本編 第043話 ダンジョン攻略。そして何故か魔王討伐?w
あぢぃ~~;;;
ゾンビ共を蹴散らして兄妹がやって来たのは62階層。
ここで遭遇したのはスケルトンの群れだった。
「わぁーっ!ホントにそのまんま骸骨だねぇ!?お兄ちゃん」
秀美は臆することなく、それどころか嬉々とした表情で前方を見つめている。
そんな妹様を見て頭を抱えたくなる雄二ではあったが、
(ま...しゃーないか;;)とばかりに考える事を放棄した。
「スケルトンは骨だけバラバラにしてもくっついて元に戻るだけやから、再生でけんように粉々に粉砕するのがええよっ!」
とアドバイスしながら雄二は秀美に新たな武器を与える。
秀美は今まで使っていたソードを指にはめている指輪に付与された【アイテムボックス】に仕舞い込んでそれを受け取る。
「えっ?ヌンチャクぅ?」
そうなのだっ!雄二が秀美に手渡したのは黒いプラスチック製の『ヌンチャク』だったのだ!
「これ、オモチャじゃんっ!」とでも言いたそうな目つきで兄を見る妹。
「只のヌンチャクちゃうで!お前の身体に当たっても全然痛くないけど、お前が敵だと認識する相手やとチョット触れただけでももの凄い衝撃波が伝わる様になっとる。おまけにこういうアンデッド・モンスター共の最大の脅威、『光属性』が付与されとるわ!創っといてなんやけどドえらいエグいでぇ⁉」
つまりはこのヌンチャクには雄二がたまに使う【ホーリー・ライト】が付与されており、相手の強さに合わせて自動的に威力が調整されると言うアンデッド達にとってはとんでもない最恐兵器なのである。
「お前が光をイメージすれば発動するからっw」
と一言追加説明する。
「へぇ~っ!凄いねェ♪」───秀美様の眼がキラーンっ!!
(うん...またしょーもない事思いついたようやな(;・∀・))
雄二がそう感じた瞬間、数歩前に出ていた秀美はわらわらウヨウヨいるスケルトンらに向かってヌンチャクの片方を差し向ける。
刹那、周囲を覆いつくさんばかりの真白き閃光が放たれる。
「ちょっ!おまっ!!」
5秒ぐらいで光が収まり視界が回復する。
二人の面前にあれ程うじゃうじゃいたスケルトンが1体残らず消え失せていた。
「はぁ~・・・・今度は何をイメージしたんや?」
「ん?あのねぇ^^熱光線じゃないけど『デ○ルビーム』ぅ?ww」
「おいおい・・・(*_*;」
やはり腹違いとは言え兄妹である。兄に勝るとも劣らないパクリスキルである。
さすがにヌンチャクを構えて「アチョーッ!」とか叫びはしなかったが。
その後もこの階層を進む度にひっきりなしに湧いてくるスケルトン共をヌンチャクで粉砕、もしくは【ホーリー・ライト】の照射により殲滅して行く。
雄二の与えたヌンチャクによって秀美は特に何の問題も無く、無双していって下層への扉に辿り着く。
扉を開ける前に雄二は、
「秀美、恐らく次の階層からは空中に舞う奴らが相手になるからそのつもりでっ!」
と秀美に注意を促す。
階段を下りて二人がやって来た63階層にいたのはスペクター、レイスといった浮遊している霊体?だった。
半透明な霞がかったモノが無数に漂っている。
空中ばかりではない。目線を下げると、やはりはっきりした形をしている訳ではないが、何かがいる。
こちらも半透明で靄みたいになっている。こちらもかなりの数だ。
「ファントムやね。」
これらは全て実体を伴わない為、物理攻撃は通用しない。
物理攻撃はなので、即ち...
