本編 第045話 皆様はじめましてぇ~☆彡わたくしも嫁でございます♪
台風一過(謎w
雄二の高校に於ける夏季休暇が終了し、学校が再開されて幾日か過ぎて行った。
学校が再開されたと言っても教科の授業がある訳でなく、月末から予定されているこの高校の最大のイベントである○高祭準備に充てられるのである。
全学年が設営に追われる最中、雄二絡みのイベントがまたしても炸裂する。
週明けである8月25日(月)。
いつも通り始業のチャイムが鳴り響き、すぐさま担任の牧村と副担である菜摘が教室に入ってくる。
───が、今日は更にもう二人の人物がついて来ており、廊下で待機している。
「よーしっ!今日も全員揃ってるな!!」
牧村先生がいつも通りの朝の挨拶。加えて、
「先週話した通り、本日から3ヶ月ほどに渡り、我がクラスにドイツから親善留学生を迎える事になった。しかも2名だ。みんな仲良くしてあげるようにっ!では二人共カムインッ!」
牧村先生の指示に従い教室に入って来たのは無論、メルとルネである。
いきなり現れた輝くばかりの鮮やかな銀髪。そしてこれまたキラキラで大きい翡翠のような瞳。
間違いなく学校一の美少女と謳われる詩織に匹敵する超絶美少女なのだ。おまけにボンッキュッボンッ!
いくら自分の成績に余念がない男子であっても、たちどころにその神々しいまでの美しさに目を奪われるのは必然であった。
その横に並ぶルネもタイプが全く違うが、まごうことなく美少女である。
一緒に教壇に立っているこのクラスの副担=菜摘にも通じるところがある保護欲を誘う可憐さが溢れて出ている。
そんな二人の美少女ぶりには男子のみならず女子生徒も唖然となるばかりである。
そんな中にあって彼女達と既に顔見知りであり、同じ男性を愛する者同志である恵とまどかは手を振って歓迎の笑顔を送っている。
「ええ…皆から見て左側になる銀髪の女子はメルシオーネ・ロゼ・ヴィトゥルブさんだ!ドイツの貴族の末裔で名家のお嬢様らしいからくれぐれも失礼の無いようになっ!!お次はその隣の茶色い髪の可愛い子ちゃんはルネ・フォン・リベラールさんだ!彼女も名家のご令嬢だが、二人は幼馴染同士でヴィトゥルブさんのお世話をする為にリベラールさんが望んで仕えてたらしい。まぁ^^このクラスの中では同等のクラスメイトになる訳だがな♪・・・じゃあヴィトゥルブさんの方から簡単な自己紹介をしてくれるかな?」
指名されたメルは一度呼吸を整えると溢れんばかりのエレガントな上品さを振りまきながら、
「皆様、お初にお目にかかります。わたくしはメルシオーネ・ロゼ・ヴィトゥルブと申します。ペコリ(o_ _)o))・・・この度は縁あって皆様の学び舎である当校への留学が叶いました。数か月の間ではございますが、何卒宜しくお願い致します。m(__)m」
制服のスカートのふちを摘まんで優雅にカーテシーを決めるメル。
その姿は貴族に相応しい振る舞いであった。
尤もメルは貴族どころか正真正銘の王族なのだが。。。
続いてルネが少し緊張気味ではあるが、同じくカーテシーを披露しながら、
「みなさんはじめましてぇ。ペコリ(o_ _)o))ええと...私はルネ・フォン・リベラールと申します。メル様のお目付け役として付いて参りました。どうぞよろしくお願いします。(o*。_。)oペコッ」
無難に挨拶をした。
その後は牧村先生により、二人について以下の説明が補足事項として語られた。
◦実は違うクラスではあるが、圭子が父親の仕事の関係で西ドイツに居た頃に知り合い、更には圭子を通して雄二とも仲良くなった。
◦そしてその雄二に窮地を救われた事がきっかけで二人とも同時に心を奪われ、圭子の協力もあり強引に雄二の許へ押しかけ、双方の親の合意を得て既に同居している。
◦ついでにという事で今回の留学に相成った。
◦更に更に詩織達の許可を取って同じ嫁という立場を得て嫁同志として非常に仲が良い事。
◦従って…メルとルネも詩織達同様に既に雄二の嫁なので接触絶対不可である事。
◦今後の二人のフォロー&サポートは既に顔見知りであるこのクラスの雄二、恵、まどかそして圭子、良江及び生徒会メンバーで行なう事。
このようにかなり無理があり、普通に考えればツッコミ処満載の非常識極まり無い事ばかりなのであるが、如何せんココは雄二にとって“ご都合主義”の世界なのだ。
だから説明をした牧村先生もそれを耳にした生徒達も驚くほどすんなりと何の疑いも無く、これらを受け入れている。
一頻り挨拶と説明も終わり、メルとルネもA組に迎え入れられた訳だが、全校生徒は現在 月末に開催予定である○高祭の準備に追われて大わらわなのだ。
このイベントが終わるまでは通常の授業は無いのでメルとルネもいきなり難解な授業を受けなくて済むので馴染むには丁度よかったのかもしれない。
