本編 第十八話 導かれし運命の再会と残り少ない冬休み
お世話になります。いつもありがとうございます。
前半はやっと本当の意味での再会ですね。
(しーちゃん!しーちゃん!)
[ん?…えっ?…えぇぇぇ!!、ゆ、雄くん?]
(プッ…やっぱびっくりしてらっ!w)
[だ、だって…ふぇ…ぅぅぅ…ぅぁぁぁん・・・・・・・・・・]
(な、なにも泣かんでもっ!)
[えぐっ…えぐっ…えぐっ]
詩織が泣き止むのを待って雄二は空間を開く。空間に詩織が入ってきた瞬間、詩織は雄二に飛びついた。
がしっ!とホールドすると詩織は「ゆうくんっ!ゆうくんっ!」と叫んだ。
「しーちゃんってこんな泣き虫やったかなぁ?」雄二が言うと、
「ゆうくんが意地悪するからだよぉっ!」そう言って泣きべそ顔で少し拗ねる。
「ごめんな…」雄二は短く謝りながら詩織の頭をナデナデする。
詩織は黙って雄二の胸に顔を埋め、スリスリと何度も擦り付ける。
そんな詩織を強めに抱きしめながら雄二はもう一度、謝罪を口にする。
「ほんとにごめんな…なかなか思い出せんくて…」
「ううん…ちゃんと思い出してくれたから…」詩織はそういうと抱きしめ返す。
「しーちゃんはすぐわかったん?」そんな雄二の問いかけに、
顔を上げ、雄二の頬をつつきながら、
「最初、目が覚めたらいきなり、ゆうくんがいて。でもゆうくんは気が付いてないみたいだったしね。他人の空似かなとも思ったんだけどね。でもちゃんとゆうくんの名前だったし、たぶんゆうくんなんだろうと確信はあったんだけど、ゆうくんはあくまでも他人みたいに接してくるからさ…寂しかったし、悲しかった。…でも同姓同名なのかなとも思ったんだけど、話してゆく度に、逢う度に「ああ、やっぱりゆうくんなんだ」ってね。いつか思い出してくれるって信じるしかないかなぁってね」
ちょっと影をさしながら、それでも最後は笑顔を向けながら詩織が語った。
「言い訳はせん。あん時はほんま思い出せんかった…」
「もういいってばぁ!それに…」一旦間をおいて
「あそこで再びゆうくんとめぐり逢えた。それが…それが全てなの。そしてあの時、ゆうくんに救われ、また繋がることができて…やっと愛し合えるようになれて…今もこうして傍にいられる。運命・・・なんだね?きっと!…………二度と離れないっ!二度と離さないでねっ!!」
泪を溢れさせ、だが微笑みながら雄二を見つめ、そう告げた詩織。
「しーちゃんっ!しーちゃん!もう二度と離さないっ!!」再びきつく抱きしめる雄二。
そのまま静かに、お互いのぬくもりを感じる事でお互いの存在を確認するかの様にしばらくの間、抱きしめ合う二人だった。静寂が二人の再びのめぐり逢いを祝福するかのように優しく穏やかに流れていた。
やがてお互いの想いを十分確かめあって、満足した詩織は少し雄二から体を離し、雄二の目を見ながらも再び拗ねるように本音を口にする。
「でも…でもね…ゆうくんに彼女がいたのはショックだったなぁ…さすがに」
あの時は平気そうな顔をしていた詩織だったのだが、やはり雄二に既に彼女、圭子がいた事は相当ショックだったみたいだ。
雄二は気まずい顔をしながら黙ってそれを聞くしかなかった。
「こっちはさぁ…ゆうくんに少しでも早く逢えるように頑張って病気を治さなきゃと思ってたのにさ…」
ジト目をしながら尚も愚痴をぶちまける詩織様。
「それにさ…こっちはキスもあんな事するのも何もかもが初めてだったのにさあ~………」
ここまで聞いて雄二は背中に嫌な汗をかきながら…「あ…」と声を漏らす。
(やべっ!・・・これ、ヤバいやつやんなっ!)と感じながら。
「それで?…ゆうくん?…私で何人目なのかなぁ?…かなぁ?」
目が心なしか、すわってきた詩織様。
「な、何人目って?・・・なにが?」すっとぼけようとする雄二だが、
「はあ?…女の子の口から言わせるのぉ?」非難するかのように詩織様。
「すいませんでしたぁ~っ!!」速攻、全力で土下座する雄二。
「で?」と短くも迫力満点のブリザードを纏いながら追及の手を緩めない詩織様。
観念したかのようにうなだれながら、ボソッと、
「・・・・・・3人目です・・・・・」白状する雄二。
「んん?…一人はお姫様だっけぇ?もう一人は彼女さん?」
「・・・いいえ・・・お姫様は二人目です。初めては・・・その・・・入院してた病院の・・・看護婦さんです・・・」もはや詩織に敬語で答える雄二。
