本編 第052話 異世界にて…雄二、キューピットになる♪
たまには純愛もいいかなぁとw
雄二がメルの手配したメイドに案内されてやって来たのはマリアンナ第一王妃の私室だった。
部屋の前ではメルが待機していた。
メルがノックをし、雄二の到着を伝える。
入室を許可され、中へ入り、促されるままソファーへ腰かける。
目の前には雄二の願い通り、マリアンナ第一王妃とフィリップ王太子が待ち構えていた。
「これはこれは使徒様、わざわざ私の私室までおいで頂けるとは誠に幸甚の至りにございます。」
と言うとマリアンナ第一王妃とフィリップ王太子は深々と雄二に頭を下げてきた。
もはやヴィトゥルブ王国王族にとって雄二は自分達より格上の存在であると言う認識がどうしても抜けない様だ。
これには雄二の横にいるメルも苦笑いである。
「いえいえ^^こちらこそお忙しい中、時間を割いて頂き、誠にありがとうございます。」
雄二がそう頭を下げると余計に恐縮してしまう有り様である。
メイドがお茶を淹れて配膳し終えるのを見計らってマリアンナ王妃が、
「それで…此度は如何なされましたか?使徒様」
相変わらず堅い口調のマリアンナ王妃に雄二は半分呆れつつも本題に入る事にした。
「はい、実は…今 お世話してもらっているパトリシアさんと言う侍女さんのことでちょっと・・・・」
雄二がパトリシアの名前を口にした途端、フィリップ王太子はあからさまに狼狽える。
そんな息子をよそにマリアンナ王妃は落ち着き払って、
「パトリシアが何か使徒様に失礼を?」
「いえいえ^^そうではありませんよ。彼女はしっかり仕事を熟してますよ」
「それをお聞きして安心いたしましたわぁ^^」
「はい^^・・・・それでですね...ちょっと気になったものですから失礼だとは思いながら彼女を【アナライズ】、こちらで言う【鑑定】で見てしまいまして。。。」
雄二がここまで告げると、マリアンナ王妃の顔色が変わり、真顔になる。
横のフィリップ王太子は更に動揺する。
「彼女が何者であれ、過去がどうであれ関係ありません。」
雄二はココまでで一旦言葉を切って、少し間を空けた後、フィリップ王太子に視線を向ける。
「パトリシアさんの身体は至る処が酷い状態でした。目も耳も片方しか機能せず、身体のあちらこちらも傷だらけ。・・・・おまけに身体内部まで壊されてしまってました。それらを含めて全て治癒して元の綺麗な身体に戻しました。更にはまっさらな乙女の状態に戻してあります。」
続けて、
「彼女はどんなに辱めを受けようが、いたぶられようがたった一人の男性を想い続けていたようです。加えて彼女は真摯に王国を、そして王族を心から敬い忠誠を誓っております。たとえ父親を処刑され、自分が平民に堕とされようとも決して王国を恨む心など持ち合わせておりませんでした。」
その言葉を聞いたフィリップ王太子は愕然とする。
マリアンナ王妃は安心したのか嬉しそうに微笑んでいるが、まだ黙っている。
(息子次第っちゅーこっちゃなw)
「パトリシアさんの心の中は今でも・・・・フィリップ殿下…貴方への愛で溢れてます。世間体や煩わしい問題は俺がどうにでもします。」
ここで再び言葉を切ると雄二は身体を少しだけ前に乗り出しながら、
「殿下?あとは殿下の御心次第ですよ?」
脅しているという訳では無いのだが、フィリップ王太子に決断を迫るように雄二は無意識に圧をかける格好になってしまった。
フィリップ王太子はそれにたじろぎ、額に汗を滲ませている。
雄二の援護射撃とばかりに今まで一言も喋らず、成り行きを静観していたメルが、
「お兄様ぁ?今まで周りからどんなにご縁談の話を勧められても頑なにお断りされてましたわよねぇ?それはひとえにお兄様の心の中にお一人 意中の方がいらしてたからではないのですか?」
妹の正論過ぎる指摘を受け兄は、
「・・・・ぅぅっ;;」
何も言い返せず唸るのみ。
「あなたは今までずっと自分の幸せより我が国の事を優先して行動してきましたわね?・・・・フィリップ」