雄二を挟む様に席をあてがわれたメルとルネも更に彼女らのサポート要員として近くの席に替えられた恵とまどかから○高祭についての詳細を説明されている。
尚、メルとルネが普通に日本語を話している事に対しても誰も何も異を唱えない。
これも雄二仕様か?!あり得ない事ばかり普通に起きているのだ。
メルとルネの噂は瞬く間に全校を駆け抜けた。
休み時間の度に同学年はおろか上級生達も挙って見物しにやって来ていた。
そりゃそうだ!特にメルは本校の№1美少女、詩織様に匹敵するほどの美しさなのだから。
一方ルネの方もその保護欲を誘う愛らしいキャラで忽ちアイドル的マスコットとしての地位を不動のものにしていた。
今まで受験が全ての灰色の学校生活一辺倒だった彼等にとってこの二人の登場はあまりにも鮮烈であまりにも衝撃的な出来事だったと言えよう。
おまけに当時の日本は外人コンプレックス?みたいな風潮が顕著だった。
彼女らが来訪した当初は多くの生徒が遠巻きに眺めるだけであった。
とりわけこの高校の男子生徒は女子と言うだけでも臆してしまう者が多かった。
そんな男子生徒達に二人共少々戸惑いを見せた。
だがしかし、そこは雄二と他の嫁らがしっかりサポートする。
既に嫁仲間であり、気心が知れた仲である恵とまどかが事ある毎に彼女らのフォローをしてくれる。
留学初日の放課後も圭子と良江を加えた同級生四人娘が校内の案内をしてくれた。
更には詩織ら生徒会も全力でバックアップしていき、メルとルネの学生生活が滞りなく送れるようにしてくれている。
そのかいあって二人共、充実した毎日を過ごせるようになって行くのである。
尤も彼女らにとって一番の喜びは何と言っても今まで実際体感する事が叶わなかった雄二と同じ空間で同じ学生生活が送れているという事実。それが最大の喜びであるのは間違いない。
メルもルネも『異世界ズゾロ』から地球へやってきてかなり経っていた。
その間、最愛の旦那様である雄二と同じ屋根の下で暮らし始め、ローテーションはあるもののそれぞれ愛し合い、それぞれ二人だけの時を過ごせるようにはなれた。
されど雄二も所詮はまだ学生の身。普段は学校へ通わねばならない。
他の同居している嫁のうち、学生組以外であるアリー、文乃、純、菜摘はいずれも年上であり社会人なのだ。(アリーは生粋の女神様なのだが。)
ましてやココとは違う世界の王侯貴族であった二人は家庭教師による学びはあったが学校などという所に通った経験など一度も無かったのだ。
だから雄二ら学生組と同年代であるにもかかわらず、同じく家事手伝いしかできていなかったメルとルネにとって雄二と同じ学校に通えると言うイベントはとんでもなく喜ばしいご褒美イベントなのであったのだ。
このように喜びが前面に出ている事により、ただでさえ超絶美少女である二人の魅力が一段と引き上げられてくる訳で。
事前に‘雄二の嫁’宣言してるのをものともせず、挑んでくる勇者が幾人か現れるのである。
結果はもちろん、
「ぁ...あのぉ…ごめんなさい。。。せっかくご好意をお寄せ頂いたのは嬉しいのですが、私達は詩織さん達と同様に既にユージ様に身も心もその全てを捧げており、深く強い絆で固く結ばれておりますっ☆彡本当に申し訳ございません。」
となる。
同時にここでメルは無意識ではあるだろうが、『権能』を行使してしまう。
美しすぎる翡翠の眼差しで見つめながら【マインドコントロール】を発現させ、相手が何のわだかまりも無く諦めてくれるよう。そして自らを含む雄二の嫁らに絶対邪な気持ちを持たぬように刻み込むのだった。
無論、雄二もこの事象は把握済みである。
(フム、メル達もしーちゃん同様に力の発現が見られるようなって来たんやな^^)
〔自覚は無いようですし、マスターにより制限されておりますのでさほど問題はないかと♪〕
(そやねww)
恐らくだが今後も雄二と深く絆を刻んだ女性はこのように『権能』を発現するだろう。
それが解りきっている雄二は嫁ら全員が普段通りごく当たり前の生活が出来るように彼女らの『権能』にはストッパー並びにリミッターを設けてある。
ついこの間、異世界ダンジョン踏破の時は秀美のリミッターを限定的に緩くしたが。
閑話休題───
繰返しになるが周りの強力なサポートもあり、メルとルネは充実した高校生活を楽しんでいる。
クラスメイトとも気兼ねなく話せるようになり、非常に華やいだ良い雰囲気になって行くのであった。
やはり普段の重苦しい受験のための詰め込み授業が無いので、クラスメイト達もいつもの切羽詰まった空気は存在せず、『○高祭』に向けて割とリラックスした雰囲気だったのも良かったのだろう。
一度馴染んでしまえばそこはお年頃の女生徒たちである。
進学校とは言え恋愛話とかその他諸々にも興味津々。少女達の方が好奇心旺盛であり早熟なのだ!