「聖なる光よっ!闇の者達を昇華したまえぇ~♪」
などという些かイタイ、というか…まだ小学六年生なのに“中二病的”な台詞を宣いながら秀美は【ホーリー・ライト】を乱発していく。
ついでに腰に手を添えてキメポーズまで披露していた。
この調子で次の64階層も踏破して行く。
尚、64階層では今まで出てきたアンデッド達が“オールスター夢の競演”状態で総出演だった。
いくらザコなアンデッド共が束になって襲って来ようとも、所詮は闇!闇は神の聖なる光に抗う事など不可能である。
1体残らず秀美により葬られていった。
さすがにここまで来ると秀美も飽きてきた様で、
「確かに光に弱いのはわかるけどさぁ・・・めんどくさくなっちゃったよぉ;;お兄ちゃん」
「んん?ほんなら次の65階層は恐らくボス部屋や思うから、俺が対処する。お前は休んどけばええわ^^んで65階層をクリアしたら今日はそこまでにしとこか?」
「わかったぁ^^じゃあ次はお兄ちゃんにまかせるよ♪」
兄妹はこんな会話をしながら65階層へと続く扉を開け、階段を降りて行った。
65階層は今までの61~64階層までよりも一層どんよりとしており、禍々しい瘴気さえ感じられた。
「ふむ…ボスもそれらしい雰囲気のヤッチャなww」
今までは数で押して来るとでも言うような塩梅だったのだが、この65階層はどうやらそうではないようだ。
魔力反応はただ一つあるのみ。ただし、そいつはこのダンジョンで出会ったモンスターの中では最強クラスであった。
先程の会話通り、今回は雄二が前に出る。秀美は後方で高みの見物としゃれこんでいる。
秀美の手には何故かソフトクリーム。
「だってぇ~食べたかったんだもん♫」
尚、秀美は【結界】で護られている為、瘴気に触れる事も無いし空気も清潔に保たれている。
雄二の視線のその先にいたのは黒い独特のオーラを纏ったアンデッドのボスに相応しい存在=リッチがいた。
しかもコイツは只のリッチでは無い。リッチの王たる存在、リッチ・ロードである。
風貌は前の階層で見かけたスケルトンと同じような髑髏なのだが、ローブを羽織っている。
その堂々たる姿はいかにも王の風格を醸し出している。
『前・世界』でファンタジー創作物によりその存在は知っていたが、実際に目の当たりにした雄二は、
「ホンマモンやっ!!wうわぁ~!ホンマにおるんやなぁ♪」
テンション爆上がり中であった。
普通の人間であればこんな化け物に遭遇しただけで怯えて縮み上がってしまっただろう。
だが、、、残念な事にこのリッチ・ロードが遭遇したのは普通の人間ではない。それどころかそもそも人間では無いのだ。
それがリッチ・ロードにとって最悪の不幸だったとは思いも寄らなかっただろう。
興奮冷めやらぬ雄二はこのリッチ・ロードがどんな攻撃を仕掛けて来るのか、様子を見る事にした。
とは言え、強力な【結界】を施してある。
ワクワクしながら雄二が相手の出方を見ていると、
「・・・・・・・・・」
ボソボソと何か喋ってるようだが、何を言ってるのか聞き取れない。
聞き取れなかったが、どうやら魔法の詠唱でも行なったのだろう。
その証拠に辺り一面至る所に数多くの魔方陣が現れている。
「ん?…どうやら召喚魔法で下っ端をぎょーさん呼ぶみたいやな?wはぁ~、めんどくさっ!」
もうあのアンデッド大集合にはウンザリな雄二はとっとと決着をつける事にした。
ちなみに雄二の後ろに控えている秀美様は雄二の用意した椅子に腰掛けながら丁度ソフトクリームを食べ終えて指を舐めていた。
さておき───
魔方陣が一斉に光だし、そこからゾンビ、スケルトン、スペクター、ファントムなどがそこから這い出て…は来なかった。
雄二の放った本家本元【ホーリー・ライト】により、リッチ・ロードの魔法は無効化されたのだ。
一瞬にして全ての魔方陣が霧散してしまった。
それどころかリッチ・ロード自体も消え失せていた。文字通り“瞬殺”である。
「秀美ぃ、終わったでぇ!」
雄二が振り返り様、秀美に告げる。
「へ?・・・・もぉ?」
どうやら秀美様はソフトクリームを食べる事に夢中のあまり、雄二がリッチ・ロードを瞬殺した場面など見てはいなかったようだ。
「・・・・まぁ、ええけど^^;;ほな 今日はここまでやなw」
苦笑いは浮かべるものの、取るに足らないとばかりに雄二は【異空間部屋】を開け、本日の予定終了を宣言するのであった。
{体感的な}翌日、朝食を摂り準備を整えた雄二と秀美は【異空間部屋】から抜け出してダンジョン攻略を再開する。
66階層に下りてきた二人が出くわしたのは、
「ゴーレムかっ!」
そう、この66階層を我が物顔で闊歩していたのはこれもお馴染み『ゴーレム』さん達だ。
まずは土でできたゴーレム数体がこちらに向かってきた。
大きさは4~5㍍ぐらいか。
秀美は昨日メインで使ったヌンチャクではなく、再びソードを構えた。
このゴーレム達は大きな図体の割には動きが素早い。
しかも打撃を加えて砕いても、業火で焼かれても、みるみるうちに再生してしまう。
今回は簡単には行かないようで秀美もやや攻めあぐねている。
アンデッドではないのでヌンチャクの【ホーリー・ライト】も効果が無いらしい。
しかし、ここでも雄二の『ご都合主義』が炸裂する。
何と…この地球から遠く離れた『ズゾロ』のまだ誰も足を踏み入れていないダンジョンのモンスターだと言うのに、地球の21世紀ファンタジー創作物に出て来るゴーレム同様、額に刻まれた〖emeth〗の英文字。
(『ご都合主義』すげっ!!)
