本編 第一話 時を超えて
タイトル変更しました。m(__)m
いよいよ本編突入です。
主人公の現状が明らかになっていきます。
(んん?・・・知らない天井やなぁ・・・)
いったいどれ程の間、意識がなかったのか定かではないが、漸く目を覚ました雄二。
そして自分の今の状況を把握しようと思考を巡らせる。
今、自分は病室のようなところでベッドに寝かされている。眼だけで周囲を確認するといくつかのコードやなんやらを体のあっちこっちに繋がれ、傍らには訳の判らない医療用機器が設置されていた。
口は酸素マスクのようなもので覆われている。
どうやら自分以外は室内にはいないようだ。
(ふむ、、、やっぱ病院だよな。・・・・えっと、確か・・俺は自宅で寝てて・・・)
ツッコミ処満載ではあるが、とりあえず雄二は意識を失う直前までの記憶を辿る。
神と名乗る者に唐突に話しかけられ、魂がどうのこうのとか、人生をやり直してみないか?みたいな突拍子もない事を言われて・・・・それに対して単純に乗ってやる旨の返事を返したとたん、意識を刈られた。
以降の事は全く記憶に無く、先ほど目覚めた。目覚めたは良いがそこは見た事がない病室。
(・・・いったいどうなっとるんや?・・・)
雄二は自分が置かれている状況が理解できず、唖然とするしかなかった。
いくら考えても現状を把握できるわけがないので、いったん深呼吸をして気持ちを落ち着かせることにした。
(ふぅ~~~)
幾分冷静になったところで何か妙な感覚にとらわれる。
(・・・えっと・・・なんか言っとったよなぁ・・・あの神様・・・・なんやったっけ?・・・)
何かとても重要な事を言われたような・・そんな微妙な感覚に支配される。
そこまで出てるのに思い出せない。そんなもどかしさに辟易しながら、頭を少し動かし、ふと目についた壁に掛けられてあるカレンダーを眺める。
(っ!?・・あれぇ??・・11月のカレンダー??・・た・・確か・・・今は3月のはず・・)
再び思考が混乱する中、更に驚くべき事実が飛び込んで来る。
(なななな・・・・なんで?・・・・なんで1974~~??・・・ええええ~~~っ!!??)
そう。そこに掛けられてあったのは "西暦1974年11月" のカレンダーだったのだ。
もはや混乱と衝撃がMAX状態である。
(た・・確か、、今年は令和3年・・・西暦2021年のはず・・・だよなぁ?)
(まさか46、7年も前のカレンダーをわざわざ設置するはずないわな?・・・・)
(え・・・っと・・・えええ~~????)
一体全体何がどうなっているのか?完全にパニック状態に陥る中、ここにきて雄二はとあるキーワードに思い至る。
(そういえば、あの神様 タイムリープのようなもんがどうのこうのって言ってた・・よな?。。)
ようやく、ここで先ほどまで心に引っかかっていたものが何であったのか?、が理解できて大きく溜息を漏らす。
(ホンマかいなぁ~~~~~・・・・・・)
(・・・・・・・・)
(ほえぇぇぇ~~!!!!)
あの時、確かにそんな事言われたような気がしたが、まさか本当にそうなるとは思ってもいなかった雄二なのであった。
(ま・・まずは、色々確認せんと、だよなぁ?)
