本編 第069話 下級生たち・・・・④ ~サルビア
現実は虚構より不可解w
雄二が「パチンッ」とフィンガースナップした瞬間、心愛の目の前の床がピカーッと光りだす。
眩い光が数秒続き、やがてそれも収束する。
光が収まるとそこには・・・・
日本に居る筈の無い者達、もっと言えば心愛が最も心を痛め 安否が心配でならなかった、そして最も逢いたかった最愛の者達が居たのだっ!
「・・・・・マ・・・マ?・・・・ママぁ・・・・・と、としくん・・・・うららぁ~!!!」
そう・・・・・・・そこに現れたのは心愛自身の呪われた異能のせいでモスクワに人質として拉致監禁されていた大切な家族だったのだ。
自分が異能者であったせいでとんでもない連中に目を付けられ、見せしめに惨い拷問を幾度となく受けていたのだから心愛としては本当に申し訳ない気持ち 沈痛な想い、安否を気遣う想いで張り裂けそうだった。
更には愛する家族を人質に取られていたとはいえ、組織の言いなりになりまったく罪の無い多くの人達を殺める犯罪行為に加担したのだ。
深い悔恨の念で心が壊れそうになった事など一度や二度では無い。
それでも何とか家族を助けたい一心でギリギリ耐え忍んで来た。
雄二は少しの間空気になる。
なりながら雄二もまた心を痛めていた。
何故なら........今回のようにソ連 もっと言えばKGBが非情極まる暴挙に出たのは雄二が少なからず関わっていたのだ。
昨年の夏───
地球全域を襲った‟メテオ・スカージ”(異星人によるホワイトホール隕石攻撃)
それらはまるで狙ったかのように核兵器関連施設もしくはそのものを標的にしたのだ。
そしてそれは当時ア○リカと並ぶ超大国であったソ連も例外では無かった。
隆盛を誇った核兵器のほとんどを失ったソ連だったが、根本の大陸主義的選民思想もしくは独善的破壊ナショナリズム的社会主義思考は健在だったのだ。
{現に以降も結局一から再び核兵器を含んだ戦略的軍備を秘密裏に推し進める事になる。(かのプー○ンが中心になり)}
よって核以外の武器を早急に持つ必要がある=超科学の分野つまり超能力・異能を戦力化する事をも積極的に乗り出した訳である。
そればかりか核兵器関連と同様に葬られたはずの生物兵器や化学兵器(ポロニウム等を含む)も一年足らずでほぼ復活させているのである。
(ここの連中のこないな逞しさちゅーか執念・したたかさを舐めとったわ;;)
いや、これはソ連に限った事ではない。
70年代当時は大熊猫をエサに羊の面外交をしてその実は既に世界征服を企んでいたもう一つの共産主義大国、更には西側先進国(欧米)、欧米を敵視するアラブ諸国なども程度は違えど似たような物だったりする。
閑話休題。
その身勝手な国家組織の犠牲者の一人ともいえるのが心愛でありその家族なのだ。
心愛は目の前に現れた最愛の家族にすぐさま近寄るのだが触れる事さえできずにいる。
本当ならやっと再会できた家族なのだから抱きしめてその温もりを確認したいはずなのだが。
何故なら最愛の家族がこんな目に遭っているのは明らかに自分のせいなのだ。
後ろめたさやら申し訳ないやらの自責の念が酷く、踏み出せないのだ。
更には目の前に居る母親、弟、妹は3人共満身創痍で意識朦朧もしくは意識さえない・・・というより瀕死の状態なのだ。
特に幼い双子、俊充とうららは得体の知れない薬物を投与され植物状態に陥っていたのだ。
心愛を含む3人の子供の母親である美奈子は意識は辛うじてあるものの度重なる拷問により両目は潰れ 両脚は切断され おまけに凌辱され続けて下半身が内的に破壊され精神も壊されていたのだ。
父親であった宗介は既にこの世にはいない。
家族を護ろうと組織に抗った為、その家族の目の前で惨たらしく殺されていた。
やっと逢えた家族なのに心愛はその変わり果てた姿を目にしてただ涙を溢れさせながら呆然と見つめる事しかできずにいた。
雄二は雄二でやるせない気持ち、多少なりとも自分の行ないが招いた悲惨すぎる現実を真摯に受け止めざるを得ないでいた。
そこで雄二は贖罪の意味も込めて今回の行動に出たのだ。
心愛に一言、
