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偽物でも許されたい  作者: 厚狭川五和
『使役する者』テイマー
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報告書017《使役する者》

【臆病な虎】

 真っ直ぐな性格で誰にでも好意的に接する虎は一室に閉じ込められた十人の中で穏便に生きることを望み意見を求められた時以外には自分から意見を述べることもなく同調していた。

 その同調する心は環境が変わっても失うこともなく守られ続けていたが、彼のように波を立てず穏便に過ごそうという気風を微塵も見せずリーダーシップという言葉を盾に自分の意見を常に主張してきた獅子の獣人は意見が割れる度にストレスを感じ、環境が変化する度に自分の思い描いた理想が崩れ徐々に自律性を失っていく。やがて、ただの獣と変わらないほどに理性を捨てた獅子は今まで過酷な環境を共に生きてきた仲間を殺して肉を喰らい、反発した女は犯した。

 そんな自分勝手な行いを認められなかった虎は獅子を止めるために反抗したが理性を失った獣と躊躇の残る彼では力に差ができるのは当然であり、瀕死になり身動き取れなくなるまでぼろぼろにされた虎は隅の方で弱い自分を悔やみながら踞るだけだった。


【使役する者】

 それなりの時間が過ぎると獅子の暴挙はより悪化していて犯した女が孕んだ子を自ら喰い殺し始め、誰も逆らえないばかりか抵抗するだけ死が近づくだけと成すがままになりつつあった。

 しかし、虎は隅の方で自分の体を癒しながら思案し皆が助かるためにはどうすればいいのかを必死に考え、一度は死に目を見たことにより獅子に逆らい殺されそうになろうと関係ないとまで考えられるほどに心身を喪失していた。

 虎はもう一度だけ獅子の前に立ち塞がり残された数少ない仲間を救うために叫ぶ。

 死を間近に経験し、それでも仲間を優先した虎の咆哮は暴走していた獅子にとって、ただの獣に成り下がった者にとっては何よりも恐ろしく、挫くことのできない頑強な意志を持った言葉として伝わり強者には逆らえないという生物的本能に働きかけて二度と仲間に手出しできない状態へと追いやった。

 それから数年をかけて精神を回復した後も虎は何よりも仲間や絆を重んじる性格だったため、捨てられた子供を見捨てることができずに奴隷という名目で自分のところで養ったり一人でいる者に寄り添うことが多い。また、過去のトラウマから自己主張の激しい者を嫌うが本物の指導者としての風格を持つ者には絶対の信頼を向ける。

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