しかし今の自分は酸素マスクやらコードやらが設置されており、身動きが取れない状態である為、まずは頭の中で確認することにした。
(・・・俺の名前は稲村雄二。生まれは〇〇県△△市で昭和××年□□月◇◇日生まれで・・・)
とりあえず自分の生い立ちを思い起こして確認することにした。
(うん。歩んできた人生の記憶はしっかり残っているな。)
雄二は昔から異常に記憶力が良かった。幼稚園で怪獣ごっこをして遊んだ記憶。生みの親に恐竜の塩ビ人形を買ってもらった記憶。小学校でイジメられた相手の顔や名前。。。等々。
様々な事を未だ鮮明に覚えてるのである。小学校低学年以前の記憶で靄がかかって一部思い出せない記憶が若干あるのだが。それでも他の人と比較するとかなりの記憶を有している。
ここがまず他の人間と異なるところかもしれない。所謂、サヴァン症候群なのかもしれない。
(もしも仮に本当に14歳の頃に戻っていたとしたらこの記憶が使えるかもしれんな。)
そんなことがふと、頭に浮かんだ。
さらには、
(っ!!!!・・んん?・・ひょっとして・・・)
右の手の平。生まれてすぐ患った脳性麻痺の後遺症で体に万遍なく障がいが残っていたはずである。特に右の手の平は上手く開閉さえできなかったはずであった。
コード類があるものの、両手を動かすぐらいには問題なかったので、まず右手をグーパーしたり、各指を折り曲げたり、伸ばしたり、色々動かしてみた。
するとあれだけ動きが悪かった右手が驚くほどスムーズに素早く動かす事ができた。
左手も問題なく動く。しかも感覚的に身体全体各部が軽く、伸び伸びと動かせる様な感じがした。
両手で顔をぺたぺた触って、余分な力が入っていない事、ひきつった感じがない事を確かめる。
「おお~っ!も・もしかして・・・障がいが改善されとるんかぁ~??・・・っ!!!」
思わず声をあげてしまうのだが、その自分の声にまた驚く。
言語障害でくぐもった呂律のおかしい聞き取りにくかった自分の声が鮮明なものに変わっていたのである。
視線も真っすぐになっており、恐らく斜視も治ってるのだろう。
雄二は感激のあまり、暫く嗚咽していた。
この身体のせいでどれ程、辛く、苦しい目に遭ったことかっ!
しばし感動に浸っていた雄二であったが、まだ確認することがある。
意識が戻った時から気付いていたモノ。敢えて今まで触れなかったが、左手の甲にある斑点のような模様。
「前はこんなん無かったはずだよなぁ?・・・」
見方によっては何かの紋章の様であり、円の内側に星のような痣らしきものがある。
「なんや?・・・これ?」
と思いながらそれを何の気なしに翳して見つめてみた。
すると一瞬、その痣みたいなものが薄い光沢を帯びると同時に突然、視界に半透明な四角い液晶画面のような物が表示されるのであった。
「な・な・な・・・・何じゃこりゃぁぁぁ~~~~!!!」と思わず声を張り上げてしまった。
幸い誰にも気づかれはしなかったようだが。
まさかのファンタジー展開である。
神と話をし、いきなり意識が飛ばされ、気が付いたら過去にタイムリープ。おまけに身体が改善されている。
これだけでももう十分お腹一杯のファンタジーなのに、容赦ない追い打ちである。
「ま・まあ・・ここまで来れば何でもありかっ!」と呟き、とりあえずは柔軟に対処することにした。
そして画面表示されている文字に注目する。
【MENU】と記されており、その下にリストが並べられていた。
上から順番に
<ステータス確認>
<権 能 説 明>
<ミッション説明>
<設 定 変 更>
<問 合 せ>
<閉 じ る>
と、記述されており、一番上の<ステータス確認>だけ色が濃く点滅している。他の項目は若干暗くなっていた。
どうやら目の動きで項目を選択でき、選んだ項目に少し眼力を込めるとそれで【決定】されるようだった。
<閉 じ る>を選んで決定させると、画面表示は消えた。
もう一度左手の甲を翳し、紋様を見つめると再び微かに光り、半透明の液晶画面のようなものが現れた。
「タブレットかよっ!・・・ちゅーかゲームかよっ!」と、誰に言うまでもなくツッコミを入れた。
さておき、上から順に確認することにした。
<ステータス確認>を選択すると新たにウィンドウ画面が表示された。
そこには次のように書かれていた。
【個体名】稲村雄二
【年 齢】14歳
【種 族】[仮]絶対神帝(表面上:人間)
【職 業】学生(中学2年生)
【現在地】日本
【現 状】環境及び設定改変保留中
【体 格】身長:170㎝ 体重:55㎏
【体 力】測定不能
【筋 力】測定不能
【腕 力】測定不能
【瞬発力】測定不明
【神力量】測定不能
【権 能】使用可能(別途説明)
【知 力】測定不能
【攻撃力】測定不能
【防御力】測定不能
【幸運度】測定不能
