本編 第八話 宇宙で無双。学校でも無双。それから初デート
お世話になります。
後半でようやく初デートです。
初めて感を出すために少々ぎこちない言動で綴ってます。ご容赦ください。
いきなりディープな事はさすがに書けませんw
明けて、月曜日。今日からまた一週間が始まる。
現在、朝の7時である。
大きな欠伸をしながら脇腹をポリポリ。今日の雄二の目覚めはあまり良くない様である。
というのも、昨晩寝ているところを起こされたからである。誰に?それは雄二のいる【天の川銀河】から遥か数兆光年離れた位置に存在する、とある他銀河の管理者にである。その者から突然の緊急連絡が入り、曰く「突然、星間分子の大爆発が発生し、巨大ブラックホールが出来つつあり、周辺にある星々が根こそぎ吸収されてしまう可能性がある」という。
【アカシック・レコード】で確認すると、「普段の規模なら放置してても問題ないが、今回の規模では恐らく、他天体にも影響を及ぼす可能性があり、いくらそこの管理者であれ、対処は困難である。」との事。
と言うわけで準備を施し、『第七の権能』の中の【ワープ】で現場まで急行した。
確かにどんどん成長している感がある巨大なくぼみがそこに存在していた。
【アカシック・レコード】にて最善策を導き出し、それを実行に移す。
まずはその巨大なくぼみ全体を【多次元対応シールド】を展開し、覆う。更に『第四の権能』、【デリート&デストロイ】を行使してその存在を強引に無に還す。少しその場に待機して様子を見る。ちなみにこの巨大くぼみの大きさは【天の川銀河】をすっぽり飲み込む程の大きさが既にあった。
様子を見ながら【アカシック・レコード】から得られる情報と照らし合わせ、問題ないと判断してから、シールドを解除して漸く地球に帰還したのである。施しを解いて時計を見ると午前4時を回っていた。
再びベッドで横になるが、目が完全に冴えて結局そのまま朝を迎えたわけである。
仕方なく、体を起こして、背伸びをしつつ下に下りる。
既に慣例化しつつある妹とのスキンシップをこなし、朝食を摂り、身支度を整え、学校へ向かった。
(なんかええ方法ないかなぁ。…事あるごとにこんなんやったらかなわんわぁ~)
などと愚痴りながら中学校の門を通り抜ける。下駄箱で上履きに履き替えながら、これも恒例になりつつある下駄箱の中のお手紙達を回収。
教室へ辿り着くとクラスメイト達と挨拶を交わす。着席するや、輪ができ、ガヤガヤ。
(この和気あいあいな雰囲気、青春って感じでええなぁ♪)などと爺臭い感動をしている間にもあれこれと周りから話しかけられる雄二である。
本日の授業の内4つの時限は国語、数学、英語、理科の答案用紙が返され、それぞれの答え合わせをする授業内容だった。もう答案用紙が返されるというのだから、教師という職業もなかなかにブラック(大変)なようである。
雄二は今日返された答案用紙の全てが100点満点だった為、その都度、先生から名前を呼ばれ、賞賛される。それを聞いたクラスメイト達がまたそのたびに騒ぎ出す。喧喧囂囂である。
授業の合間の休み時間も然り。「相変わらず凄いなぁ!稲村は」「4か月も意識不明だったのが信じられん!!」「稲村く~ん、勉強教えてぇ♡」・・・(ふむ、なかなか一人になれん)
まあ確かに複数教科で満点を取るのはなかなか至難の業ではある、特にココの中学は割とレベルが高いらしく試験内容も結構な難問が多いらしい。そんな中、軽~く、今のところ全教科すべて満点なのだから、周りが驚愕するのも仕方ないのかもしれない。
常時、『第二の権能』のレベルを『10』で固定している(一般人レベルを『1もしくは良くて2』とした場合)のに加え、元々記憶力が尋常じゃないため、普通に授業内容を覚えているのである。
加えて【アカシック・レコード】にも常時接続なので正に『森羅万象』、その気になれば何でも知り得る事が可能なのである。
半端なくチートである。頭脳が無双状態なのである。
だが、無双なのは頭脳だけに留まらなかった。
この日の4時限目は体育であった。冬場なので風が冷たい。そんな中でも容赦なく屋外で授業である。
無論、体育は2クラス合同で男女別々である。そして男子は屋外でサッカーなのだ。女子は何故かハードル走のようだ。遠目に窺うとジャージの人もいるが、ブルマーなわけである。即ちムチムチなのである。
それはさておき、男子は4チームに分れ、20分ずつ試合を行うみたいである
ちなみにではあるが、この時代は日本においてサッカーはまだまだマイナーであり、たまにTVでペ〇とかベッケン〇ウアーの名前が出るくらいであった。アニメ「キャプテン〇」もなかったし、ましてやJ〇ーグもまだ影も形もなかった。
雄二は最初に試合を行う組に入っていたのだが、この時の雄二はうっかり失念していた。『第一の権能』の中の【身体能力強化】レベルを常時『5』のままである事を。そして手を抜くべきだった事を。
それはもう颯爽と、そして華麗にフィールドを駆け抜けるのであった。
誰も寄せ付けず、誰もついてこれず。相手ボールをインターセプトすると、そのままドリブルで持ち込み、それこそ大〇翼ばりのドライ〇シュートまで披露する始末。
唖然としている周りの雰囲気に漸く気付き、試合後半になって慌ててパスを他者に回すようにしたのだが、時既に遅し、体育でも見事なまでの無双ぶりを露見してしまったのであった。
(や・やべ・・・加減するの忘れてもーたっ!!うわぁ~!むっちゃ見られとるやん!)