〔それがマスターですから♪〕
久々に脳内に響く【アカシック・レコード】の声。
雄二は思わず手で顔を覆い天を仰いだ。
「お、お兄ちゃん?」
「あー、すまん;;あまりにもパターン過ぎてなw・・・・秀美っ!奴らのおでこに何か書いてあるのわかるか?」
「ええと・・・うんっ!何か書いてあるね!emethだっけ?・・・あっ!!そっかぁ♪」
秀美は雄二の加護により今では学校一の天才少女と言われており、当時の小学生ながら英文字なども普通に読めるし、言語理解もできる。更には雄二が持ち込んだ21世紀ファンタジーRPGをやり込んでいた為、雄二の言わんとする事をすぐ理解したのだ。
(あの頃は算数が壊滅的やったのになぁ・・・・・(感慨深げ))
雄二が過去の秀美を思い出して目頭を熱くしている間に再生できずに倒され、土へと次々に還されて行くゴーレムの姿があった。
奥の方へ進んでいく度に違う材質のゴーレムが進行を阻んだ。
木材でできたモノ、石灰岩でできたモノ、中には鋼や銅、真鍮製もいた。
いずれのゴーレムも同様に額の“emeth”を“meth”に変える事で殲滅できた。
秀美が的確に頭文字の“e”のみを撃ち抜いて潰しまくったのだ。
67階層~69階層にはそれぞれ『ガーゴイル』や『マンティコア』、『グリフォン』と言ったモンスターが待ち構えていた。
このクラスになると力、スピードも格段に上がっており、おまけに強力な魔法攻撃も持っている。
「な、なんか変な合体モンスターが増えてきたヨ;;お兄ちゃん」
その外観からか、秀美が少し怯むが、
「ん?お前なら楽勝やろwwそれに向こうがどないな攻撃をして来ようが、こっちには【絶対防御結界】があるしな^^」
雄二はまったく心配していない様子。
それもそのはず。雄二の加護によるリミッター緩和プラス今までこのダンジョンで繰り広げられてきた戦闘の経験値が化学反応を起こし、秀美の内部はとんでもない事になっているのだった。
大好きなお兄ちゃんが太鼓判を押してくれているんだ、と言う安心感で秀美は擡げかけていた不安を一掃する。
事実、今の秀美はそこら辺にいるヘタな神より強いのだ。
{多分に雄二の妹に対する超過保護なのが主な原因だが。}
兄の言葉通り、秀美は自分自身がビックリするほどの強さを発揮し、あっという間に70階層まで到達した。
70階層えの扉を開けると───
そこは広々とした海・空・大地の世界だった。
「え・・・・えええぇぇぇ!!!なんだこれぇ?!!」
これにはさすがの秀美も腰を抜かしそうなぐらい驚いている。
続けて秀美は、
「ねぇ?お兄ちゃん?これってどーなってるのぉ?」
と雄二に尋ねて来る。
見上げればどこまでも高い空。見渡せばどこまでも続く海と大地。
「俺かて【空間拡張】的な力を時々使うやろ?あれと似たようなもんやろっ!」
「あーっ!そーいえばそっかぁ^^」
兄妹はこんなほのぼのとした会話をしているが、実は既にココの主からの攻撃を受けていたりする。
この階層に居たのは3体の化け物、もはや怪獣と言って過言ではないレベルの代物である。
空から強酸?あるいは毒液を照射しているどでかい鳥のようなモノが。
そして猪突猛進で二人に近づいてくる大きな山のような象?水牛のような角の生えた巨大なモノが。
はたまた海では大波を起こしながらやはりこちらへ向かって来る小島?ぐらい大きなウミヘビのようなモノ。
「わわわ~っ!おっきい!!!」
秀美はまたもや感嘆の声を上げる。
「これも『ご都合主義』か?ww空におるのは『ジズ』。んでこっちに走って来とんのは『ベヒモス』。海で暴れとんのが『レヴィアタン』やな」
まさかここにきて三大幻獣の揃い踏みである。
いずれも大きさがとんでもなくデカい。
ジズは真っ赤な鶏冠と角が2本。以前目撃したフェニックスより遥かに大きい。
