本編 第083話 サブキャの決意
どうにか月一更新(滝汗;;;
こうしてこの物語の主人公である雄二のいわば友達ポジであり、サブキャラな幸雄とヒロイン枠から洩れてしまった智春がお互いの気持ちを確かめ合い、遂に結ばれた。
幸雄にしてみれば人知れず育んできた2年越しの恋が実を結び、成就した訳である。
そんなニマニマしながら余韻に浸っている幸雄を尻目に智春はふと違和感?と言うべきある事実に気付いてしまう。
事に及んでから結構時間が経過しているはずなのだが......室内がまだ見渡せるぐらいには仄暗い。
「・・・・あれぇ?・・・私達がココに入ってからかなり経ってるよねぇ?」
脱いでいた衣服を着直し、身だしなみを整えながら智春が幸雄に尋ねる。
幸雄も汗と砂ぼこりで汚れたままのユニフォームに再び袖を通しながら、
「ほんとやなぁ・・・・んん?」
締め切ってあるカーテンの隙間から外を覗くとこの教室に入って来た頃よりかは若干暗くなっているものの夜の帳が下り始めた位である。
智春が自分の腕時計を確認すると午後7時に差し掛かろうとしていた。
この部屋に入った時点で6時半ぐらいだったはずだ。
二人の感覚からすると少なくとも二時間以上はイチャコラしていたはずだ。
頭上にいくつもの?マークを浮かべて考え込んでいる智春に苦笑しながら幸雄は、
((たぶん、大将やな^^))と思い至る。
そうなのだっ!この教室内の時間経過を雄二はリモートによる【タイムシフト】で調整していたのだっ!!
幸雄は雄二がどんな力をどれだけ持っているのかなど具体的には知らないのだが、自分が実際目の当たりにした事象を鑑みてこの不自然な時間経過が雄二の仕業であろうことは直ぐ見当がついた。
そして未だにうーんうーんと唸っている智春に対しいい機会だと判断して、
「智春?帰る前に聞いてほしい事があるんやが…ええかぁ?」
唐突に真顔で言われた智春は一瞬キョトンとするが、幸雄のただならぬ雰囲気を察して黙って頷く。
それを受けて幸雄は机に腰を落ち着けると口を開くのだった。
「丁度一年ぐらい前 智春を連れて帰った時の事、覚えてるか?」
「うん・・・・・確かにお邪魔して・・・・いつの間にか居眠りしちゃってて目が覚めたら何故か幸雄君のお母さんとお姉さんも傍で眠ってて。。。。わけわかんなかった覚えはあるよ;;」
そう、、、、それは一年程前 悪魔に魂を売った超能力者・高塚が引き起こした事件。
運悪く幸雄の母と姉である葵が標的にされたのだ。
当初は雄二により母、葵、そして凄惨な現場を目撃してしまい気を失った智春の記憶が操作されていたのだが、幸雄の母と葵はついこの間 記憶を呼び起こされ、壮絶なる事実を突きつけられ、全てを認識せざるを得なくなったばかりである。
だが智春は”そのような事実は無かった事”にしたままだったのだ。
当時の幸雄の説明では「暑さと疲労で少し意識を失った」らしいのだが智春本人は色々疑問は残ってはいた。
「今からあの日、本当に何が起こったのかを話すから!とても信じられない事かもしれへんけど、全て事実やからそのつもりで聞いてほしい。」
雄二と違い、普段から生真面目で聡明な幸雄であるため智春も真剣な表情で身構える。
「記憶にないかもしれんけど、当時 不可思議な事件が頻発しとってなぁ。。。」
こう切り出した幸雄はその事件の真相、そしてそれらを引き起こした張本人である異能者の存在を明かした。
更にその犯人である高塚に運悪く幸雄の家族が標的にされてしまい、【パイロキネシス】により真っ黒焦げに焼殺されてしまった事。それを目撃した智春自身がショックのあまり気絶してしまった事までを解り易く説明した。
とは言え....雄二により地球規模で【記憶改変】されているので当時何が起こったのか?とか、その主犯である高塚の存在自体も全て無かった事にされている。
「・・・・・エ・・・・・えぇぇっ?!!・・・・でも・・・」
唐突にトンデモナイ衝撃的な話を聞かされて普段は大人しくお淑やかな智春は変な声を上げてしまう。
しかしその話を繰り出してきた本人を見やれば至って冷静で真顔のまま。悪ふざけとか冗談といった類では無さそうである。