「・・・ええぇぇぇっ!!聞いてないよぉ~っ!!」絶叫する詩織。
(ダチ〇ウ倶楽部かよぉ!!)心の中でツッコむのであった。
「あっ!…あのさ、いちおう言っとくけど…初めての時は向こうが強引に襲ってきて…それで…」
必死にしどろもどろではあるが言い訳を試みる雄二だが、
「・・・でも、したんだよねぇ?」と、氷の刃で一刀両断される。
「・・・・・・ぁぃ・・・」完全に白旗を上げるのだった。
腕を組み、目を細めながら取り調べを続ける詩織。
「じゃあ、彼女さん?何て名前だっけ?その彼女さんとはまだなんだぁ?」
「あ…圭子って言うんやけど・・・実はもう圭子とは・・・」
と言いながら目を伏せる雄二に、
「えっ?…なにぃ?どおしたのぉ?」
そう尋ねてくる詩織に対し、「実は・・・」と、事の経緯を話す雄二。
圭子の父親が急遽、西ドイツに行くことになってしまった事。
それに付いて行かなければならず、雄二と離れ離れになってしまう為、それを悲観して酷く思いつめて、心が壊れ始めてしまい、深刻な状態になってしまった事。
そして、そんな圭子を救う為、無理やり圭子から雄二の記憶を消して、事実上別れてしまった事を全て正直に話した。
全て聞き終えた詩織は立ち上がると座っている雄二をそっと胸に抱きかかえて、
「そっかぁ・・・・・・・そんな事が・・・・・」
労わるように優しく包み込んで、
「辛かったね…ゆうくん…よく頑張ったね…」と慰めたのだが、「でもね?」と、雄二を見つめながら、
「そのまま「サヨナラ」じゃあだめだよ?ゆうくん」
それを耳にした雄二は顔を上げて「だったらどうすれば?」と言いたげに詩織を見る。
「だってこのままじゃ圭子さんは本当の意味で救われた事にはならないよ?…そんな風に思いつめるまでしてゆうくんと離れたくなかったんだよ?それだけゆうくんの事、好きなんだよ?そんな圭子さんの想いまで消したまま「はいっ!サヨナラ」なんて、可哀想すぎだよぉ?」諭すように続けて、
「ちゃんと最後まで救ってあげなきゃ!…私を救ってくれたみたいに彼女…圭子さんも救ってあげて?…ゆうくんならできるはずだよ?」そこまで口にすると、詩織は少し上の方を向きつつ、
「私、このまえ、自分がゆうくんの一番だって言ったじゃない?…それって私がゆうくんを誰よりも愛してるって事であって、ゆうくんの優先順位が一番とかじゃないからね?そこは拘ってないからさ。…それにゆうくんなら、順位なんか付けずにみんな平等に愛してくれるでしょ?何人になってもね♡♡♡♡♡」そして締めとして、
「そ・れ・と…ちゃんと秀美ちゃんも可愛がってあげないとね♪」ウィンクしながら言う詩織。
何故かここで秀美の名前が出たことに驚いている雄二に対して、
「私にはわかるんだよね…小さい時から秀美ちゃんの事も知ってるしね…秀美ちゃんもゆうくんの事、大好きだから、あんまり私達ばかりにかまってると、寂しがるよ?」全て理解してますと言うような詩織の言葉にもはや何も言えなくなる雄二なのであった。
「しーちゃんってやっぱすごいやっ!とても敵わない!」と苦笑いする。
「えへっ!☆彡♡凄いんだからぁ!!私は♡♡♡♡♡」と言いつつ、キスをする詩織。
「だから…圭子さんも最後まで救ってあげてね♪」
念を押すように言われて雄二は「わかった!」力強く答えた。
その後、少しチチくりあって「じゃあ、またね~♪」そう言いながら、お互いの部屋に戻った。
正月の3日目、朝8時に目覚めた雄二は顔を洗って下に降りっていった。
既に母親は起きていて朝食の準備をしていた。
「おはよ」「おはよう」と挨拶を交わし、手伝いをする。
続いて父親が起きてきて、最後に秀美が起きてくる。
朝食後、歯を磨いて、服を着替え、出かける準備をする。
秀美も母親も雄二が贈ったブローチを身に着けていた。
「似合っとるやん」と秀美の頭を撫でつつ言うと「えへへっ♪」と可愛く笑う。
準備万端整って、いよいよ出発だ。
助手席に乗りこもうとすると秀美が「お兄ちゃんは秀美と一緒に後ろぉ~♪」
(し、仕方ないなぁ~)と、思いつつ後部席へ。
父親が「たまには秀美が前「やだっ!」」またしても娘によって瞬殺される父親はダメージを受けつつ、運転席に乗り込み、バックミラー越しに恨めしそうに雄二を睨む。
(おいおい…大人げないぞ!親父)
それを眺めて母親はいつものように「うんうん♪仲良し兄妹♬」
