本編 第十話 ふれあう心。 因果応報。それとお試し
お世話になります。
今回もメインヒロインとのやり取りから始まります。
そして悪い奴らには天罰を。
「あ・・あのさ。詩織?実は俺、もう付き合い始めた彼女いるんだよね。。。」
目を逸らしながら申し訳なさそうに白状する雄二である。
それに対して少し考える素ぶりをした後あっけらかんとした感じで詩織が、
「えっ?それがぁ?」と笑いながら聞き返す。さらに続けて、
「だって雄くん、こんなにカッコよくって優しくって素敵なんだよぉ?彼女の一人や二人いてもおかしくないでしょ?‹それに…やっと見つけたんだし…やっと再会できたんだし。。。›」
何とも寛大なお言葉の詩織様。
繰り返すが、この時 雄二が少しでも冷静さがあればもう一度詩織を【アナライズ】して色々知る事ができたろうに・・・。
「まあ・・詩織がそう言ってくれるなら。。。」とややバツが悪そうに頬をポリポリしながら話す雄二。どうやら詩織の発した言葉の最後の方までしっかり聞き取る余裕さえ無かったようである。
そんな雄二を見ながら詩織は
「でも私にとっては雄くんが初めてだったしぃ雄くん以外知らないしぃ考えられないもんっ。。。私、誰ともお付き合いした事がないんだぁ。それに私自身の事はもう大体、雄くんにわかっちゃってるでしょうけど、私は雄くんの事、あれから何も知らないのよねぇ。それに学校も違うしネ・・・」やや俯きながらそう呟く詩織。しかしすぐさま顔を上げて続ける。
「でもでもぉ~、私はあなたに命を助けてもらって、こうしてお話してるうちにやっぱり雄くんが好きなんだなぁって。諦めきれないよぉ~!!逢えなかった時間の長さなんて関係なくって、理屈でもないの!絶対、私にとって生涯ただ一人の運命の人なんだって確信を持って言えるのっ!だから…だからね、私にも色々これまでの雄くんの事、教えて欲しいし、少しずつで良いから私の事も彼女さんと同じように可愛がってね♡♡♡」
なんて健気で、なんて純粋な、そんな心の底から溢れてくる本当の気持ちを伝えられて雄二は、少し詩織の言葉に引っかかりがあるものの、詩織を抱きしめて「大丈夫やっ!絶対、詩織は変わらず守っていくっ!せやからそんなに重くとらんでくれっ!」と告げる。
「ううん、本当に心からそんな風に思えるの。決して重くとらえてないし、もっとお気楽に思ってるから大丈夫だよ♪ただ嬉しくってね♪やっとまためぐり逢えたんだしっ!」と笑う詩織だった。
紛れもなく詩織にとって雄二は初恋の相手なのだ。ここでの詳しい話は省くが、やっと再会できた最愛の相手なのだ。未来から来ようが、神様になっていようがそんな事はどうでもいい事なのだ。
ただ、雄二本人に忘れ去られているようで、悲しいし、悔しいのだが、それでも雄二に再び巡り逢えた喜びの方が遥かに大きい為、とりあえずは今のままにして、また一から関係を構築していこうと心に言い聞かせたのだ。もう二度と離れてしまわないように。もう二度と失わないように。詩織も必死なのだ。
こうしてかなりの時間を割いて濃密に語り合った二人だが、そろそろお互い家族の下へ帰らなければいけない事に気付く。
そこで雄二は詩織にある提案をする。
「もう俺の持ってる力についてはわかってると思うから今更やけど、詩織をこれからずっと守って行く為に必要なちょっとしたおまじないしようと思うんやけど?ええかなぁ?」
詩織は満面の笑みで快諾する。
詩織のそれぞれの手を握り、お互いのおでこをくっつけて、『権能』を行使する。
『第五の権能』の中の【テレパシー】、【クレヤボヤンス】、【アナライズ】、そして『第六の権能』のうちの【テレポーテーション】、【シールド】。これらのチート能力を詩織に【付与】したのだ。もっとも発動の仕方はテレパシー以外はまだ教えるつもりは無いが。
「よしっ!これでいつでもお互い遠くに離れてても連絡を取ったり、いざという時に詩織を守れる。」
それを聞いて戸惑いながらも疑問を投げる詩織。
「えっ?…それってどういう…?」と、言い終わる前に雄二は【テレパシー】を使って、直接詩織の頭の中に話しかける。
(聞こえるぅ?今、直接【テレパシー】で話しかけてるんやけど?)