かなりキワドイ質問も飛んでくる。
恵やまどかとて普段は親と一緒に暮らしているし、雄二とはキスは経験済みだが未だ正式には結ばれてはいない。
一刻も早く雄二に捧げて正式に‟嫁”として落ち着きたい反面、怖い気持ちもまだある。
でもその手の話は嫌いではない。いやむしろ大好物なのだ。
「後学の為」とか言い訳しながらかなり切り込んだ話も尋ねて来る。
やれ雄二のアレはどんななのか?だとか、アレがアレにアレする時どうなるのか?とか。
質問される方のメル&ルネも根が素直なので正直に全てぶっちゃけてしまうので尚更質が悪い。
いちおう周囲を気にしてヒソヒソ話にはなってはいるが、雄二は尽く声を拾ってしまうのでかなり居心地がよろしくない。
(メルぅ?;;そない細かいとこまで教えんかて・・・Σ( ̄ロ ̄lll))
あまりにも赤裸々に自分のプライベートな部分が白日のうちに晒されて行くので雄二のHPはかなりのダメージを被るのだが、クラスメイトとの親睦を深めるためには仕方のない事だと耐え忍ぶほかなかった。
それでもメルとルネにとってはこのクラスメイトとのおしゃべりはとても貴重で有意義なものであるのは間違いなかった。
特に異文化交流ともいうべき、様々な話が訊けてとても新鮮な気持ちになるのだ。
昨年、中学での文化祭の時も雄二の計らいによって来客としてそれなりに楽しむことはできた。
そして今回は外からではなく、実際に取り組む側としての体験ができるのだ。
こんな体験はなかなか味わえるものでは無い。
二人とも皆で協力して作り上げてゆく過程の話や出し物や模擬店などの話を訊くうちにワクワク感が止まらず、一緒に参加できる機会を与えてくれた雄二に一層敬愛の念を抱くのであった。
その夜はいつもにも増して雄二にサービス…というか甘えてきたのはご愛敬だ。
ちなみに雄二らA組は雄二の提案でクレープ&ワッフルの模擬店を出す事になっている。
21世紀ならともかく、1970年代にはクレープもワッフルもまだ一般的に知られていない。
受け入れられるのか?と疑問視する声もあったが、雄二特製のそれらを食べた事があり、クラス委員として文化祭に於いても中心的役割を担っている恵とまどかが太鼓判を押しているのでそのままその案が通ったのだ。
しかもタイミングの良い事に?ルネが留学生としてこの時期に入って来たのだ。
ルネは雄二の加護により達人レベルな料理の腕前を身に着けており、クレープだろうがワッフルだろうが朝飯前だろう。
そのルネにより指導されれば裏方は問題ないだろう。
接客の方もメルを中心に接客マナーを習得すれば問題ないだろう。
雄二は調理道具や熱源、材料の調達を自ら買って出た。
代わりに設営や装飾、スタッフの選定及び教育などは恵とまどかそしてルネ、メルに丸投げした。
本当なら全てを雄二がまかなっても良いのだが、
(そんなんオモロないやろw)という事らしい。
名目上は生徒会副会長として「全般の業務があるから」という理由にしている。
───と言う訳で雄二はクラスとしての模擬店の準備は他の者に任せて、自身は生徒会としての出し物であるガールズバンドのプロデュースに注力するのであった。
海外ではちょうど一年前の1975年に『ザ・ラ○ナウェイズ』が結成されるが、日本ではまだまだ男のみがほとんどだった時代だ。
プ○プリとか少○ナイフ、S◦OW-YAも登場に十年前後の歳月を要した時代なのだ。
21世紀現在ならガールズバンドはありふれたものなのだが、70年代の日本は女性蔑視の風潮が抜けきっていない時代だったのである。ようやくウーマンリブ運動が出始めたぐらいだったのだ。
そんな中にあって雄二の試みは正に斬新且つ挑戦的ともいえる行動だったのだ。
最初のうちは戸惑いや抵抗があった瞳や柚姫も雄二にのせられてやり始めたのだが、思いの外 楽器をこなせる事に驚きつつも気をよくして今ではノリノリでギグってらっしゃっている。
詩織、圭子、良江といった雄二と既に身も心も深く結ばれ、もはや人間の楔から外れている嫁らも何だかんだで楽しそうである。