【称 号】唯一絶対の存在、全ての管理者を服従せし者
"宇宙の意思"の後継者、アカシック・レコード管理者
全宇宙の管理者兼支配者、超越者
【備 考】全神々をはじめ、全ての上位管理者の力を吸収し、内包時において
その個体独自の魂の器により極限増幅された状態で現在に至る。
(※ただし、現在は自動制御機能により、常時地球人一般レベル)
(※任意マニュアルでレベル微調整及びリミッター解除可能)
【留意点】尚、本ステータスはあくまでも期間限定のかりそめである。
本ステータスを永久に固定化する条件としてミッションを完遂する
必要があり。(条件クリアタイムリミット:地球時間であと24時間)
(・・・・・・・・・・・・・)
(・・・・・・・・・・・・・)
(・・・・・・・・・・・・・)
(もう・・何も言えねぇ・・・)
正に"茫然自失"の極致である。
徐にステータス確認ウィンドウを閉じながら、最大級の溜息をつく。
既に思考回路がオーバーヒートして虚空の境地になりかけたところで、突然入口ドアがノックされた。
雄二は慌てて残りの表示ウィンドウを消して咄嗟に「はいっ!」と返事をする。
その瞬間、けたたましい騒音と共にドアが開けられ、看護婦らしい女性がこれまた物凄い形相で飛び込んできた。
そして雄二が目覚めているのを確認するやいなや、大声で、
「い・稲村さんっ!め・・め・・目が覚めたんですかぁっ!?」と叫んだ。
折角けっこう整っている容姿なのに、少々残念な形相になってしまった看護婦さんである。
「はぁ。。。ついさっき目が覚め・・・」
雄二が答えを言い終える前には既にその看護婦さんは物凄いスピードで病室から駆け出していた。
残された雄二は何度目かになる深いため息をつきながら、開きっぱなしの入り口を見つめて、
「おいおい・・・ここ病院やろ?もーちぃと静かにせーよっ!」などとゴチるのであった。
数分間の静寂の後、バタバタと幾人かの足音が響き、雄二のいる病室に勢いよくなだれ込んで来た。
実に慌ただしいものである。本当にここが病院なのか?と、疑いたくなるほどに。
銀縁眼鏡をかけた医師と思しき、40代の男性。そして若干若い男性。何れも白衣を纏っている。そして、先程の残念な看護婦を含んで3人の看護婦が入ってきたのだった。
一様に驚いた表情を浮かべながら。
そして「気分はどうか?」とか、「どこか痛いところはないか?」とか散々問診を受けたり、設置してある機器を確認したり、目に光を当てて瞳孔を診たり、聴診器を当てたり、口の中を診たり色々と調べられた。
医者の話によると、およそ4か月前の7月末、ちょうど夏休みに入って間もないある日、自宅で突然意識不明になり、地元の病院で色々調べていたが、原因不明のまま対処出来ず、3か月前から最寄りの大都会にあるこの病院に転院されてきたが、一向に容態は変わらなかったそうである。
「ずっと意識のないまま寝たきりの植物人間状態だった」との事。
ちなみに本日は1974年11月25日、月曜日だと教えられ、もはや疑うすべもなく、過去にタイムスリップ、否、タイムリープ確定のようである。
診察の間、親に連絡がいったのであろう1時間半後、両親と妹が駆けつけてくれた。
この時になってやっとマスクやらコードやら、取り払われて、体を起こす事ができた。
時間を聞いたら既に夜の8時を回っていたらしいが面会はOKだったようだ。
皆、泣きながら抱き着いて意識が戻った事を喜んでくれていた。
タイムリープする前からしても、実に何十年ぶりかの対面である。
父親からも先程、医者から聞いた内容と同じ話を聞かされ、どれだけ心配したかを伝えられたので、とりあえずは平謝りしておく。
母親(継母)はただただ、泣きながら「よかった!よかった!」と抱きしめるだけである。
当たり前のことだが、両親も妹もすごく若い。妹に限って言えば、雄二と4つ離れているわけだから10歳のガキンチョである。
この頃の妹はまだ素直で可愛げがあったようで、屈託のない笑顔を見せてくれていた。
こうして家族との感動の再会を果たしたわけであるが、時間もけっこう遅くなってきたので明日改めて面会に来ることになり、今日のところは帰宅していった。
この時の雄二は全く気付いていなかったのだが、雄二がこの時代にタイムリープして来た時点である程度の【常識改変】が成されていた。
その為、家族も医師も雄二の今の姿に何も違和感を感じていないのだ。
つまり初めから障がいもなく、ただ幼少時は少し体が弱かったという認識になっているのである。
医師たちも最終確認を済ませて、病室から退出して消灯になった。
再び、静寂が辺りを支配し始める中、改めて雄二は半透明な不思議デバイスを起動させ、表示画面とにらめっこを再開するのであった。
次回は最初なのにいきなり最大のイベント??
なんのこっちゃ!