本編 第十一話 まずひとつめの「ざまぁ」 そして今後
お世話になります。
今回は"ざまぁ"です。
と言ってもかるーく・・・えっ?軽くない?
翌12月16日、月曜日。
いつものように朝を迎えて、いつものように学校へ行く。
ただ、今日はいつも以上に騒がしい・・・。
(何故かって?)
(昨日の圭子とのデート現場を幾人にも目撃されたからですよ。(トオイメ))
(いやぁ別にね、悪いことは何もしてないわけやから、堂々としてれば良いわけで。)
これぐらいのお年頃になると、この手の話が大好物というお方がわんさかいらっしゃるわけですよ。
おかげで先生からも尋問されーの、からかわれーの。
(そんな訳で適当にやり過ごそう。そうしよう。)
圭子のクラスではなんか祝福ムードに包まれてるらしい。(使い魔報告)
ということで…(どうゆうことだよ?)
(騒がしい日々が相変わらず続く中、俺の様子を睨みつけるような視線がひとつ…か)
嫌悪と侮蔑に満ちたその視線。そう、ある3人の内の1人。
この時代に舞い戻った時、この地域全体を【常識改変】で雄二の都合の良いようにした際、ある3人だけ対象から外しておいたのである。
(理由?もちろんテンプレの『ざまぁ』を断行する為だわなw)
(んでその1人が奴、〖高田昌之〗である。こいつには小学校時代、こっぴどく虐められた。)
何故そんなに虐められたのかなんて虐められている方には解らなかった。
当時の雄二は障がいが色濃く残っており、身体的にも弱く脆かったのでよく虐めに遭っていたわけだが、特にこの高田のそれは悪質で残虐なものだった。
ある時は給食の残飯の中に頭から突っ込まされたり、ある時は布袋を被らされた状態にされ、数人で文字通りボコボコに袋叩きにされたり、ランドセルをゴミ捨て場に持っていかれたりと、何度泣かされたことか。。。
(そんな素晴らしい思い出を俺と奴の間でのみ共有しているわけで。)
(奴にとってウジ虫のような存在だったはずの俺が中2の2学期終盤になって急に体が丈夫になり、見栄えも良くなり、色々目立ってる。おまけに奴、高田以外の周辺の人間が全員、俺に対する反応、態度などが今までと全く異なっている。)
ある意味、自分だけ浮いた存在になっている高田からすれば、違和感が半端なくあるわけで、同時に雄二に対してもどうしても懐疑の目が向けられる。
(近いうちに何らかの接触を持ってくるだろうなぁ…)
と、思ってた次の日の昼休み。思いがけないことを圭子から聞いたのだ。
前日から圭子の方にコンタクトがあったらしいのだ。
曰く「あいつは本当に稲村なのか?」とか。
曰く「あいつにみんな、騙されてるんじゃないか?」とか、etc。
根掘り葉掘り聞いてきたらしい。圭子はプンスカ怒ってくれていたが。
(俺自身もこんなに何もかもが変わるなんて思ってもいなかった訳ですよ。高田君。)
結局そんなことばかり喚いていたので、周りから冷めた目で見られるようになってしまい、孤立してしまった高田はというと3年のいわゆる不良と言われる皆さんとツルむようになったらしい。
この時点で高田が何かしでかすであろうと、感じ取った雄二は高田に監視をつける事にした。
『第七の権能』の中の【コーリング】でカラス型の使い魔を召喚した。ちなみに名前は『ピッチ』。
こうして数日、『ピッチ』に高田の監視をさせ、変わった動きがあれば、すぐにわかるようにした。
たまに入ってくる報告によると、授業をサボるのは当たり前でカツアゲ、暴行、強引なナンパ等、
いよいよもって素行が荒れてきたようだ。最近はよく校舎4階端っこの非常階段でお仲間と屯っているようだ。
冬本番の北風が吹きすさぶ、とある昼下がり、いつもの場所、いつものメンバーでいつものようにツルんでいる高田がいた。時間的にはまだ授業中のはずである。
非常階段にある鉄製の柵に腰を下ろし、煙草を吹かしつつ足をぶらんぶらんさせている。
地上約15mの高さはあるだろう。そんな中、突風が高田に襲い掛かる。
グラッとバランスを崩し、まるでスローモーションのように後方に倒れ込んでいく。
周囲の連中が呆気にとられる中、万有引力に抗う事も出来るはずもなく、「ズサッ」という音を立てて高田は落下した。
一瞬の間をおいて、下を覗く不良達。しかし、驚くことに、次に彼らが取った行動は、高田の様子を見に行くために非常階段から降りてくるわけではなく、その場から逃れる為、校舎内に駆け込み、知らぬ存ぜぬという己らの保身の為のものだった。