メルの言葉に追随するようにマリアンナ王妃がそう口にし、更には、
「それはそれで立派なことでしたが、そろそろあなた自身の幸せも考えなくてはなりませんよ?・・・・それに陛下も私も早く孫の顔を拝みたいと思っておりますのよ?」
微笑んではいるが、暗に圧の籠った言葉で息子を追い込んでいった。
「・・・・・・・」
しかし当のフィリップ王太子は未だ煮え切らない態度しかとらない。
さすがにこれにはいつも優雅で些細な事には動じないマリアンナ王妃も眉毛を吊り上げる。
咄嗟に娘であるメルとメイドの一人を呼び寄せるとヒソヒソと密談を始める。
雄二もここは黙って成り行きを静観する事にする。{この後の展開は把握済みであるのだ。}
やがて密談に加わっていたメイドが部屋を出て行った。
(おっ!強硬策やねw)と雄二が心で呟くと同時にメルから【テレパシー】でそれを裏付ける事が告げられる。
15分ほど経過してドアがノックされ、部屋から出て行ったメイドが戻って来た・・・・訳では無く、部屋への入室を許可されて入って来たのはパトリシアであった。
ここでまさかのパトリシア登場に驚いたのはフィリップ王太子のみである。
恐らくマリアンナ王妃が呼び寄せただろうことは控えていた他のメイドらも予見できていたので特に驚きも無い。
ただ・・・・痛々しいほどあちらこちらに傷があり、光を失って布で覆われ隠されていた片目などが全て修復され、以前にも増して美しい顔立ちになっていた事には、雄二以外のその場にいた全ての者達は度肝を抜かれて一瞬、固まっていた。
一方、急にお呼びがかかったパトリシアの方もフィリップ王太子がその場に居合わせている事に大いに戸惑い、キョドってらっしゃっていた。
「ぁ...あのぉ・・・・・・」
なんで自分がこの場に呼ばれたのか?理解が追いつかないパトリシアは不安そう。
自分を見て廻りが固まっているのだから尚更である。
それでも王族の御前であるので直ぐに跪いて首を垂れる。
一泊置いて、
「パトリシア…」
いち早く正気に戻ったマリアンナ王妃が名前を呼ぶとビクッと震えながらも「は、はいっ!」と返事をするパトリシア。
「ここは公の場ではありません。お立ちなさい?」
マリアンナ王妃に促され、恐縮しながらもパトリシアは立ち上がる。
するとメルが席を立ち、自分の座っていた席へ少々強引にパトリシアを座らせるとメル自身はなんとこれまた強引に隣に座っている雄二の膝の上へ腰を下ろしてきたのだっ!
メルは両腕を雄二の首に回し、抱き着いている格好だ。
娘のあまりにも王族としてあるまじき大胆な行動に再び呆気に取られていたマリアンナ王妃は「コホン」と咳払いして仕切り直しとばかりに居ずまいを正し、未だビビリまくってそれどころじゃないパトリシアを真っすぐ見据えながら、
「単刀直入に伺いますからあなたも正直に答えるのですよ?パトリシアっ!良いですねっ?」
もうこうなっては蛇に睨まれた蛙状態である。パトリシアは「・・・・はい・・・」と答える他ない。
フィリップ王太子は今までの話の流れやパトリシアの登場でこの後の展開がどうなるのかは察知はしている。だが、自分の立場や体裁が邪魔をして踏ん切りがつかず、悶々としてブツブツ独り言を呟いている。
「ぅぅぅ...私は自分の事より王国の事を…ヴィトゥルブの事を優先してきた。・・・・自分の初恋を胸の奥にしまって我が国の繁栄を第一に・・・・それが間違っていたということなのだろうか?。。。」
そんなフィリップ王太子をよそにマリアンナ王妃はパトリシアに対し、ド直球で尋ねて来る。
「あなたは今でもここに居る我が息子=フィリップの事を慕ってくれていますか?あなたの家の事とかあなたの歩んできた過去などどーでもいい事です。ですからあなたの本当の心を正直におっしゃりなさいっ!」
高圧的では無いにせよ、有無を言わせない柔らかくも鋭い眼力でパトリシアを射貫くマリアンナ王妃。嘘や誤魔化しなど言える状態ではない。かと言って立場を弁えず本音を口にする事も躊躇してしまい、なかなか言い出せず、焦るばかりのパトリシア。