「えっ?えええぇ~~⁉、これって…?」突然、頭の中で響いてきた雄二の声に驚き、ほんの少しパニクる詩織。
試しに何か頭の中で話してみるよう雄二が促すと少し顔を赤らめながら、
[雄くん、本当に色々とありがとっ♪。。生まれた時からずっと、そしてこれからもずぅ~~~~っと大好きぃ~♡♡♡ううん…愛してる♡♡♡♡]と念じてみる。
(あ、ありがとう。。俺も好きだよ)と、雄二が返すと更に顔を赤く染めながら、
「ふ、ふわっ・・・ほ、本当に伝わってるぅぅ⁉」と驚愕の声をあげる詩織。
「こ、これってぇ思ってること全て筒抜けなのぉ?」やや焦りながら問うと、
「あー、それは大丈夫やし。ちゃんと俺の事、少しばかり強く意識してからやないと、俺には届かんから」と、教える。
ホッ!と安心したように息を吐く詩織である。
この時点で詩織は宇宙一強力な"ガーディアン"を手に入れ、ある意味人類最強になったのである。
(これでいつでも詩織を見守れるし、何があっても対処できるっ!)秘かにそう力説する雄二。
一歩間違えればストーカー案件だろうが、守るべきものにはどこまでも過保護なのである。
目的を全てクリアさせた雄二はその部屋の【結界】を解除して、待機していた『ハーデス』達にお礼を言うと、
『第六の権能』の【時間操作】を用いて時間をちょうど雄二が詩織を探し当てたその時にまで巻き戻す。そして詩織の手を取って、転移した。
場所は予め詩織に聞いておいた詩織の自宅の近くにある民家間の小路。
幸い人影はなかったので安堵する二人。
「じゃあそろそろ…」と少し寂しそうに告げる詩織に、頭をポンポンしながら、
「いつでも話しかけてくれてええよ?なんか困った時はすぐ連絡してな?」
と、微笑みかけながら、詩織の自転車を【異空間収納】から引っ張り出す。
あの時、あの現場で一緒に捨てられていたスクラップ状態のそれを綺麗に元通りに修復して詩織に渡すためだ。
嬉しそうにそれに跨り、詩織は「本当にありがとネ!♡今まで頑張ったかいがあったよっ!じゃあ、またね!」そう告げ、手を振りながらペダルを漕ぎ出す。
詩織が無事に帰宅できた事をその場で確認すると、
「さてとっ!お仕置きの時間やな。」そう呟きながらある場所に転移する。
ここは住宅街からやや離れたところにある割と広い空き地。そこにあるトタンで造られた倉庫のような建屋。
その建屋の前にはボンネットがかなり凹み、フロントガラスも割れてしまっている灰色のセダン車が1台。
すぐ近くに茶髪のいかにもチャラそうな男達が3人。煙草を吹かしながら少しばかり焦燥しながら言い争っていた。
「おいっ!どーすんだよ?やべぇじゃんよぉ~!」
「おめぇが急にビール零すからやろぉ~!」
「るせぇ~!しゃーないやんかぁ!」
「それより人、轢いちまったじゃん!どぉすんだ~?!」
「もっと奥の方に捨てた方がよかったんじゃねぇ?」
「親に頼んで始末してもらうかぁ?」
とんでもないクズ共である。
改造車をスピード違反でしかも飲酒運転で乗り回し、あげくには人身事故を起こしたにもかかわらず、轢き逃げ。しかも責任のなすり合い、おまけに尻拭いを親に押し付けようとしてるのである。
そんな有様を近くで窺っていた雄二ははらわたが煮えくり返るのを堪えて、クズ共に近づくのであった。
「あんたらさー、自首した方がええんとちゃう?」と努めて冷静に話しかけた。
突然そんな風に話しかけられた3人は一瞬ぴくっと固まり、雄二を見る。
「て、てめぇ~!だれだよぉ?」
「じ、自首って…一体何の事言ってやがる?」
「ええ加減な事ぬかすとただじゃおかねぇぞ!?」
そんな風にほざく、クズ3人。
「いやいやさっき、自分らで言うとったやんか!」
雄二がそう反論すると、雄二が一人しかいないのを有利と見て、クズ3人は示し合わせたように頷き合い、近くに放置されていた角材や金属の棒を手にして立ち上がり、
「チッ!クソ生意気なガキがっ!」
「てめぇ一人で何ができんだよぉ!!」
「バカめっ!死にさらせっ!」
そう、口々に喚きながら襲ってくる救いようのないバカ3人。
しかし所詮はクズである。隙だらけな上に、ただ力任せに振り回すだけである。
そんな攻撃が【身体強化】されている雄二に当たるわけがない。
攻撃の全てを無駄のない動きで優雅に躱し切る。
体力もろくにある訳でもなく、やがて息があがってくる3人。
「ハァハァ・・・ちょこまかとぉ!!」
「ゼェゼェ!・・・くそったれがぁっ!!」
「・・・っくっ!・・当たらねぇ!!」
攻撃が尽く躱され、体力もなくなり、早々とその場にへたり込む大の男3人。