詩織はエレキギターとヴォーカル、圭子はベースとコーラス、良江はキーボード、瞳はドラムス、柚姫はエレキギターといった基本構成になっている。
バンドメンバー全員が雄二により、一時的ではあるがプロ級のギグテクを付与されているのだから思い通りに演奏出来るわけなのだ。
“拘りの男”=雄二は本番ステージ用衣装も用意している。
こんな所も呆れる程マメなのである。
全体の設営、飾りつけなども生徒会が中心になって調えられていく。
当日までの数日間は学校の許可を取って夜遅くまで作業は続いたのだが、ここでも雄二はチートぶりをいかんなく発揮するのである。
防犯上の理由から夜の作業は男子だけに任されるのだが、男子生徒の多くはガリ勉もやしっ子なのであまり役に立たないのだ。
必然的に雄二が大部分の作業をこなさなければならなくなるから仕方ない事だが。
正門に設置されたどデカイアーチ状の看板も雄二作だったりする。
元々の絵心+チートで芸術家顔負けの逸品に仕上げてしまった。
完成したそれを見た菜摘は頭を抱えていたのはご愛嬌。
一方、雄二に丸投げされた感があるA組の模擬店準備は、
わずか数日の間ですっかりクラスの一員として馴染んだルネそしてメル、更に雄二の加護により鮮やかなリーダーシップを発揮している恵とまどかの活躍で一致団結して滞りなく準備を終えるのだった。
このころになるとメル&ルネは詩織らと同様、完全に雄二の嫁として認識されるようになっていた。
{しつこいだろうが、ご都合主義万z…以下略}
一年に一度の大イベントなのだから何だかんだで学校全体がテンションアゲアゲモード突入である。
こうして迎えた残暑厳しい8月末日。遂に雄二達が通う高校の年間で最大のイベントである“○高祭”が開催される日がやって来た。
開催期間は3日間。3日間のうち1日は体育祭。残りの2日はいわゆる文化祭だ。
──で、何故か初日は体育祭だったのである。
暦の上では初秋にさしかかってはいるのだが、温度計を見ると30℃を優に超えている。
特にこの地域は蒸し暑い事で有名なのだっ!
そんな夏本番になる頃、夏季休暇前から行進や応援の練習はちょくちょく行なってはいた。
しかし競技はほぼぶっつけ本番で行なわれた。
表向きは生徒の自主性に任せるという事らしいが、実際は「怪我をしない程度に適当にやりなさい。」という事らしい。
あくまでも進学校なので怪我などして受験に支障が出ては学校側としても色々不味いのだ。
なので特に競技練習はしなくても問題ない様だ。
身体を解すように競技前に全体で準備体操はきっちりあったが。
『熱中症』などという言葉もまだほとんど聞かれない時代である。
陽射しもまだまだ夏なのだ。そんな中で行なわれる訳なので体調を最優先するのだ。
だが、やはりいざ競技に入るとみんな結構真剣に取り組んでいた。
特に団体競技や応援合戦はかなりの盛り上がりを見せた。
参考までに...雄二は生徒会副会長としての裏方仕事を熟しながらも分団対抗選手リレーや棒倒し綱引きに駆り出された。
もちろん手は抜いた・・・抜いたはずなのだが、やはり無双してしまう。
何故なら周囲もそれ以上に手を抜いているのだ。
すると女子が大いに盛り上がる。
嫁とその周りは殊の外凄まじい応援を送ってくる。
雄二もそれを意識してしまい...
結局は目立ってしまうのである。
そして全競技が終了し、閉会式、表彰式を経て一般生徒は解散して帰路に就くのだが、生徒会役員はまだ帰る訳には行かない。
後片付けとしてテントや機材、道具の撤収作業。
ゴミ拾い等。。。他人にやらせるより自分でやった方が早いのでついついやってしまうのだ。
おかげで競技以上に汗をかく。
午後5時になってもまだムンムンムシムシする。
「あっつぅ~!!;;まったく…何が悲しゅーてこないクッソ暑い中、体育祭なんかせにゃーならんのかねぇ(-_-;)」
雄二 魂のボヤキが夕暮れのグラウンドに空しく木霊する。
次回は文化祭本番です^^