「・・・・ぁぅぁぅ;;あわあわ…」
せっかちな雄二はメルを抱きかかえ、頭をナデナデと愛でながらも隣で悩んで言いあぐねているパトリシアに対し、軽~く【状態改変】と【マインドコントロール】を施す。
臆せずはっきりと本音が自分の言葉で紡げるように。
途端にパトリシアは今までオドオドしてた表情が収まり、マリアンナ王妃の顔をまっすぐ見ながらはっきりとした口調で長年抱いていた胸の内を吐露するのであった。
「わたくしは幼少の頃、何かのお祝いの席で王太子様に初めてお逢いしました。その時の衝撃は今でもはっきりと覚えております。『ああ…なんて素敵な方なのだろう!』と。・・・・王太子様は下級貴族の娘であったわたくしにもお優しく、気さくに話しかけてくださりました。そして…わたくしは身の程を弁えず、王太子様に恋焦がれてしまいました♡♡♡♡そして許されるのであれば王太子様にわたくしの全てを捧げて添い遂げたいと想う様になってしまいました♡♡♡♡」
ここで一旦言葉を切ってひと呼吸入れると、パトリシアは視線をマリアンナ王妃の隣で先ほどまでブツブツゴチっていたフィリップ王太子に移す。
フィリップ王太子の方もパトリシアが語り始めるや否や、独り言を強制終了して彼女へ意識を集中させる。
彼女の心魂の籠った言葉を一つも聞き漏らさないように真剣な眼差しで。
お互い見つめ合い、心通わせるように。
そして────
「フィリップ様・・・・貴方様をお慕いする想いは今も変わらずわたくしの心を占有したままでございます。たとえこの身がどんなに穢されようと…たとえこの身が地獄へ堕ち、引き裂かれてしまおうと・・・・貴方様への愛は永遠に不変でございます♡♡♡♡」
いつからかパトリシアの瞳には泪が溢れていた。
あまりにも一途であまりにも健気に想いの丈をぶつけて来るパトリシアにさすがのフィリップ王太子も堪え切れなくなったのだろう…ここに来て漸く重い腰を上げる様だ。
雄二らがそんな思いを抱きながら注視していると、
「すまない...パトリシア・・・・そなたを守ってやれなくて。。。」
と言うが早く、フィリップ王太子は立ち上がると、目の前にある邪魔なローテーブルを無理やり横にずらし、パトリシアのすぐ傍で跪いた。
その目には悔恨の想いに暮れる泪で濡れていた。
刹那、パトリシアは椅子から降りるとフィリップ王太子と同じ目線まで下がった。
更にはフィリップ王太子の手を取り、顔を上げさせる。
「王太子殿下・・・・・貴方様がわたくしのような者に頭を下げてはなりませぬよ?」
泪をそのままに微笑みながらフィリップ王太子を優しく諭すのであった。
ここで遂にフィリップ王太子の方も胸のうちにずっと仕舞い込んでいた想いを爆発させる。
「パトリシアァァァッ!!!!♡♡♡♡」
と叫びながらパトリシアをきつく抱きしめたのだ。
パトリシアの方も抱きしめ返しながら、
「フィリップ様ァァァッ!!!!♡♡♡♡」
と絶叫する。
こうして不器用な二人の想いがやっと通じ合い実を結んだことになる。
しばらくは黙って様子を窺っていたマリアンナ王妃もとても満足げに笑みを零しながら口を開く。
「ヤレヤレ・・・・漸くこれで私の肩の荷が下りますわねぇ♪フィリップにもやっと妃が出来てよかったですわぁ~☆彡後は早く孫の顔を・・・・ふふんっ♫メルシオーネとどちらが先に出来るのでしょぉねぇ~(^_-)-☆」
マリアンナ王妃は悪戯っぽく言いながら雄二の膝上でウルウルしている娘を見やるのだった。
急に矛先を向けられたメルはお顔真っ赤っかにして俯いてしまった。
雄二は雄二で明後日の方向に視線を逸らしていた。
周りにいるメイドらもとても嬉しそうで一気に祝福ムードに包まれる。
そんな中、マリアンナ王妃は再び姿勢を正し、雄二の方へ向き直ると、
「あ、あのぉ~…使徒様?非常に申し訳な…」
と、ここまで言いかけたところで雄二により手で制され止められる。