よくよく見れば、あちらの方の女子もこちらを見ながら黄色い声をあげて騒いでいた。
茫然と見ていた体育教師も我に返り「稲村・・・お前、サッカー部だっけ?」と慄いていた。
そして時は昼休み。どうにかこうにか一人になると、隣のクラスへ出向いて入り口で近くの人に「わりぃけど、尾崎さんを呼んでくんない?」と頼む。ここでも少し騒ぎになるが、何とか呼び出す。
顔を赤くして圭子が近寄ってくると「今日、何か用事あるぅ?」と問うと、圭子は首を横に振りながら「特にないよー」と返事をする。とっさに耳元で「だったらあの部屋に来てくれるぅ?」と、小さく囁く。みるみる首まで赤く染めて「コクン」と頷く圭子を確認すると雄二は「じゃあ、そゆことで。」と言い残し、自分のクラスに戻っていった。
その直後、圭子が他のクラスメイトに尋問を受けたり、冷やかされたりしたのは言うまでもない。
尚、圭子は圭子の方で結構人気がある。美人だし、成績優秀だし、しっかりしているし、人当たりも悪くない。しかし圭子が雄二に恋してる事は以前からかなり知れ渡っている。知らぬは本人ばかりである。
よって圭子のクラスメイト達は概ね雄二との仲を応援し、好意的に生暖かい目で見守っているらしい。
そして何だかんだで放課後である。
本日の無双モードを自ら顕現させてしまったせいでクラスメイトからお誘いやら追及やらが成されたが、どうにかそれらをかいくぐり、辿り着いたのは旧校舎。そう雄二が圭子の告白を受け入れた、あの教室である。
念のため認識阻害を施して中に入ると、既に圭子の姿がそこにあった。
雄二が入った途端、「あっ♡」と声を漏らしながら笑顔をほころばせる圭子。
少し埃を被った使われていない机。白いカーテンで遮られている為、多少薄暗い。外から微かに部活に励む生徒たちの声が聞こえてくる。
そんな中、最初はテストの結果などのたわいもなく談笑を続けて、一泊置いて雄二が口を開く。
「今度の日曜日って何か用事あるぅ?」
一瞬動きを止めて目を見開いた圭子だったが、「特には…」と答えた。
間髪入れずに雄二は「よかったら映画でも観にいかん?タダ券あるから」と、誘ってみる。
実は母親が趣味でボウリングのクラブ会員になっており、その関係でたまに映画の優待券がもらえるのである。それを昨夜、母親からGETしておいたのである。
「デート…」とポツリ呟きながら、圭子は目を輝かせ、即座に満面の笑みで「嬉しい~♪」と告げるのであった。
(よっしゃ~!初デートやっ!♬)と、心の中で雄たけびを上げる雄二であった。
「じゃあさ、今度の日曜、昼前…そうやな11時に〇〇〇プラザの1階噴水の前で待ち合わせなっ♪おけ?」
そんな感じで時間と待ち合わせ場所を指定すると、「おっけー♡♡♡」と圭子が返す。
こうしてデートの約束を取り付けた雄二だが、もう一つの用事を済ますために、
「悪いけどちょっと目を閉じてくれるぅ?」と間をおいて、催促する。
「えっ?」と、問い返す圭子に「だいじょーぶ!ちょっとしたおまじない」と答える。
少し戸惑いを見せたが言われるがまま、目を閉じたのを確認すると、すぐさま『茶々』を再召喚して圭子の影に忍ばせるのであった。そして圭子のおでこにchu!とした。するつもりはなかったのだが、流れでやってしまった雄二。驚き、慌てて目を開けた圭子はみるみるうちに顔が真っ赤になる。
(唇はまだ早いけど、これぐらいは・・・いいよね?…ねっ?)などと相変わらずな雄二であった。
そして、その後も少し、話をしてからそれぞれの帰路に就いた。
翌日、火曜日もにぎやかに時が過ぎ、水曜日には中央掲示板に学年毎に今回の試験結果ランキングが貼りだされていた。上位100位までのである。一学年約500人であるから、ここに名前が載るだけでも大したものである。
