本編 第002話 高校入学前の春休みあれこれ その二 ~とある母子の再会~
毎度どぉも♪じいじですw
主人公はマザコンではないはずww
早速、雄二は功に連絡を取ってもらい、先方の都合を確認する事にした。
「すぐにでも会いたいから明日にでもおいでっ!」
という返事だったので功と京子に許可を取り、嫁ら全員にも一言 明日にでも会いに行く旨を伝える。
翌日早朝、雄二は新幹線の中にいた。
『権能』を行使すればピンポイントで場所も特定できるし、直接転移して会いに行くのも容易い事だろう。
しかし毎度毎度それでは味気ないし、つまらない。それに・・・
(たまにはじっくり風景を楽しみながら列車に乗るのも悪くないかも。)
てなわけで、雄二は今回、普通に既存の交通手段を利用して会いに行く事にした。
駅まで父親に車で送ってもらい、京都まで新幹線、そして京都から福知山まで在来線で向かう一人旅だ。
手荷物はいつものように【異空間収納】へ入れてるので手ぶらである。
目的地に近づいたら取り出せばいいだろう。あまり騒がれるのも良くない。
(今更やけどなww)
京都駅までは新幹線で1時間とかからず到着した。
だが、京都駅から福知山駅までが結構かかる。
福知山が地理的に兵庫県との県境なのだ。
特急でも1時間半くらい?鈍行に乗った暁には2時間以上かかるのだ。
運よく?そんなに待たない時刻の特急があるみたいだ。
雄二の朧げな前の記憶では盆地にある田舎町というイメージだった。
2歳時のほんの幾日かを過ごした場所である。
【アカシック・レコード】などの『権能』を行使すればそれらも鮮明になるのだろうが、やはり敢えて使わない雄二なのだ。
列車の窓から見えるのは山や田畑がほとんど。
「うわぁ~!ホンマにド田舎やんっww」
ポツリと独り言を漏らす。
一応この列車に乗る前に福知山駅への到着時刻を自宅にいる嫁達に伝え、それを功に教え、先方に連絡してもらってはいる。
(やっぱ携帯とか無ぇと不便やわぁ;;;)
雄二がこの時代にタイムリープして来て早くも1年と4カ月経つのだが、未だに通信デバイスの無い事を嘆く雄二。
すると、
「ピンポンパンポン~♪ 長らくの御乗車誠に有難うございます。この列車はまもなく福知山に到着いたします。お降りの際はお忘れ物のないようお願い致します。まもなく福知山到着です。」
とアナウンスが入る。
身だしなみを整え、【異空間収納】から手荷物を取り出す。
幸い周囲には人影は疎らであったため、問題無い。
列車がホームに入り停車し、ドアが開く。
そんなに大きくはない駅舎なので恐らく行き違いとかにはならないだろう。
階段を上り下りして改札へ。更にそこを抜けて正面玄関に出る。
すると、
「雄っ!!」と叫びながら少しふくよかな中年女性が近づいてきた。
無論、実母である多恵子である。どうやら雄二が乗った列車の到着時刻はちゃんと功から伝わっていたようだ。
「ひさしぶりっ!元気やったぁ?お母ちゃん」
「雄っ!!しばらく見んうちに大きなったってもぉてぇ(涙)」
そう言いながら雄二の両手を包み込むように握りしめる。
雄二が2歳位の頃、離ればなれになったわけなのだが…小学校に上がる前とか、その卒業間近の時期とか、何年かおきには雄二に会いに来てくれてはいた。
なので顔は覚えていた。
「よぉ~きたっ!よぉ~きたっ!ほんに・・・ちゃんとご飯食べとるか?んん?」
以降しばらくは雄二の顔を確かめるようにペタペタ触りながらの質問のオンパレード。
「ホンマ大きゅ~なったなぁ!!雄ちゃん」
そう言ってもう一人、多恵子と一緒に来ていた中年男性も雄二の手を握る。
母、多恵子の再婚相手である宮沢さんである。
「お久しぶりです。お義父さんもお元気そうで^^」
宮沢父とも面識がある。というか、中学に上がる前に確か彼らの家で一泊していたはずだ。
宮沢父の運転する車に乗せられおよそ15分、二人が暮らす自宅へ到着する。
玄関先で、
「雄兄ちゃんっ!久しぶり!」