続けて幸雄は事実をありのままに淡々と打ち明ける。
家族が黒焦げにされる最中、自分を顧みず無我夢中で助けようとして幸雄自身も重度の大やけどを負い、あまりの激痛と熱さで意識が徐々に朦朧となっていき。最終的には気を失ってしまっていた事。
次に意識を取り戻した際、目の前に見知った顔 雄二が居た事。
同時にあれほど熱く痛かった感覚が全く無く、身体の何処にも火傷の痕跡が無くなっていた事。
それどころかボロボロに焼き爛れていたはずの衣服やソファー、毛布、床なども綺麗に復元されていた事。
更に驚くべきことに…雄二が幸雄の目の前で黒焦げの炭の塊と化していたはずの自分の母親と姉をみるみるうちに元通りの姿に完全修復させ、おまけに蘇生までしてしまった事などもありのまま話したのであった。
「ゆ、ゆ、幸雄君?可笑しな夢でも見たんじゃ・・・・」
「うん.....普通はそう思うよなぁ(苦笑)俺もその時はそう思ったよ。でもな・・・」
そんな非現実的で非常識な事など起こるはずがない。…極まともな感性を持っている智春からすれば到底受け入れ難い話だろう。
「もし夢だとしたらなんであんなに熱さを感じる?なんで焦げ臭い匂いを感じる?なんで死ぬほどの激痛を感じる?ふつふつと燃え盛る音も実際に俺の皮膚が燃え爛れる感覚もあったんだぞ?!」
静かに淡々とだがこれ以上ない強い意志を持った目で見つめて告げる。
「あれは間違いなく実際に起こった真実だっ!!」と言うような物凄い説得力と確信の籠った言葉だ。
「っ!!!・・・・・・・」
その迫力に智春は息を飲み押し黙ってしまう。
((こ、こんな幸雄君の表情…見た事無いよぉ;;))
正直、智春もビックリである。だが、それと同時に、
((幸雄君がここまで真剣な眼差しで拘るって事はみんな本当だと言う事ぉ?))
と段々思うようになってきた。
そんな智春に対し、幸雄は畳みかけるように、
「それに・・・・さっき智春が言ったように時間経過もありえへん事になってるやろ?^^これも間違いなく大将が不思議な力を使ってるせいやっ!」
その言葉を裏付けるかのように何故か二人の目の前にこの教室に入ってからの経過時間が突如としてデジタル表示で浮かんでくる。
『コノキョウシツニオケル タイザイジカン 2:53:37』
今もなお秒刻みで増えている。
21世紀になって実現可能になった緑色に光るホログラム。
「「っ!?」」
もはやここまで来ると智春も幸雄の言っている事を信じざるを得ない。
1977年当時はこんなのSFドラマやアニメでしかお目にかかれない代物であり、現実には絶対あり得ない現象なのだ。
そればかりかトドメとばかりに何も無かったはずのそのホログラムの横にはいつのまにやらキンキンに冷えた『愛のス○ール』が2本置かれているではないか!
智春は驚きのあまり数秒固まった後、周りをキョロキョロ。
そして何かを思い出したのか?慌てたように、
「さ、さっきまでの・・・・覗かれ・・・・(//////大汗」
「いやいや^^;それはないやろ?大将はそんなゲスいヤツやないっ!安心せぇw」
その後、用意されたスコ○ルを飲んで一息入れた二人。
その傍らで、追加事項として幸雄は雄二がこの様な不思議な力を手に入れた経緯や使用時のポリシー等を彼自身から聞かされた通りにかいつまんで説明した。
それを踏まえた上で、再び居ずまいを正した幸雄は自分がこれから歩むべき道について決意の籠った眼差しで智春に熱く語り始めた。
「俺・・・自分の人生をかけてあいつに恩返しせなアカンと思う。」
智春は幸雄の目をジッと逸らさず見つめたまま。
「予想やけど、多分あいつ 俺達の想像を遥かに超える存在になっとると思う。・・・・だから俺はヤツに仕えて支えて行こうと決めたし家族にも了解は取ってる。」
と......ここで一旦言葉を切って智春の両肩に手を添え、
「智春っ!俺についてきてくれへんか?お前が傍に居てくれたらどんな事があっても頑張れる気がするんやっ!」
あくまでも本作はフィクションです。
実存する人物・物体・事象とは一切関連はありません。
ご了承下さい。




