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N. E. O. S  作者: オルトマン
CODE:N.E.O.S
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ヘカトンケイル

 アランの部隊を乗せたエレベーターはABYSSの最下層へと辿り着く。彼らがエレベーターから降りると同時に、前方の扉が彼らを出迎えるかのように開く。ひんやりとした空気が流れだし、彼らを包み込んでいく。


「嫌な雰囲気です…。…進みたくない。」

 扉の奥から放たれる気配は気付けば強烈な殺気に変わっていた。それに気圧されたルナは思わず弱音を零してしまう。


「この扉の先からLILITHの気配を強く感じるわ。」

「進むぞ…警戒を怠るなよ。」

 アランは部隊を進める。彼ら全員が扉をくぐった瞬間、扉は閉じ、部屋の中に明かりが灯った。


「!?」

「ちょ…何あれ!?」

 広大な部屋の前方の壁には巨大な機械が接続されていた。それに加えて、部屋の壁には無数の培養器が接続されており、その中には人型の影がうっすらと見える。


「これは一体…?まさか、あの機械が門番…?」

 アランがその巨大な機械に目を向けた時、部屋の中央に少女の姿をした3Dホログラムが現れる。彼女は険しい顔をしており、明らかに彼らに大きな敵意を向けていた。


『侵入者…ここに何の用?』

 ツンとした顔で彼らを睨み、腕を組みながら彼女は質問する。


「…お前が知る必要はない。」

 アランの返答に彼女は不気味に微笑み、宙へと浮かび、機械の前に移動する。


『あの人の邪魔をしに来たんでしょ?ここまで来るなんて普通じゃないし。侵入者のお前たちは…この人たちと同じように、僕の“手”になってもらうわ!』

「僕の手?…何を言って…。」

 壁に接続されていた培養器が開き、その中に入っていた人型の生物が次々に地面へと落とされる。


「な!?に、人間!?」

 少女のホログラムが機械の中央にある丸い装置の中に入るように消えていくと、その巨大な機械が音を立てて稼働する。


『自己紹介がまだだったね。僕は…エリオア・ヘカトンケイル。めいど?の土産に教えてあげる!』

 エリオアの声が響いたその時、部屋の上部に設置されている拡声器から甲高い音が放たれる。それを耳にしたルナとエリーは膝をついて倒れこむ。


「ぐっ!!?」

「どうした、おい!?大丈夫か!?」

 アランが彼女たちに叫ぶ。


「頭が…割れそう!」

「これは…あの時の…!」

 エリーはブレイドと共にスペンサー・タワーへ向かった時のことを思い出した。あの時に感じた強烈な共鳴反応は、まさしく、今感じているそれだった。


「た、隊長!!あれ…!!」

 隊員が異変に気付く。培養器から排出された人間の体がどす黒く変色し、溶解し始める。ドロドロに溶解したそれは手の形へと変形していき、無数の黒い手が生えてくる。その一部はヘカトンケイルを守るように取り囲んで障壁をなす。


「ぼさっとしてんじゃねえ!!撃ちまくれ!!」

 アランの合図とともに部隊員はヘカトンケイル、黒い手に向って発砲する。ヘカトンケイルを覆っている障壁は打ち破ることはできなかったものの、黒い手単体は容易に破壊することができた。しかし、それは一時的なものであり、元から液状化しているそれはすぐに寄り集まり再び手の形を作り出す。


「ちっ…!!エリー!!ルナ!!早く戦線に加われ!!」

「…ック…!分かってる…わよ!!」

 アランの怒声を聞いたエリーは頭を押さえながらも立ち上がる。一度それを経験しているせいか、彼女は強烈な共鳴反応に慣れつつあったものの、初めて経験したルナはまだ立ち上がることができていなかった。そんなことには構わず、アラン達の方に無数の黒い手が襲い掛かってくる。