「罪状も絶賛追加中♪。これって暴行未遂?ひょっとして殺人未遂?」
と茶化すように3人を煽る雄二。
「「「・・・・・」」」途端に黙り込んでしまった。
そろそろ頃合いと見た雄二は3人に向かって
「じゃあ、今度はこっちの番やね?」と悪い笑みを浮かべながら、『第五の権能』の中の【状態改変】で意識を奪って昏睡状態にすると、続けて【マインド・コントロール】で意識回復後の行動を操る。
「今から10秒後に目が覚める、そして指示通りの行動をする。」としゃべると、雄二はその場から消えた。
放置された3人のクズは10秒後、言われた通り起き上がると、すぐに傍に停車させてあった事故車に乗り込み、エンジンをかけ旋回して開かれていた倉庫の入り口に突っ込んでいった。
その後に訪れたのは静寂に支配された宵の闇。時々冬の風がトタンを叩くのみ。
こうしてこの日、誰にも気づかれる事無く、3人のクズがこの世界から消えた。その存在自体、最初から無かったかのように。。。
雄二が家に戻ったのは6時過ぎだった。圭子との初デートを終了させてから1時間程しか経っていないのだが、体感的には更に1日多く過ぎているような感覚になっていた。
それよりも何よりも妹様の勘が余りにも鋭く、見事にデートだったという事実がばれていた。
少々拗ねてしまっていたのでどうにかご機嫌を取ろうと兄は頑張るのだった。
たとえ、自分が後で食べる為にとっておいたシュークリームが犠牲になったとしても。
(べ、別に悲しくなんてないんだからねっ!)
夕食が過ぎ、明日の準備をして一息ついて風呂に入ろうと下に降りて行ったら、丁度 妹様が風呂から上がり、美味そうにシュークリームをお召し上がりになりやがっていた!(チクショー!)
風呂から上がり、自室に戻るといきなり詩織の声が入ってきた。
[雄くん?今大丈夫?って聞こえてるのかなぁ?]
(ああ、ちゃんと聞こえとるよ。どした?)と、雄二が返事をすると
[へぇ~!やっぱり聞こえるね♪すごいねぇ!これ。えっとぉ、特に用ってわけじゃないんだけどね。今日一日が余りにも激動過ぎて、もしかして夢だったんじゃないかなぁってねっ]と詩織がそう口にする。
(うん、確かにそう思えちまうよなぁ!あまりにも非現実的で突拍子のない事ばっかやったしな。)そう答えると、
[ん。。そーだね!でも全部真実で本物なんだよねぇ。現にこうして、心の中で会話できちゃってるわけだしぃ♪]と、そんなこんなで話が弾み、結局1時間程、おしゃべりを楽しんだ後、(今日は色々あって疲れたやろうから早めにおやすみ?)という雄二の言葉でお開きとなった。
しかし雄二は詩織とのおしゃべりの間、ただ何もせず、単純にしゃべっていたわけではない。
第二の権能のうちの【マルチタスク】を行使し、試験的に並列思考で色々動いていたのである。
タスク①で詩織と会話し、タスク②で『ゼウス』に近況を聞き、タスク③で空気中の原子構造を組み換え、様々な物質(主に貴金属や宝石類)を生成させ、それらを異空間収納内で増幅させたり、タスク④で【アカシック・レコード】に世界情勢等今後、必要な知識を教えてもらったりした。
幸い、全宇宙は特に緊急性があるような危機的な事象は今のところは起こる兆候さえ無いようだ。
余談だが、【アカシック・レコード】からの情報によると、【天の川銀河】だけに限定したとしても、この地球と類似する、しかも生命体が生息している惑星が少なくとも数千ぐらい存在するらしい。
更には地球と全く何もかもが同じ惑星もあるらしい。
まあ、探し出そうと思えば、意外に簡単らしいから、暇なときにでも覗いてみようかと思う雄二である。
【天の川銀河】だけでもそうなのだから、他天体となると言わずもがなである。
パラレルワールドとかアナザーワールド(異世界)とか。なんともそそられるキーワードだ。
しかも【アカシック・レコード】によると、雄二の力、つまり権能を使えば、自由に星を。もっと言えば惑星、恒星を含んだ宇宙そのものを0から生成することも可能らしい。しかし初っ端から全宇宙を消去してそこからまた新たに全宇宙を構築したのだから(今更感が半端ねぇ~。)
(ちゅーか、近いうちに実験的に異世界なりを作ってみようか)と本気で考えているようである。
そういえば今日は12月15日の日曜日であるはず。つまりあと11日で冬休みであり、そこからもういくつ寝るとお正月である。
そんなことを思いながら、ふとラジオをつけてみた。流れてきたのは山口〇恵の「冬の〇」だった。
(ええ歌やったなぁ~)
ちなみにクズ3人は死んではいません。
地球と言う惑星から消えただけです(ぇっ?)