と言ってひとりの少年が出迎えた。
「久しぶりやね!英樹君」
宮沢英樹、宮沢夫妻の子供である。即ち雄二の義弟になる。但し、血の繋がりは無い。
多恵子が雄二を手放した(正しくは手放させられた)後、数年後に宮沢父と再婚した。
しかしもう子供は産めない身体だった為、施設から孤児を引き取り、雄二の代わりに自分達の子供として育てる事にしたのだ。それがこの英樹なのだ。
英樹と初めて会ったのも以前、泊りに来た時だ。その時 小さかった英樹は妙に雄二に懐いていた。
(それも今では小学校高学年か…まだこの頃はそういった自分の生い立ちを知らずにいたんやったなぁ。。英樹君・・・)
『前・世界』では英樹自身が所帯を持つ頃になってようやく自分の境遇を知って、逆恨みして自暴自棄になり、多恵子を苦しめたという記憶が頭によぎった雄二は内心、気の毒に思う反面、複雑になるのだった。
確か雄二とは5つほど歳が離れていたはずだ。
ともあれ、全員揃って居間でお茶を飲んで一服する。
(俺の記憶では宮沢のお義父さん、この30年後には肺癌で亡くなる。そして更にその数年後にはやはり癌でお母ちゃんも・・・)
苦々しい記憶を思い出した雄二はすぐさま宮沢父と多恵子を【アナライズ】で走査する。
なんせこの夫婦、ヘビースモーカーとまではいかないが煙草をけっこう吸っていた。
(まだこの時は因子は極小やな…けどやっぱあるんやな。。。肺とか咽喉が傷んできとるわ;;)
すかさず二人に【リペアー】と【状態改変】、【ホーリー・ライト(極小)】を施す。
これで夫婦は一生病気などとは無縁の余生を送れるだろう。
ついでに英樹に【常識改変】と【マインドコントロール】を行使し、事実を知ったとしても育ててくれた両親に逆恨みなどの負の感情を抱かないようにする。
(これでとりあえず面倒な事にはならんはずやな(安堵))
それから持ってきたお土産を渡す。近所には親戚も何人かいるようなので、その分も渡しておく。
あと、どうやらこちらの世界において雄二が中二の夏に意識を失って倒れた事は福知山には知らされてはいなかったようだ。
既に新たな家庭を持っていた多恵子に要らぬ心労を負わせないよう功の方で伏せていたみたいだ。
なので雄二もその件は触れずにおく。
「報告しとくわっ!俺、この4月から○○高校へ通う事になったから。」
落ち着いた頃合いを見て、本来の目的である高校進学の報告をする。
「へぇーっ!!すごいやんか♪雄!!…あそこって、うちがおった頃も有名な進学校やったとこやんかっ!!」
多恵子が驚きと嬉しさでやや大きな声で反応する。
「えっ?多恵子?そこってそない難しいとこなんか?」
宮沢父もびっくりしたように妻に聞き返す。
「○○県で一番ええ、一番難関なとこやで?お父ちゃん」
「ほえ~っ!雄ちゃんはやっぱ賢いんやなぁ!!」
「ほなら うち、みんなにも教えてくるさかいっ!今日はみんなでお祝いやっ♪」
「え・・・・・・」
「ハハハハ・・・・・」
宮沢夫婦は意気揚々とあーだこーだ言いながら部屋から出て行ってしまった。
残された雄二と英樹は顔を見合わせながら乾いた笑いを浮かべるしかなかった。
少し間をおいて英樹が、
「雄兄ちゃん?あのぉ~…」
「ん?どしたん?」
予め英樹が何が言いたいかは把握している雄二だが、本人の口から言うまで待つやや鬼畜な義兄。
「あ、あのな?俺…頭悪うてな?特に算数がからっきしでいつもお母ちゃんに叱られるんよ。。。」
「ふむふむ。」
「ほんでな?雄兄ちゃん、俺に勉強教えてくれへん?この通りやっ!!」
先程の会話を聞いていて雄二が良い高校に受かった事を知った英樹は雄二に手を合わせ拝むように頼み込んでくる。
いきなり頼み事をするとはっ!やはり元々こういう性格のようである。
(まあ・・・アレだ。この子の頭があまりよろしくないのはこっちでもデフォルトみたいやなぁw)
「じゃあ、今から少し見たろか?」
とは言え、秀美や良江に施した『権能』を使うのはやや躊躇う雄二はとりあえず、普通に勉強を見てやることにした。