幸い、近くにいて落下音を聞いた教師がすぐさま、現場に駆け付け、他の教師を呼んで救急車を頼んだり、応急処置をしたりした為、一命は取り留めたようだ。もう一つ運が良かったのは落ちたところが丁度垣根になっていた為、それがクッション代わりになり、衝撃を吸収したおかげだろう。
すぐさま今回の事故は全校に知れ渡り、騒然とした日々が数日続いた。
警察やら消防やらが現場検証に来たり、教育委員会が調査に来たり。
現場から逃走した連中は結局バレて出席停止処分になったらしい。
当事者である高田は頸椎損傷、頭がい骨骨折、腰骨骨折等とかなり重症らしい。
日頃の素行の悪さから生じた正しく"因果応報"であり、通常ならこれだけで『ざまぁ』として完結するのだろうが、出席停止処分を喰らった連中の聴取を行なった先生から(無理やり)教えてもらった話によると、どうやらトンデモない事を企んでいたらしい。
高田の提案である女子生徒を拉致って輪姦そうと計画してたらしく、そのターゲットにされたのがなんと圭子らしいのだ。
その話を耳にした雄二は憤怒の滾りを必死に堪えて、すぐさま行動を起こした。
まずは今回の件で処分を受けた3年生全員を割り出し、『第五の権能』の中の【常識改変】及び【マインド・コントロール】で圭子に関する情報を全て消去し、一生女性には興味がなく、男に走るように変更してあげた。加えてこの中学からかなり離れた県外の遠くにある山奥の村に疎開してもらい、そこの中学に転校してもらった。
そして企てを主導しようとした張本人である高田にはケジメとして相応の報いを受けてもらう事にした。
世間はクリスマスムード一色に包まれており、本番を数日後に控え、盛り上がっていた。
そんな世間とは切り離されたかのような静けさの中、一定間隔で鳴り響いている無機質な機械音。
【認識阻害】により、誰にも知られることなくとある病院のとある患者が収容されている病室に忍び込んだ雄二。
時間は夜中の2時を少し回ったところ。つい先ほど夜勤の看護婦が巡回し終えていた。
そこのベッドの上、がんじがらめにギブスなどで固定されているのが高田昌之である。
幸い一命は取り留めたものの、全治までに数か月、更にはリハビリを行わないと、通常の生活に戻れない程の大怪我であった。
「無様やなぁ、高田よぉ?」と、雄二は高田に語りかけるように一言。
「・・・・・・・っ!!!!・・・・・;;;;;」
その声に目が覚めたのか、高田が目を見開いて雄二のいる方向に向ける。
何かを叫ぼうとするのだが、声を発することも手元に備え付けられている緊急呼び出し用ボタンを押すことも出来ない。【状態改変】により完全に動きを封じられているのだ。
「心配せんでも殺しゃあせんわ!ただ、ちぃとばかし罪を償ってもらうわなっ♪」
そう言うと雄二は左手人差し指で高田の額に触れた。
恐怖のあまり声を出そうとするもそれは叶わない。やがて高田の体全体がピンと硬直したかと思うと「あばばばばっ!!!」と激しく痙攣を始める。目は白目になり、口から泡を含んだ涎が零れる。ついでに股間からアンモニアの匂いと共に湯気が立ってきた。
指を額から放しながら雄二はポツリと
「まぁ、死んだ方がましなこの身体でこれから一生を過ごすわけやけどなw」と、漏らしながらその場から消えた。
翌朝、この病院は慌ただしく喧騒に包まれた。
重症ではあったが、脳自体は大きな問題はないと思われた患者が突然、原因不明の高次脳障害を起こしたのである。
こうして雄二の高田に対する復讐は完遂する。
高田はこの後、数か月かけて怪我自体は癒えるものの、学校生活はおろか、自身の事を何一つまともにできなくなり、虚ろに目を開け、ボーッとするしかできない人間として一生を送るのだった。
ただし、今まで雄二に対してやって来た事。受けた報いの記憶はしっかり残ったままになっている。
せいぜい自分のしてきた愚行を悔いてもらおう。
12月22日。日曜。昨日までの1週間、目まぐるしく騒がしい日々の連続だった。今日ぐらいは静かで平穏な時間を過ごしたいものである。
朝食の後、リビングで何気なくTVを眺めていると、今年の世相を振り返る番組が放送されていた。
(なるほど、この時代から既にこんな番組は存在してたんやなぁ)
今年は過激派による企業爆破事件とか宗教、思想がらみの事件が目立って多かったようだ。
一度、宗教関係の事を神々に尋ねてみた方が良いのかもしれない。
本来、こういった宗教とかイデオロギーは人々を正しく教え導くものであるはずだ。
