「間」が難しい
B:とりあえず、5万字ほど書いたわ。一日1万字ぐらいは書けるね。確かに。
A:おお、おつかれさま。5万字書いた感想は?
B:うーん、まあ、勉強にはなった。エンタメ小説の構成って思っていた以上に論理的に、展開とか人物を書いていかないといけないから、あれだね、展開が似てしまうところがあるね。
A:なるほど。まあ、それはあるでしょうね。
B:エログロ、恋愛、死、暴力、戦闘とかわさ、何ていうか、定番の味付けみたいな感じっていうか、「はい。ここで展開がありましたよ。」っていうのをお知らせするための、焦点をうまく作れるんだよね。そうなると、なんか、そこらへんの強い刺激をベースにしてまとめ上げる形で、話を展開していくわけじゃない。
A:はい。
B:あと、キャラとかも基本的に明確な目標とキャラ付けがないと行けないから、あれって現実の人間とは違ったなにか「人間のような別のもの」だよね。
A:なるほど。
B:あと、間のとり方がむずかしい。
A:というと?
B:話の展開をどこまで省略して、どこまで、省略しないかかな
A:ああ。脚本術っぽい。
B:語り手の考える時間間隔と、読み手にとっての時間間隔って違うじゃん?
A:そうですね。
B:どのぐらいまできちんと語ったら読み手が「ここに、一連のやりとりがあった」と感じるのか、その塩梅がわからんというか、難しい。
A:それって、いわゆる。「文章を寝かせろ」ってやつでは?
B:そう。それ「も」ある。
A:ほかには?
B:さっき言ったように、文の省略の問題ね。最低限に省略した表現でも、うまく伝わるときは伝わる。それこそ『ショーシャンクの空に』とかは、省略の仕方が達人の域じゃん。たった二時間の尺に多面的な深みをもたせつつ、シンプルなストーリーラインも構築してる。キャラ立ちと、ストーリー展開と、設定紹介を同時併行ですすめていくような詰め込み方を、一つ一つのプロットにしているけれど。
A:まあ、あの脚本は構造的にも良く出来てるし、ディテールの詰め込み方としてもよくできてますよね。
B:そうなのよ。
A:でも、ハリウッド脚本って、優秀な脚本スタッフが何人も時間をかけてつくるものですからね。そこを意識しても……
B:いや、もちろん「ちょっと書いてみました」で、あんなのが書けるはずがないってのはわかってるし、あれを書きたいとも書けるとも一言も言ってない。
ただ、こなれてる人ってそこらへんの「間」の勘所というか、色みたいなのが体感レベルであるのかなあ、と思って。俺もさ、エッセイとかだと、そういう「分量」とか「ヒキ」の量の体感とかは多少はあるのよ。その感覚が小説の文章だと、わかんなくなる。