その翼は広げると数百㍍はあるだろう。しきりに毒液を吐いている。
地響きを立てて猛然と突進してくるベヒモスの大きさも半端ない。
外観的には象もしくはカバのような図体である。頭の上の大きい二つの角の間にバチバチ高圧電流を生じさせている。
「映画のゴ○ラやガ○ラより遥かに大きいねっ!」
秀美がベヒモスの感想を漏らしている。
そして海から迫ってくるレヴィアタン。全長は恐らく㎞に及ぶだろう。
頭にはやはり角が生えているし、大きく開けた口からは牙も見える。全身を鱗で覆われていて、ドラゴンではなく東洋の龍を彷彿させる風貌だ。
「でもこんなおっきいのを相手にするのは・・・ちょっとねぇ;;」
バトルジャンキー気味だった秀美には珍しくこの3体を相手にするのはめんどくさいらしい。
「まぁ^^お前が闘うには大き過ぎるわなww」
という事で...襲いかかってくる3体の超巨大生物は雄二により1秒後には消失されていた。
「・・・にしても最終兵器的なモンが出てきよったッちゅうことはこのダンジョンも底が近いっちゅー事やね♪」
雄二は今回、特には【先見】の類いはほぼ使っていない。
使わなくとも肌でそう感じたようだ。
実際、このダンジョンの最下層つまりコアのある部屋は72階層だったりする。
“72”・・・偶々なのか定かではないが、奇しくもソロモンが使役したと言われる悪魔の数が72である。
それはさておき。。。
雄二が3大幻獣なる化け物を消し去った瞬間、それまであった果てしなく蒼い空も、エメラルドに光り輝いていた海も、見渡す限りの地平線も全て同時に霧散して仄暗い岩でできた小部屋に成り果てていた。
「っ!あれまぁww」
秀美が緊張感を全く感じさせない声を上げる。
この小部屋は殺風景で下層へ下りる階段があるのみであった。
二人は頷き合うとサッサと降りて行く。
階段を降り切ると雄二はそこにあったセンサーらしき物に手を翳してみる。
何が基準なのかわからないが、「ゴゴゴゴォーッ」重々しい音が響き自動的に扉が開いた。
入る前に秀美にはソードを準備させておく。
そんな二人をまず出迎えたのはサンドワーム(某国のサイバーテロ組織では無い)という大きな口を開きっぱなしにした野太い怪物だった。
しかしこの層、71階層はそんなサンドワームさえ可愛く思えるようなとんでもない所だった。
先の70階層同様に拡張されているらしく、空も山もある。
そして何よりもココはドラゴン達の巣窟だったのだ。
遠くに見える火山?らしき所にはファンタジーそのままの巨大なドラゴン達が無数空を舞っていたり、佇んでいたりしている。
中にはかなり距離があるにもかかわらず、明らかに異様な大きさをしたドラゴンがこちらを見ている。
そいつだけは他の周りのドラゴンとは明らかに違う。
人の上半身のような部分もあるのだ。
数体のサンドワーム更にはヒュドラまで襲ってきた。
空からはワイバーンが特攻をかけて来る。
ズゾロの霊峰にいるドラゴンよりかなり好戦的である。
「ゲームと同じだぁ♪」
初めて見る本物のドラゴンにオメメキラキラ、テンション爆上がりの秀美さんはソードを担いで意気揚々と駆けて行った。
(おいおい・・・)
そうこうしてるうちに奥の方から若いドラゴンが挙って参戦してきた。
凄まじいプレスや鉤爪で攻撃して来る。
無論、秀美も雄二も【絶対防御結界】で全然ノーダメージだ。
みるみるとあちらこちらにドラゴンやワームらの亡骸の山が出来て行った。
その様子を窺っていた上半身が人間であるドラゴンの親玉=『テュポーン』ともう1体、普通の若いドラゴンの数倍はある真っ赤なドラゴン=『ヴリトラ』が一定の距離まで近づいてきた。
ヴリトラでさえ100㍍を超えている。
テュポーンに至っては隣のヴリトラがハツカネズミに見えてしまう程である。
二人を特に雄二を凝視しながら口を開いた。
「うぬは何者だ?」
