしばらく続き、
「そういえば秀美はもう寝とるの?」雄二が尋ねると、
「もうすやすや♪気持ち良さそうに寝てはるわw」と答える清美。
「あいつはいっぺん寝てしまえばなかなか起きんでなw」
「でな…雄ちゃん…聞いて欲しい事があるねん・・・」
(キターーーーーーっ!)
「あのな…うちな…雄ちゃんの事、すっきゃねん…従姉弟とか関係のーて…」
「清美ちゃん・・・」
清美と雄二は従姉弟同士ではあるが、血は繋がっていない。今の母親は秀美の実母ではあるが、雄二にとっては継母であり、実の母親は別に居る。清美は今の母親の兄弟の娘なのである。
「なんも言わんでええよ?…雄ちゃんには好きな人がいてはる事も秀美ちゃんから聞いて知っとるし…でもな…それでも、うちの気持ち伝えたかってん・・・」そう言いながら目を伏せる清美。
「清美ちゃん…ありがとうな…それと、ごめんな・・・気持ちに答えられんで」
申し訳なさそうに答える雄二の手を取って微笑みながら清美は、真っすぐ見つめ、
「もぉ!言わんでええってゆうとるやんかぁ!…あほぉ~!」そう言いながら突然、雄二の唇を塞いだのだ。自分の唇で。突然の出来事で対応が遅れ、固まる雄二。
「これくらい、ええやろ?うちの初めてのキス…もろうたってぇな?」唇を離し、また伏し目になり、その目から零れる泪をそのままに訴える清美。
「・・・・・・・・・・・・・・・」何も言えず、ただ立ち尽くすだけの雄二。
「雄ちゃん・・・もう一個だけ、うちの我が儘、聞いてくれへん?」顔を上げながら清美はそんなことを言ってくる。雄二は黙ったまま、少しだけ首を傾げ「なに?」という意図を表す。
「一度…一度でええから…うちをギュッと抱きしめて?」上目遣いに清美が言う。
「・・・・」一旦間を開け、しゃーないとばかりにそっと抱き寄せる雄二。
「もっと…もっときつくっ!」と要求され、言われた通り、抱きしめると、
耳元で「ほんまは…このまま、うちを抱いてほしいねんけど…あかんやろ?…そやさかい、このまま…ちぃとでええから…このまま」と言いつつ縋りつくようにしてくる清美なのであった。
気が済んだのか、やがて体を離して、ニンマリ悪戯っぽく笑いながら、
「・・・今日はこんなもんにしといたるわ♪」と言いながら入口へ向かう清美。
そして部屋から出る間際、「おおきに♪雄ちゃん、おやすみ」と告げた。
ひとりになった部屋の中で雄二は、深く溜息をついた。
同時に自分が施した【常識改変】がこれ程、強いものなのか!?と今更ながら驚くのであった。確かにタイムループ前の清美も割と雄二には好意的で優しく接してくれてはいた。
それでも、これほどまでにあからさまな想いをぶつけて来るとは思いもよらなかった雄二なのであった。
「まあ、嫌われまくるよりはずっとマシなんやろうけどなぁ…」とゴチる。
「だからっちゅーて見境なしに誰でも受け入れる訳にはなぁ…」
あくまでも清美は従姉であり、それ以上でも、それ以下でもないのである。
時計は1時を少し回ったところ。
さあそろそろ寝ようかと、部屋の明かりを消してベッドに潜り込もうとしたところ、予め起こるであろう予測していた事件がボチボチと動き出しつつある反応があった。・・・日本を遠く離れた西ドイツの地から。
>>この日、圭子は西ドイツの観光スポットの一つである『ボンミンスター』を訪れていた。
圭子が家族と共に西ドイツにやって来て、早3か月。やっと生活環境にも慣れ、こうして出歩けるようになってきていた。
日本人学校も今日は休みである。時刻はこちらの時間で午後5時過ぎ。
手首にはアメシストが付けられたブレスレットを装着している。このブレスレットはいつの間にか持ってたものらしいのだが、圭子自身はどこで手に入れたか覚えていない。母親に聞いても「圭子はいつも大事そうに持ってたじゃない?とても大切な人からもらったって言ってね。いくら名前を聞いても「恥ずかしい」って言って教えてくれなかったし…」と言われるのみだった。
こちらに引っ越して、少し経ってから偶然、見つけたのだが、自分の物だという事はなんとなくわかっていた。
紫色の綺麗な石。何故かとても大切な物だと圭子自身も思えてきて、いつも身に着けるようになっていった。これを身に着けていると、不思議な事にとても落ち着くのである。とても守られているような温かい感覚を感じるのだった。
不思議な事と言えば、このブレスレットを見つける前からもいくつかある。
こちらに来たばかりの頃、横断歩道を歩いていると、急に後ろに引っ張られたのだが、その直後、圭子の僅か2m前にバイクが突っ込んできて、あわや轢かれそうになったり、いかにもな人達に絡まれそうになった時も、突然その人達が慌てて逃げて行ったり…不思議である。