同時に雄二はニッコリ微笑んで「わかってます♪わかってますとも☆彡」という素振りをする。
雄二はまず、この世界『ズゾロ』を管理する女神‟エウリアネ”に【テレパシー】で連絡を取り、今から行なう事への断りを入れる。
(いちおうエウリアネがここの管理者やしなw)
〔マスターは全天全宇宙である『マキシマム・ユニヴァース』を統べるお方なのですから、こんな塵にも満たない極小な惑星の駄女神などの了解など取る必要も無いんですよ?〕
【アカシック・レコード】にやや呆れられたが、こんな所にも気を配る雄二はやはり小心者なのだろう。
さておき───
雄二はごく一部の人間を対象外にして『ズゾロ』に住まう者全体に【常識改変】と【認識改変】を施した。
その内容は以下の通り。
・謀反の主犯はあくまでもゲヴァールであり、パトリシアの父であるジーゼル子爵はその配下に過ぎない。
・パトリシアはそんな父に反発し、嫌気が差したので家と絶縁した。
・そんな彼女が知人に騙され、嬲り殺されそうになった際、マリアンナ王妃一行に助けられ、保護される。
・元々パトリシアとフィリップ王太子は幼馴染同志でしかも相思相愛であった。
・ただお互いが引っ込み思案だったのでなかなか進展せず、成人してしまった。
────このような筋書きでこの世界全体に流布させた。
尚、対象外にしたのは王族とパトリシア本人であるが、フィリップ王太子にはパトリシアに対して余計な雑念や偏見などを持たないよう。そしてパトリシアには自分が被って来た災厄自体の記憶が徐々に薄れ、何の躊躇いも無くフィリップ王太子に対し、言動出来るようにしておいた。
こうして雄二はフィリップ王太子とパトリシアが憂いなく結ばれるよう一役買って出たのである。
その後は早かった。
雄二ら家族の歓迎晩餐会にて貴族達も一堂に集まる中、急遽ではあるが、フィリップ王太子の婚約が発表された。
雄二が行なった【流布】により、特に誰にも疑念も持たれないままスムーズに受け入れられた。
晩餐会そのものも国を救った英雄たる‟勇者様のご家族”という事で特に問題も無く、盛大に行なわれた。
更には正式にメルとルーシェそしてルネが雄二の許へ嫁ぐ事が大々的に発表された。
(うん...ここまでやったら許容範囲で済んだんやけどな;;)
雄二は確かに予見はしていた。だが、触れたくなかったのだ!
この王城とさして離れていない場所にヴィトゥルブ王国の威信をかけて造られていた建造物の存在を。
地球からこの世界に渡る際、メルから来訪時期をずらしてくれるようお願いされたのもこの建造物が建築中であった為である。
そうなのだっ!
歓迎晩餐会においてメルらの婚約発表と同時にこの世界に於ける雄二所有の居城の落成が発表されたのだ。
「俺…ココに永住する気無いんやけど?;;」
無駄とわかっていても文句の一つも言いたくなるのは仕方あるまい。
「はい…その辺はお父様も百も承知なのです。ですが、ユージ様にはとてもお返ししきれない恩義があるのも事実。・・・・このまま何もせず…では王族として色々困ってしまうのです。ですからここは何卒穏便にお願いしますぅ~☆彡ユージ様ぁ♡♡♡♡」
メルが甘えるようにお願いしてくる。
「でもなぁ;;いくら何でも大きさがほぼ王城と同じって・・・・」
「ユージ様ぁ~♡♡♡♡(ウルウル)」
「・・・・はあ┐(´д`)┌・・・・わかったよ;;」
{チョロい男である。}
おまけに聞いたところによると既に管理するスタッフが選出され、任務に当たっているらしい。
しかもしかも、この雄二所有の居城の統括管理する執事長はルネの父親であるリベラール男爵が就いてメイド長にはペリーヌさんが就くらしい。
「な、なんや知らんけど…どーしてこーなった?」
晩餐会も終了してあてがわれている部屋に戻って頭を抱える雄二であった。
その傍で笑いを堪える純。彩華と大樹は何故かメイドの一人とおままごと遊びをしていた。
次回は稲村家の異世界巡り?w




