報告書048《擬似的支配者》
【二番手の吸血鬼】
本来なら強い力を持っていることで知られる吸血鬼でありながら何事も半端なことで知られたアステルは常に注目される位置にいるもう一人の吸血鬼を酷く妬み嫌っている。自分では決して辿り着くことのない場所へと何もせずに到達した天才とも言うべき存在は出来損ないの自分へ劣等感を与えるだけの存在であり、尊敬も憧れも覚えることはない。ただ、蹴落とすことだけを考えて生涯を過ごす。その中で唯一、彼女と比較されることのないことが眷属を増やすことだった。一度でも自分が噛み付いた相手は自分の望みを叶えるための眷属となりありとあらゆる命令に背かずに忠実に動く。夜に生きる者として、これほどの強みはないと自信を持っていた。しかし、そんな唯一のことさえ敵うことはない。簡単に眷属を増やすことはできないため苦労しているはずのもう一人の吸血鬼は綺麗な見た目や素直じゃない性格が知られていて、そこを好ましく感じる者が多く、さらに天然で知らないうちに他者を虜にしていることがあった。そのため、物理的に束縛することでしか眷属を集めることのできない自分はやはり劣っているのだと考えるようになった。
【自分の唯一】
いつも二番手止まりだったアステルはプロトタイプとなった際に自分の持つポテンシャルをより強力にされた。本来は噛み付いた本人しか眷属にできなかったが自分が直接噛み付いた相手には自分の持つ能力が付与されるため、その眷属が噛み付いた相手も眷属にするという者。一次眷属のみが対象でもアステルが多くの眷属を生み出せば波及するように増えていくためにアステルは重宝した。しかし、噛みつくという行為を前提とするためにアステルは人を眷屬にすることを止めた。分かりやすく扱いやすい獣を眷属とすることで自分の眷属の規模を証明するよりも簡単に力を示すことができる。そして、数を整えていつか自分を追い詰めた吸血鬼よりも優れていることを証明すると誓う。
【擬似的支配者】
アステルは他のプロトタイプの力を奪って自分の力とし、完全な存在となることを目的とする『略奪者』の構成員。組織のリーダーである人物に「自分に欠けているものを埋めることができれば完全となり、今まで叶わなかった願いが成就する」と聞かされた。アステルの思う欠点とは「能力の対象が生きている者限定」ということと「支配下相手の気持を知れない」ことにあった。死者の言葉さえ聞くことができ、それを操ることのできるイルヴィナの「墓守」としての力はアステルの欠点を埋めることができる唯一の力。しかし、アステルの性格は目の敵にしてきた吸血鬼に勝つことを優先し他者を蔑ろにする傾向にあったためにイルヴィナの力を奪ったとしても死者はアステルに自分達が持っている憎悪ばかりを伝え、それに応えようとしないアステルに従うことはない。二番手でいることを嫌うため勝利のための作戦を共に考えたり、隣で助力してくれるような者とは気が合う。自分を「二番手の吸血鬼」としてではなく「アステル」として認知してくれる者には友好的に接する。また、自分のことを群れの中の一人として考えてくる近しい権能を与えられたアイドルのことをもう一人の吸血鬼同様に毛嫌いしている。