実に嬉しそうである。
多少混雑はしてるものの、○○インターから高速に乗る。
車種がクラ〇ンということもあるが、父親のドライビングテクニックがピカイチなので高速に乗っていても安定走行である。とても100㌔以上のスピードが出てるとは思えない。
途中1回サービスエリアに寄ったが、1時間半で京都市街まで入った。
そこから更に20分ほどで叔母さん家に到着した。
笑顔で迎えられるが特に雄二は昨年、長い間入院していた為、全快したことを大いに喜ばれた。
叔母さん家は旦那さんと子供さんが4人。一番上は雄二と同い年の男の子、その下に男、女、男という構成だ。この長男と雄二は仲が良く、特に音楽の趣味が合う。雄二の洋楽好きはこの従兄の影響である。
雄二の自室に飾ってある某リヴァプール出身の偉大なロックバンドのパネルも彼に貰ったものである。
彼の名前は典ちゃんである。叔母さん一家はみんなとても優しく親切だった。
雄二達家族が来る度にどこかへ遊びに連れて行ってくれたり、美味しいものをごちそうしてくれた。
この時代にはまだ京都にも吉〇興業の劇場があり、正月になるとよく連れて行ってもらった。
雄二は関西系のお笑いも大好きだったのだ。
こうして京都で3日間、楽しく過ごして、自宅へ帰ってきた。
冬休みも残すところあと2日になってしまった。
使い魔の『茶々』から連絡が入り、圭子は家族と一緒に今日、日本を旅立ったらしい。
圭子は元気そうみたいなので一安心であるが、念のため、『茶々』は当面このまま圭子を見守ってもらうことにする。
さて、妹孝行をするべく、本日1月6日は秀美と出かけることにした雄二。
お年玉で洋服を買いたいという事で付き添いである。
やはり秀美も女の子なのでおしゃれをしたいのである。
(どうでもええけど、秀美の奴、さっきからずっと手を繋いでくるんだが…)
そう。家から出た途端、秀美は雄二の右手を握ってきてるのである。
バスに乗る時も。街中を歩いているときも。身長差があるので人から見ればすぐ、兄妹とわかるので別にいいのだが…。
お目当ての店に入って、色々見て回っていると、秀美のクラスメイトだろう女の子が3人くらいこちらに歩いてきた。
「秀美ちゃん!」と声をかけられた秀美は恥ずかしそうに雄二を兄だと紹介してそのあとは暫くおしゃべりをするようだ。
雄二は邪魔にならないように、少し離れたところにあるベンチに座って待つことにした。
ここは繁華街にあるアーケードの一角で人通りも激しい。まだ冬休み中という事で子供連れや学生らがわんさかいる。
ふと、横を見るとお年寄りを幾人かのガラの悪いお兄さん達で囲んでいた。
明らかに犯罪の匂いがプンプンする。だが、周りに人がこれだけいるというのに誰もが見て見ぬふりである。誰もかれも助けるどころか、なるべく関わらないように距離を置いている。
(はあーっ!・・・)とため息をついて雄二は【状態改変】を使って、ギャーギャー騒いでるお兄さん達の内臓、細かく言えば大腸を刺激して…もよおすようにしてあげた。
すると、お兄さん達は急にお腹やお尻を手で押さえながら屈み気味になる。足も内股になっている。
お腹から聞こえてくる「ピ~~~グルグルルルゥゥゥ~~~」という音とともにうめき声も聞こえ出す。
(あとどれくらい持ちこたえられるかな?)と思い心の中でカウントダウンを始める雄二。
やがて顔面を蒼白にしながらお兄さん達は駆けていった。お尻を手で押さえながら。
絡まれていたお年寄りがこちらをじ~~っと見ている。
(気付かれていないはずやけどな?)と思っていると、ニコリとしながら立ち上がり、頭を深々と下げると人混みに紛れて消えていった。(うーむ…知り合いではないはずだが?)などと考えていると、秀美がやっと雄二の所へトテトテと歩いてきた。どうやら気に入った服もゲットできたようでご機嫌なご様子。何より何より。
お兄ちゃんとして昼飯ぐらいは奢ってやろうと思い、何が良いか秀美に聞くと、
「お兄ちゃんとなら何でもいいよぉ~」とニッコリ(かぁいい~~~♡♡♡)
こうして雄二は兄としての威厳を保つ事に成功したのである。
帰りのバスの中でふと、先ほどのお爺さんの事が気になり、考えていた。
(あのお爺さん、人間じゃなかったよなぁ…詳しく【アナライズ】しとくんやったわ)
このような駄文を読んで頂き、誠に有難うございます。
今後とも何卒宜しくお願い致します。