しかし実際行われているのは、他者の排斥行為、しかも過剰なまでの。
(人間って結局は同じ過ちをループする事しかできんのかなぁ)などと考え込んでいるうちに、話題は芸能・流行関係に移っていた。
この年、日本にユリ・ゲ〇ーが来日して超能力ブームが起こったり、『ノストラダ○スの大予言』がベストセラーになったり、映画ではブ〇ース・リーのカンフー映画とかエクソ〇ストとかが大きな話題になっていた。
(そういえば最近学校でも男子が「アチョー」とか喚きながら型をまねていたなぁ)
そうそう、忘れてはならないものがあった。当時の若者達を惹きつけてやまなかった者達。
女子は『新御三家』とか『フィンガー〇』でキャーキャー。男子は『百〇派』と『淳〇派』に分かれて争っていた。
気が付けば、隣に妹がくっついていた。全くブレない妹様である。
話を聞くと、勉強は相変わらず絶好調なようで、テストがあれば尽く100点満点だそうだ。あまりの急激な変わりように担任の先生から色々尋ねられたそうだが、それに対して秀美は「お兄ちゃんに頭の使い方とか勉強のコツを教えてもらった」と答えたらしい。
(ウ、ウム,,,やはり少々やり過ぎだろうか…だが、後悔はない。反省もない(キッパリ))
タイムリープ以前の秀美はと言うと、以前も語ったように小学校の時から勉強が苦手で特に算数は壊滅的だったはずだ。
それを満点を取るほど、改変してしまったのである。
しかし、既にやってしまったのは仕方ない。
この懐きようも以前とは別人のようであるし、雄二がタイムリープしてきた影響で色々変わってしまっている。それこそ今更であるので、と結論付ける事にした。
もう一つ聞いた話では最近、意地悪をしていたガキどもが秀美に近づこうとすると、何か見えないものにぶつかるみたいに弾かれてしまうらしい。どうやら『クロ』がちゃんと仕事をしてくれているらしい。
(同じような事を圭子も話してたっけ。そういやあ)とふいに思い出す雄二であった。
さてさて、こうやって秀美の相手をしながらも【マルチタスク】で別の案件について考察しているのだが、その中の一つに少しばかり思案する。
今後の事を考慮して『権能』を行使して生成して【異空間収納】にごっそり保管してある金、銀、プラチナ、銀パラといった貴金属。ダイヤモンド、ルビー、サファイア、エメラルドなどの宝石類。おまけにレアメタル等。調子に乗って純度100%のそれらを各々数万トン単位で作ってしまった。作ったは良いがどうやって換金すべきか?
雄二自身は所詮、まだまだ中坊のガキだ。ガキがそんな物を自由に捌けるはずがない。誰か大人に代理で捌いてもらうしかないわけなのだが・・・。
できれば正当な資格を有した者。実際にそれを生業にしている者に適正に捌いてもらうのが無難だし、安全だろう。あまり強引な力技を使うと後々面倒な事になりかねない。
(どうしよう;;;近いうちに何か良い方法探さんとなぁ。。。このままじゃ文字通り‘宝の持ち腐れ’やなぁ。。)
そんな思考を巡らせながら、秀美の頭をナデナデ。
その様子を生暖かい目で微笑ましそうに眺めている母親。父親は出かけているようだ。
何気なく母親を【アナライズ】してみる。今のところ特には問題ないようである。だが、このままだとおよそ30年後、子宮癌を患うはずだ。今の雄二にはそれを未然に防ぐ力がある。
この時代に舞い戻って来て早1か月。一度目に生きてきた風景と今、目にしている風景とかなり違ってきている。それも今更だが。
そもそも雄二自身の何もかもが一度目のそれと全く別物なのである。
(とはいうものの闇雲に力は使わない方が良いだろう。)
あくまでも"宇宙の意思"自然の哲理を尊重すべきだろうし、それに何でもかんでも関わるのは面倒だ。
(と言いつつ、既に二度ほど宇宙を。いきなり初っ端には全宇宙の危機を救っちまってるが、)
だから極力、世の中の流れはそのままその流れに任せるようにする。ただし、自分や自分に関わるものはある程度、自分の判断基準で好き勝手させてもらう。
そんな行動指針を立てつつ、母親に【状態改変】を施し、癌とは無縁の健康体に作り変える雄二なのである。
しかしながら、この時点での雄二はまだまだ自身の持っている権能を全て理解しているわけでも使いこなしているわけでもなかった。どちらかと言えば加減が分からず、翻弄されているのである。
し・シスコン?・・・・ああ、システムコンポですよね? ねっ?




