報告書087《幼き狩人》
【噛みつきグセのある兎】
港町ルークステラに停泊していた船の貨物に隠れて辿り着いた親に捨てられた少女。本来なら捨てられたことを嘆き泣き喚くのが当然とも考えられる年齢でありながら手を差し伸べる大人達に噛みついては逃げを繰り返し、いつしか「ルークステラ一危険な子兎」と悪評が出回り、誰一人として構おうとしなくなっていた。
そうして孤独になり、寂しさと飢えを感じながら死んでいくのだ、と幼いながらに彼女なりの終わりを悟った。
【自分より弱い者のために】
ルークステラの近くで孤児院を営んでいたアルに拾われたラビは、他にも自分と同じような境遇の子供達がいることを知り「自分が諦めることは自分よりも弱い者達に終わりを教えることになる」と考え、自ら食料を確保するための狩りを行うようになる。
人間でありながら獣人も驚きの身体能力で街の大人達から逃げ回っていた彼女にとっては隠れたり移動したりするのに使える場所が多い森は子供達にとっての遊び場同然だった。大人でも子供でも関係なく、彼らの食事となってしまうこともある危険な場所だが、それでも唯一自分のことを対等に扱ってくれる場所だとも言えるため、ラビは人間と話すよりも森で過ごす時間の方が長かった。
それ故に人との関わりを避ける傾向があり、繊細な彼女が心を開くのは自分から迫ることなく待ち続けることのできる者か、逃げることを許さない圧を与えることができる者に限られる。
【幼き狩人】
ラビの持つ権能は『狩猟』の神様より与えられたものであり距離を問わず獲物を補足できている場合に限り「必ず」矢を命中させることができる。例外的にラビが矢を放った後に自分が狙われていることに気が付き、そこから回避できるだけの速度を持つ者は回避可能だが、それは権能により速度の補正が掛かっている光速にも等しい矢を回避できるという意味でもあり、通常であれば不可能な領域である。
また、ラビ自身は気がついていないが『狩猟』の神様はラビを過剰なまでに優遇しているため気配を悟られにくくする能力や夜目が他よりも利くようにする能力を与えている。