したのだが・・・思いの外酷かった。。。本人が言ったように こと算数は壊滅的で確か4月から5年生になるはずだが、未だに九九とか分数、時間の計算があまり理解できていない。それどころか四則計算全般が苦手っぽかった。
(う~~む!このままやと違う意味でお母ちゃんが悲しむわっ;;;)
仕方なく雄二はごく、ごく…ほんの僅かだけ【状態改変】と【常識改変】を行使して理解力を主にUPする。
一旦戻ってきた宮沢夫婦と少し遅い昼食を摂った後、再び勉強を見てやる事に。
血が繋がっていないとはいえ、自分の息子達が仲良く勉強を教え、教えられしている姿をこの上なく嬉しそうに眺めている多恵子。本当に幸せをかみしめているようだ。
ちなみに昼食はいわゆる『おばんざい』といわれる家庭料理だった。
多恵子曰く、
「晩にぎょーさんごっつぉ(ごちそう)食わしたるさかい、お昼は軽くでええやろ?」
昼食後、夫婦は再びあちらこちらへと忙しく動き回っていた。
こうして雄二は夕方近くまでかけて、英樹の学習レベルをごく一般的な小5の水準まで底上げしてやった。
算数以外の教科もはっきり言って目を覆いたくなるような状態だった為、あくまでも仕方なく…だ。
念の為、英樹に得意なものは?と尋ねたところ、
「んーと、体育と給食っ!」
期待通り過ぎて笑うしかない回答だった。
(ふぅ・・・これも『前・世界』のまんまなんやなぁ(・∀・))
夕刻になり多恵子に連れて来られたのは近くに住んでいる親戚の家だった。
元々 実母である多恵子はこの辺の出身らしく、近所に親類縁者が多いようだ。
その親戚の中で一番大きい家に住んでいるのが三宅のおじさんだ。
この三宅のおじさんの奥さんが多恵子の姉、つまりは雄二の叔母に当たるのだ。
どうやらその三宅のおじさん宅に親戚一同が集まって雄二の合格祝いをしてくれるらしい。
挨拶を交わし、持ってきた手土産を渡す。
「雄ちゃん、おおきになぁ♪そない気ぃ遣わんでええのにw」
「○高受かったんやてぇ?凄いやないかぁ!功の子供とは思えんわ!!」
「せやなぁ♪功みたいなアホやのぉて安心したわ♪」
「いつの間にか大きゅうなってもぉてっ!多恵ちゃん、ホンマ良かったなぁ(涙」
親戚一同からも大層な祝福を受ける。
ただ父親の功には辛辣なようだ。
(まあ それも無理もないわな;;;)
そもそも功と多恵子の離婚に至った主な原因は功にあるのだ。
功は鹿児島出身であり、男尊女卑的なところがあった。酒、博打はやらなかったものの女遊びが酷かった。
雄二がお腹にいる時も平気で浮気はするわ、多恵子に暴力は振るうわ。
事実かどうか定かではないが、多恵子の話によれば、泣き止まない赤ん坊だった雄二を床に叩きつけたとか…。
雄二の記憶にあるだけでも再婚後も功は複数回、女性問題で京子と喧嘩をしている。
多恵子と離婚した直接的な原因も推測だが、恐らくは京子が居たからだろう。
そんな功だからこそ、多恵子の親類縁者にはあまりよくは思われてないのである。
(俺の女好きなのは親譲りなんやなぁ(今更);;;せめて誰も不幸にさせんようにがんばらんとなぁ)
自分の嫁は何人になろうが一人も不幸にせぬよう、平等に愛する事を改めて心に誓う雄二なのである。
同時に自分を生んだ母親、多恵子が雄二の記憶(『前・世界』)の中では夫の女性問題や子供(英樹)とのいさかい、そして病気などのせいで不憫すぎる生涯だった事を憂いた。
(せめてこっちでは少しでも幸せに生きて欲しいわな。。。)
そんな事を考えてるうちに宴の準備が整ったようだ。
和室二間をぶち抜いて座卓が2つ。雄二は主役という事で前方特等席(別名:お誕生日席)が用意されていた。
(うわぁ~!むっちゃ恥ずかしいんやけどぉ?これって『お祝い』という名の晒しの刑?w)
せっかく親類みんなで祝ってくれていると言うのに全くもって失礼な事を考えている罰当たりな雄二。
(おっ♪これ上寿司やん!!これって湯葉だよなぁ?)