期末試験なので実際は九教科なのだが、対象は主要五教科のみであるので500点満点での順位である。雄二は無論、断トツの2学年中のトップである。当然500点満点のおまけ付き。2位の人は466点。ちなみに圭子は461点で5位であった。
あっという間に日曜日、初デート当日。雨は降ってないが、日が差してないため、少しどんよりしていて、風も冷たい。
雄二はチェック柄のボタンダウン&ジーンズ、その上にデニムジャケットを羽織っている。
時間は10時40分。待ち合わせ場所の噴水前にはやはり待ち合わせしてそうな人達がチラホラ。
(そういえばこの頃ってベルボトムとか流行っていたよなぁ)などと思いながら周辺を窺っていた。
5分くらい過ぎた時、こちらに駆けてくる美少女はっけーーん!もちろん圭子である。
淡いピンクのブラウスにアイボリーのプリーツスカート、そしてブラウンのハーフコート。
「ハァハァ…ゴメン。。待ったぁ?」と息を弾ませながら聞いてきたので、
「いや、俺もさっき来たばっかやし。。。まずは呼吸整えなよ」と返して、落ち着くまでしばし待つ。
(な、なかなかの着こなしやんっ!かあいい~♪)と、内心ときめいてしまった。
落ち着いたところでボソッと「今日は眼鏡外したんやね。その服もよー似合ってるし、すげぇ可愛いやんっ!」と雄二が言うと湯気が出そうなほど真っ赤になって俯いてしまった。
(ほんま、かわええのぉ~!!ところでテンプレのナンパ野郎が絡むとかはないんやねぇ。。)
などと、どうでもいい事を考えながら、再び圭子が再起動するのを待つ。
「どうする?先にメシにする?このまま映画、観る?」と歩きながら尋ねると、まだそんなにお腹はすいてないらしいので、そのまま映画館に行くことにする。
3分も経たないうちに対象の映画館に到着する。
ここで上映されているのは『華麗なるギャ〇ビー』。
なんとあの名監督コッ〇ラが脚本担当である。主演はロバート・〇ッドフォード
(よかったぁ~♪無難な作品で。エ〇ニエル夫人だったらどうしようかと思ったわ)
胸をなでおろす雄二。
上映時間を確認すると次の上映時間は11:20かららしい。丁度いい時間である。
受付で優待券を2枚差し出し、中に入り、売店で飲み物を買って、館内に入る。
そんなに混んでなかったので二人共座れるみたいだ。ちょうど真ん中あたりの良さげな場所が空いていたのでそこに決める。
自然な流れで彼女をエスコートして座席に着く。
やがてブザーが鳴り響き、照明が落とされる。圭子の顔を窺うと瞳をキラキラさせていた。
どうやら観たい映画だったようだ。
恋愛映画っぽいみたいに感じたけど、どちらかと言えば人間の内面を抉ってくる群像劇っぽい内容だ。
途中、悲しい場面で圭子が涙ぐんだりしたので手を軽く握ったりした。
(この映画の内容は知っていたが、観るのは初めてやった。実際エグいわー)
それから映画館を出て、喫茶店で軽く食事をとる事にした。(もちろん俺が支払ったよ)
雄二はハムサンドとアイスコーヒー。彼女はホットケーキとミックスジュース。
さっき観た映画の事やら好きなアイドルの事やら色々話をしながら楽しく食事ができた。
(この頃は喫茶店は結構あったんやけどなぁ)
その後はウィンドウショッピングをしたり、本屋に行ったり。
(こっそりと彼女をのぞいてみたが、心底楽しんでくれてるようで何よりだわ)
こうして雄二達の初デートは(雄二としては)無難に終わった。
(中ぼーの初デートとしては上出来やろうな。最初から飛ばし過ぎてもなんやしw)
時刻は午後5時。家まで送ろうか?と尋ねたが恥ずかしいから。。という事で却下された。
ということで彼女を適当な所まで見送って、自分も帰路に着くため、バス停に向かったのだが、
その途中で「ぞくり」と何とも言えない嫌な喪失感?絶望感?…とにかくあまりよろしくない感覚を感じた。。。否、感じてしまったのだった。
次回は再び少しだけシリアスになります。
そのあと、少々バトルっぽい展開になるかもしれません。