これも『ご都合主義』らしく意思疎通ができるようだ。
「ん?只の人間のつもりやけど?」
雄二が答えるが早く、不意にヴリトラが突っ込んで来た。
だが、哀れヴリトラは秀美が放った業火により炭も残らず蒸発した。
(今のイメージやと『波○砲』?ww)
「フフフフッ・・・神をも食いちぎる我であってもうぬらには勝てそうもないな。。。」
そう宣うと自らの体内に向けエネルギーを爆散させた。
途端に周囲が溶け落ちる程の熱風と衝撃波が放たれる。
「な、なんかあっけなく自爆しちゃったねぇ!お兄ちゃん」
「めんどくさかったから丁度よかったわ(⌒∇⌒)」
テュポーンが自爆した事で先程と同様、それまで存在していた空、山、大地が消えて無くなり、下階層へ下りる階段があるのみの洞窟へと変わっていた。
「いよいよこれで終わりっぽいな!w」
「やったー!\(^_^)/」
雄二は飛びついてくる秀美を受け止めながらも器用に階段を下る。
扉を開け、中へ入ると───
そこはこれまで踏破してきた階層とは全く異質の場所だった。
白亜の壁に囲まれ、いかにも人工的に創造された空間がそこに存在した。
大ホールのような広い部屋。
中央には超巨大な摩天楼を思わせるような半透明なタワーが。
そのほぼ中央部分にはこれまた大きなクリスタルキューブが。
そしてクリスタルキューブの中には眩いばかりに光を放っている黄金の『コア』が納められていた。
半透明タワーは天井と床を連結しているようにも見え、その半径だけでも200㍍はあるだろうか?
タワーの四方を囲む様に柱が設置されており、柱と柱の間には中央のタワーを護る様に電磁波?あるいは放電されている状態だ。
そしてこのタワーの正面、扉側に寄った位置で何やら作業をしている者を雄二らは確認する。
「こいつがダンジョンマスターかっ!」
雄二が独り言のように漏らした言葉にビクッとして即座にその者は振り返り、侵入者を見やる。
「っ!!お前ら、どうやってここへ…というかどうやってこのしまへ上陸してきた?」
向こうも凄く驚いているが、雄二と秀美の方もビックリである。
何故ならそこに居たのは人間…しかも見るからに日本人だったのだ。
すぐさま魔法による【鑑定】らしきものが実行されたようだ。
しかし、たかが魔力では雄二らの正体がわかるはずもない。
逆に雄二はこの日本人を【アナライズ】してみる。
名前を“堂神薗亮造”といい、こちらの世界=ズゾロに400年前に突然 召喚されたらしい。
しかもあろうことか、21世紀の日本からだ。
召喚したのが400年前に世界征服を企んで失敗した魔王だった。
魔王は己の全ての能力と不老不死、そして命を引き換えに召喚したこの男に遺志を託したらしい。
元々人間嫌いであり、前科数犯だった堂神薗は自分の人生に嫌気がさしていたのもあり、その願いに乗った。
そして400年前から今日まで自分が魔王となり、この世界を蹂躙せんがために魔王軍として働く魔物の育成を行なっていた。・・・・という事らしい。
どうやらこのダンジョンはダンジョンと言うよりは魔物達を育てるための培養養育施設だったようだ。
ところが、自分の育ててきた魔物達が次々に滅せられていき、魔力のやり取りを行なってきたコアが異常を来たした。
それを調べようと作業をしている矢先、雄二と秀美がこの『コアルーム』へ侵入してきた・・・と。
秀美に【テレパシー】でそのあらましを伝えると、
「じゃあ、遠慮は要らないよね?お兄ちゃん♪」
内に秘めた憤怒の炎が伝わって来た雄二はチビりそうになりながら、
「あ…はいっ!」
と返してしまう。
そして幾ばくか経過した頃。
一つの名も無き島がこのズゾロ世界から誰も気づかないまま消えて行った。
このズゾロ世界は人知れず、魔王の魔の手から結果的には護られた事になる。
次回はたぶん学校生活と新たなイベント発生?