雄二の目の前には高そうな寿司やら本物の松茸が使われた茶碗蒸し、生湯葉、更には但馬牛のローストビーフなどなどが並べられていた。
「ほな…今から始めるでぇ?」
三宅のおじさんが立ち上がって集まっているみんなに声をかける。
「ええ~っ、今日は多恵子んとこの長男の雄二がめでたく高校合格したっちゅうことでわざわざ多恵子に報告に来てくれはった。せっかくやしみんなで祝ってやろう思ぉて、こないな場を設けさせてもろた。ちゅーことで、雄二っ!合格おめでとぉ~~~~っ!!」
「「「「「「「「「「「「「「「おめでとぉ♪」」」」」」」」」」」」」」」
パチパチパチパチ~☆彡パチパチパチパチ~☆彡
そこにいる全員から祝福の言葉と拍手が一斉に雄二へと送られる。
見渡せば初めてお目にかかる顔や訳が分からない感じのお子ちゃままでが一緒に祝ってくれている。
「雄っ!!お前もちゃんと立ってお礼言わんと?」
多恵子が急かすようにそんな事を言ってきた。
雄二はコクリと頷くと徐に立ち上がる。
「ありがとうございます。。。あんまりこちらにはお邪魔できてないにもかかわらず、僕の為にこない盛大なお祝いをしてもろて・・・ホンマありがとうございます。」
ここまで言うと雄二は深々と頭を下げる。
「おかげさまでこの4月から高校生になりますっ♪高校生になったらもうちょいこちらに寄せてもらう事も叶うかと思います。今まであまり出来ていなかった親孝行を少しでもしていきたいと思います。繰り返しになりますが、今日は本当にありがとうございますっ!!」
最後にもう一度深々と首を垂れて感謝の言葉を口にした。
それを黙って聞き入っていた親戚一同は、
「ほぇ~~!えろぉしっかりしとるがなっ!!」
「ホンマにあの功の倅やろかぁ!?」
「多恵ちゃん・・・ホンマええ子に育ってくれて・・・よかったなぁ(涙)」
「しっかし…ホンマに高校生なん?」
「ほんになぁ!どえらい大人びとるなぁ!!」
言い得て妙である。中身はおっさんなのだから。
多恵子を見やると涙腺が決壊して号泣していた。
多恵子の周りにいる親類女性達もみんなもらい泣きしている。
その後は飲めや歌えやのどんちゃん騒ぎ。
雄二は勿論、未成年なのでお茶やジュースだ。
参加している親せき達が一人一人雄二の所へやって来て、直にお祝いを言ってくれる。
その誰もが心から雄二を祝福してくれている。だから雄二も誠意をもって丁寧に一人一人対応する。
その態度に周囲は尚更、感心する。
御礼として雄二はここにいる親戚縁者全員に軽~く加護を与える。
こうして数時間が経ち、楽しく過ごした宴も終わりを告げる。
皆さん上機嫌でそれぞれの家路について行った。
宮沢父もベロンベロンである。
雄二は宴の席を設けてくれた三宅のおじさん夫妻に改めてお礼を告げると、宮沢父を支えながら帰宅の途に就くのだった。
多恵子は胸がいっぱいであんまり飲んでいなかったので普通に歩く事ができたようだ。
一緒に帰宅した英樹に案内されて宮沢父を寝室まで連れていき、寝かしつける。
イビキが凄い。なので【状態改変】で静かに安眠してもらう。
結果、この晩を境に宮沢父の長年家族を悩ませてきたイビキが治ったのは言うまでもない。
居間に行くと、多恵子がお茶を淹れてくれていた。宇治茶である。
英樹は自分の部屋へ引っ込んだようだ。こちらの小学校もまだ春休みではないらしい。
タイムリープして来て初めての母子水入らずのひと時・・・静かで優しい空気が流れてゆく。
そこにはこれといった会話も無く、お互い穏やかな顔で見つめ合うだけ。
「おっと…もうこんな時間なんや?雄も疲れたやろ?そろそろ床に就かんとな!」
「俺は全然平気やけど、お母ちゃんの方が疲れたやろ?」
「せやなwうちもええ歳やしなw・・・ほな、今晩はお母ちゃんと一緒に寝よっか?というか,,,一緒に寝て欲しいねん!お願いやっ!!」
(え・・・・・こっぱずかしいんすけど?;;;)
成り行きとは言え、生みの親である多恵子と布団を並べて寝る事になってしまった。
(あんなウルウルした目でせがまれたら…)
仕方なく雄二は和室へと運ばれた布団に寝転がる。
「ほな・・・電気消すで?」
「うん。」
しーんと静まり返る暗闇。雄二はしばらく目を閉じてみたが、やはり寝付けず余計に意識が冴えてくるのであった。
あと数話、春休みでの出来事が続きます。