「絶対助けるから安心せぇ^^」
頭をポンポンすると『権能』を行使する。
本人を落ち着かせるべく極弱【ホーリー・ライト】をもう一度かける。
心愛は何故か何の根拠もない雄二のその言葉に100%信頼しきって安堵の表情を見せている。
雄二はまず幼い双子を【アナライズ】で現状の主たる要因を突き止める。
(・・・・向精神薬の多量投与・・・・こないな子供をモルモットにしやがって!!(怒))
こんないたいけな幼子に対して蛮行を平気で行なうKGBへの憤りの炎が燃え盛りかけるが、まずは今やるべきことを優先させるよう冷静さを取り戻す。
次に【アカシック・レコード】からあるべき姿の情報を取得し、それに基づき【状態改変】【デリート&デストロイ】そして【クリエイト&フォーム】を駆使し、根本原因を取り除き正常組織に再生する。
最後に【癒しの3コンボ】&【ヒプノシス】でしばらく安静にする。
その間 エメラルドの温かい光が双子を包みこんでいた。
ジッと見つめている心愛に、
「この子らの体内にあった不純物は全て消去して健康な体に戻したからもう大丈夫や^^」
と告げる。
二人ともさっきまで蒼白く無機質な人形だったが、生気が戻り顔色も良くなり心なしか穏やかな表情に変わっていった。
心愛はそれを聞いて黙って頷くのみ。元々無口な方だが先程から驚きの連続で声すら出せないでいる。
そんな心愛はひとまずスルーして雄二は美奈子の治癒に取り掛かった。
こちらも最初に【アナライズ】にて徹底的に精査した。
続いて【アカシック・レコード】と『権能』を使い、肉体的にも精神的にも健全で安定した状態に修復していった。
心愛が食い入るように見つめる中、またもや緑の光が今度は母親を包んでいく。
やがて眼球を抉られた上、劇薬によって爛れて潰されてしまっていた両目がみるみるうちに綺麗に再生して元通りになって行く。
そして膝下からチェーンソーで切断された両脚もまるで超高速で再生された芽吹き映像のようにニョキニョキと伸びていき、あっという間につま先まで形成されていったのである。
最後にこちらも【ヒプノシス】や【ヒール】等で安静にしておく。
無論精神面も既に回復させている。
本来なら全て一瞬で完了するのだが、わざわざ心愛に見せつける為に時間を掛けている。
その心愛はと言うと・・・自分自身が超常現象を生み出す異能者であるはずなのだが、あり得ない奇跡をまざまざと見せつけられ 目を大きく開き、フリーズしていた。
((っ!!!なっ!なにこれぇ?!!こんな事が本当にあるのぉ?!!まるで・・・・))
そんな心愛の内なる呟きを読み取って雄二が、
「魔法ちゃうよ^^権能・・・神の力やっ!」
と答え、更に、
「神の力はそれだけやないっ!こないな事もできるんやで?」
付け加えながら雄二は再度パチンと指を鳴らす。
すると、安静にしている家族のすぐ傍の空間が歪み、再び眩いばかりの光を放つ。
これもまた数秒後には収まった。
視界が回復して目の前に見えてきた人影。
横たわっている様だが、段々と鮮明になってゆくその姿。
それを見た途端、
「っ!!!!・・・・・・ぅ、うそ・・・・・そ、そんな!あり得ないっ‼・・・・」
ガタガタ震え酷く狼狽し始める心愛。
そこに居たのは紛れもなくもう一人の大切な家族。
一年近く前、家族を護るため組織に抗い、その家族の目の前で見せしめの如く爆散し肉片と化した父親 宗介の姿だったのだ。
本来のあるべき姿のままで。
雄二は再び感情を爆発させてしまっている心愛に【ヒール】と極弱【ホーリー・ライト】を施し、落ち着くまで待った。
どうにか落ち着いた心愛は雄二に視線を向ける。しかしその視線には戦慄・恐怖・驚愕といった様々な感情が存在していた。
「ぁ....あの・・・・・・・」
恐る恐る雄二に声を掛ける心愛だったが、雄二は逆に心愛に問う。
「先にいくつか確認したいんやが・・・ええかぁ?」
あくまでも本作はフィクションです。
実存する人物・物体・事象とは一切関連はありません。
ご了承下さい。
ご感想頂けるとありがたいです。
エピソードタイトルにあるサルビアの花言葉は『家族愛』だそうです。