「やべえ…!!」

 エリーは高速移動で、アランは踵を返し、頭を押さえて膝をついているルナを抱えてその場を素早く回避する。


「う、うわああああああ!!!」

 逃げ遅れた何人かはそのまま黒い手の塊に飲み込まれ、衣服と武装を残して跡形もなく消えた。それを見た残りの部隊員はパニックに陥り、半狂乱で黒い手やヘカトンケイルに向って銃を乱射する。


「くっそたれがあああああ!!!」

「ちょっと、落ち着いて!!」

『ははははは!!無駄無駄!!』

 銃を発砲する部隊員めがけて無数の黒い手が襲い掛かる。


「来るな…来るなああああ!!!」

 一瞬にして彼らは飲み込まれる。黒い手はすぐにエリーめがけて襲い掛かる。彼女は高速移動でそれを回避し、壁の培養器へと足をかけ、そこからアランとルナの様子を見る。ルナは未だに共鳴反応から抜け出せていないようで、苦しげな表情を浮かべていた。


(復帰するのは時間がかかりそうね…ここは…。)

 エリーは銃を抜き、自分に注意を向けるためにヘカトンケイルに発砲する。


『何を見てたの?僕には効かないよ!』

 彼女の思惑通りにエリオアは標的をエリーへと絞る。膨大な数の黒い手が彼女めがけて襲い来る。


(やっぱり…見た目通り思考は子供そのものね。このまま、ルナが回復するまで…!)

 幾重にも伸びてくる黒い手を、エリーは高速移動で壁から壁へと移り回避する。そして、自分に注意を向かせ続けるために、合間合間でヘカトンケイルに射撃も加え続ける。順調かのように思えていたが、彼女だけの相手に飽きたのかエリオアはアラン、ルナの方へ注意を向ける。


『おっと…お前たちを忘れていたわ。このまま無視するのは面白くないでしょう?』

「おい、ルナ!早く構えろ!!」

 黒い手が彼らの方へと伸びていく。しかし、ルナはまだ立ち上がれそうにないようであった。


「クソッ!!」

 そう吐き捨て、アランは迫りくるヘカトンケイルの手々を打ち落としていく。そこにエリーも加わり、黒い手の進行を阻む。


『中々やるね。でも、これはどうかな!?』

 彼らを弄ぶかのように、少しずつ手の数を増やしていく。じわじわと詰められていき、遂に黒い手は喉元まで迫りくる。


「ちょちょちょ!!!こ、こんなん無理よ!!!」

「黙って手ぇ動かせ!!」

 切羽詰まった彼らにとどめを刺すように、黒い手が寄り集まり、まるで濁流のように一気に流れ込んでくる。


『さあ!これはどうする!?』

 眼前を覆いつくすどす黒い濁流に二人はこれまで以上の絶望を感じる。よもや銃や何かで対処出来るものではなく、彼らの脳裏に諦めに似た感情が沸く。そんな折に、ようやくルナが立ち上がり、二人の前へと颯爽と駆け出る。


「ルナ!?」

「…任せてください!」

 ルナの手の平から青い閃光が放たれ、ヘカトンケイルが操る黒い手の集合体を吹き飛ばした。


「…とんでもねえ力だ…。」

 濁流を思わせる手の集合体を一瞬にして破壊した彼女の力に、アランは若干恐怖を覚える。上位種と戦った時よりもルナの力は増幅しているようであり、彼女の周りには青い電流が駆け巡っていた。