その時、何故か犬の吠えるような声がするのである。勿論、近くには犬などいない。
そんな不思議な事がたびたび起こるので母親が「あなたの言っていたとても大切な人がきっと守ってくれているのよ」と言っていた。更に母親は少し暗い顔をしてこうも告げるのだった。
「こっちに来るのが決まった時、あなたは物凄く落ち込んで今にも死にそうな顔で…ご飯も食べなくなるし、夜もずっと泣いてばかりで…本当にお父さんもお母さんも困り果てて。。。でもそれから2日過ぎたらいきなり外に出て行ってしまって…どこに行ったのかわからず、よほど警察に届けようかと思っていたら突然、戻って来て…どこ行ってたの?って聞いても「知らないうちに街中にいた」って言うし・・・でもその時はいつもの圭子に戻っていて、何があったのか?って聞いても「わかんない」って言うだけだし。。。」
圭子には全くもってチンプンカンプンであった。でもなぜか心の奥底に引っかかっているモノがあった。
思い出そうとしても何か靄がかかっていて…
確かに日本にいた頃、誰かいたような・・・かけがえのない誰かが・・・。
さておき、圭子は趣のある大聖堂の中を歩きながら見上げていた。
その時、突如大きな銃声と叫び声が響いた。
ビクッとして圭子が立ちつくしていると、目出し帽を付けている男が十数人入ってきたかと思うと聞き慣れない言葉で喚いていた。
「ドイツ語じゃないし・・・なんかアラブ系ぽいなぁ」などと独り言を言っている圭子に気付いたその中の一人の男が圭子に銃口を向けてまたもや喚きだす。
言葉はわからないが、自分が今、かなり危険な状況に晒されている事だけは理解できた。
心の中で(ああ、、、私…ここで死ぬんだわ。。。せめて恋くら…恋?…恋…好きな人…あ、あれぇ・・・ちょ、ちょっと待って・・・えっ?…ええぇぇっ!??)と、パニック状態に陥る。
引き金が引かれ、銃が火を噴いた。ソ連製トカレフである。
思わず目をつむった圭子。しかし弾丸は圭子に届くことはなかった。
見えない壁に阻まれているかのように圭子の手前50㎝ほどの所で止まって浮いている。
その後、続けざまに発砲される。1人だけではなく何人もが四方から圭子に向けて発砲する。
尽く何かに阻まれ空中に停止する銃弾。呆然とする一同。
やがて再起動した犯行グループの男の数人が圭子に近づこうと歩き出した。
圭子は自分の身に起こっている現象に理解が着いていけず、足もすくんでしまい、動けずにいる。
あと3mの所まで近づいた時、突然空間が歪み、人影が現れる。
唐突に目の前に現れた人間にまたもやその場にいる全ての人がフリーズする。
そんな中、当の本人である雄二は「わりいっ!着替えとったから遅くなった」
と呑気に振り向いて、圭子に話しかける。
圭子は再び、パニック状態に陥り、「えっ?えっ?…ええぇぇ~~!!」と叫ぶ。
「元気そうでなによりやわ!まずはこいつらを片付けんとなっ!」
尚も呑気にしゃべりながら、唖然としている犯行グループを無力化するべく動く。
まずは【結界】を張って、逃げられないようにする。
犯人グループと圭子以外のその場にいる人は全て【状態改変】で眠らせる。
我に返った犯人グループが一斉に雄二に的を絞って攻撃する。
自動小銃や機関銃もあるみたいで、耳をつんざく爆音が響き渡る。
しかし一発も雄二に届くことはなく、全て弾かれる。犯人グループはもはや半狂乱になりながらも、剣やナイフなどでさらに襲い掛かってくる。
それらをすべて躱し、ブルー〇・リーのノリで少〇寺拳法モドキをぶちかましていく。
『第一の権能』により、身体能力を底上げし、等しく拳法の達人レベルにする。
(一度やってみたかったんだよなぁ♪)と、楽しそうに相手を叩きのめす。
掌底、肘打ち、裏拳、トラースキックなどなど…その勇姿はまさに『燃え○ドラゴン』であった。
縦横無尽に動き回り、テロリスト達をあっという間に(死なない程度に)無力化して行く。
最後の一人が笑いながらアラビア語で「はっはっはっー!!もう遅い。時限爆弾がもう作動しているっ!アッラーの神は偉大なり」と言ってたのを「ばぁか!アッラーなんて神はいねぇよ」と言いながらその男の顔面を蹴り飛ばす雄二である。
(お決まりやねぇ)と思いつつ時限爆弾のありかを【サーチ】して見つけ出し、『第四の権能』である【デリート&デストロイ】で跡形もなく消滅させる。
(こいつら、よくも圭子を殺そうとしやがったなっ!)ふつふつと煮えたぎる怒りを抑えながら、犯人グループ全員に【状態改変】を用い、脳内出血させておいた。もっとも既に彼らは虫の息なのだが。
(さて、ゴミ掃除は終わった。残りは…未だ呆然としている圭子やな。)
フラグ回収にかかりますw