「清々しい気分です。こんな感じは初めて…力が体のそこから湧いてきます。」

 先ほどとは見違えるような晴れ晴れしい表情をした彼女は、軽やかな口調でそう言う。それを聞いたアランは若干引きつつもほくそ笑む。


「そ、そりゃあ頼もしい限りだ。…ここから反撃と行こうか。」

「っしゃあ!やっと、こっちのターンってわけね!」

 調子づいたエリーが意気揚々と言い放つ。


⦅…共鳴反応で覚醒した?…めんどうね。⦆

 調子を戻すルナ達にエリオアは不機嫌そうな声で言い放つ。


『あまりいい気にならないでね!お前たちなんか僕がその気になれば、簡単につぶすことができるんだから!!』

 彼女はそう叫び、先ほどとは比べ物にならないほどの膨大な数の黒い手をルナ達へ伸ばす。


「行くわ!」

 ルナは雷撃を操り、次々と黒い手を焼き切っていく。


『な…!』

 この快進撃にひるんだエリオアの隙を突き、ルナはヘカトンケイルに強力な雷撃を放つ。それはヘカトンケイルを覆う黒い手を焼き払い、本体の装甲を一部損傷させる。


「クソッ…ダメか!」

『…!?よくもやったわね!!』

 彼女はすぐに黒い手を纏い直し、脅威に感じたルナをターゲットに定めようとした時、こちらに向かってくるエリーの姿が目に入る。


『ちっ!図にのるんじゃない!』

 一気に黒い手がエリーの方へと勢い良く伸びてくる。その手のいくらかが彼女に触れる寸でのところで、それはアランが放った銃弾に打ち落とされる。


「実戦慣れをしていないな…敵はエリーだけじゃない。もっと、広い範囲を見るべきだ。」

『くっっそ!!!』

「ルナ!!任せたわよ!!」

「エリーさん!?」

 エリーはブレードを振りかざし、ヘカトンケイルに向って神速のごとく飛び掛かる。


『させるかああああ!!!』

 すぐさまエリオアもこれに阻止しようと再び黒い手を彼女へと向けるが、先ほどと同じようにアランにすべて打ち抜かれる。


「うおりゃああああああ!!!」

 エリーは勢いそのままに、ヘカトンケイルを覆う黒い手をブレードで切り裂く。


「…!今だ!!」

一瞬、露になった本体にルナは狙いを定め、強力な一撃を放つ。雷撃はエリーの傍をかすめ、ヘカトンケイルの本体に直撃する。電流はヘカトンケイル内を一気に駆け巡り、その精密機器、そして、コアであるエリオア本体を致命的に焼き焦がす。


『ぎゃあああああああああ!!!!』

「やった…!」

 けたたましい断末魔と共にヘカトンケイルはその全機能を停止する。それとともに黒い手もその形を保てなくなり、辺りにはおびただしい量の黒い液体が広がっていく。


「まっ、私にかかればこんなもんよ!」

「お手柄なのはルナだろが、全く…。」

 得意げな顔をするエリーに呆れたアランがそうこぼした時、中央の床が開き下へと続く通路が現れる。


「…これがLILITHへと続く道みたいだな。…ん?」

 ふとルナの方に目をやると彼女がヘカトンケイルの近くに立ち、それを見上げていた。


「……。」

 彼女がそれに触れようとした時、核を収容していた部分が誤作動で開き、床にその中身が耳心地の悪い音を立てて落ちてきた。


「な、何なの…これは…!」

 それはテラトマ体を思わせる肉塊であり、大部分はルナの雷撃で焼けただれていた。


「…おいおい、まさか、これが声の主か?ホログラムは少女の姿をしていたが…。」

「この機械を動かすために、肉塊に変えたって言うの?」

「…さあな。元からこの姿だったかもしれない可能性もある。そうじゃない場合、あの少女が自ら望んでこうなったはずだ。」

「…どうして…。」

 アランの答えが正しいとしても、なぜ、エリオアがこの選択をしたのか、なぜ、ここまでするに至ったのかを理解できず、ルナは困惑した表情を浮かべる。


「考えるのは後にしてさ、さっさと先に進みましょう。」

 エリーは素っ気なくそう言い、開いた道の先へと進んでいく。


「あいつの言う通りだ。今は任務に注力しろ。」

「…了解。」

 ルナは浮かんだ疑問を振り払い、LILITHへとつながる道の先へと進んでいった。


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