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N. E. O. S  作者: オルトマン
遺産
59/71

集結

 倒壊したビルの瓦礫の上にギルバードは立っていた。銃口を向けるアランの部隊を意に介さず、彼はレナートに向けて声を発する。


「久しいな、レナート。君のような重要人物が、危険極まりない地上に出てくるとは…何か重要な用でも?」

 彼女は彼を睨みつける。


「ギルバード…!」

「そのカプセルに入っているのは…ゴア・ドールか?周りの護衛に比べれば格段にましだが…そんなものでこの私が…」

 続けようとしたギルバードだが、何かに気づきルナの方へと目をやる。


「…何を持っている?」

「…え?」

 何かを察したギルバードは表情を崩す。彼は瓦礫の山から飛び降り、彼女たちと対峙する。場に尋常でない緊張が走る。アランの部隊は彼の行動に注意しながら、レナートの攻撃命令を待つ。


『エクスシスだ。…レナート、交戦を許可する。ただし、あくまでゴア・ドール起動までの時間稼ぎだ。起動後はすぐにその場を離れろ。』

「…了解。」

 エクスシスからの無線が入る。レナートはアランに目で合図をする。


「ファイア!!」

 アランの合図とともに部隊員は一斉にギルバードに向って発砲する。彼はすぐに前方にシールドを張り、銃撃を防ぐ。その隙にレナートはゴア・ドールの起動プログラムを実行しようとする。


「時間稼ぎか…。こんなもので足止めできると思っているのか?」

「クソッ!攻撃が届かない!!」

 アイリスの狼狽をよそに、アランはルナに命令する。


「ルナ!!」

「!」

 彼女は発砲を止め、右手をギルバードの方へと向ける。


「?…何の真似だ?」

 その束の間、強烈な雷が彼に襲い掛かる。ルナから放たれた強力なエネルギーは彼のシールドを粉砕する。


「な…に!?」

 無防備になった彼の体を銃弾がいくつか貫通していく。彼は痛がる様子も見せずに、大きく飛び上がり、近くの倒れたビルの上へと退避する。


「何発か受けたはずだが…化け物め…!」

 ギルバードはルナを見下ろす。


「あの小娘…ただの強化兵ではないな。いや…それよりも…。」

 彼はレナートの方へと目をやる。様子を見るにゴア・ドールの起動まで秒読みであった。


「奴ら、ゴア・ドールを起動して撤退するつもりだろう。それはそれで戦力を削れて良いが…あの小娘から放たれる不穏な雰囲気が気になる。…まずは、あれの起動を止めようか…確実に。」

 ギルバードの姿が一瞬で消える。


「消えた!?」

「まさか…!」

 アランはレナートの方へとすぐに振り返る。彼の目に、ギルバードが今にもレナートを殺めんとする光景が入り込む。咄嗟に行動に移すも間に合いそうにない。


(クソが…!!)

 レナートの指が起動ボタンに届く前に、ギルバードの変異した黒い鉤爪がその体に迫る。その時、眩い閃光と共にギルバードの右腕が宙を舞う。


「な…!?君は…!!」

 彼の懐に謎の男が迫り、その手に持った高周波ブレードを再度振りかざそうとしていた。ギルバードは左腕を一瞬で鋭い鉤爪に変異させ、反撃に出ようとする。しかし、アランの部隊とは別の方向から彼の左腕めがけて銃弾が放たれ、その反撃は阻まれた。


「なんだ…と!!?」

 男のブレードが力強く振りかざされ、彼の腹部を深く切り裂く。その剛力さに、彼は思い切り後方へと数メートル吹きとばされる。


「フィフス、フォース!!」

 その合図と同時に遠方から2つの射出物が煙を上げながら向かってくる。それはギルバードが吹き飛ばされた地点へと正確に着弾し、爆発する。


「ロケットランチャーか!?」

「や、やったの!?」

 アランの部隊がざわつく。煙を上げる着弾地点を見ながら、男は無線で指示を出す。


「ジェイド、アンバー…着弾地点から目を逸らすな。フィフス、フォース…次弾に備えろ。」

『セブンス。アンバー、ジェイドは了解。』

『こちら、フィフス。流石に生きてはないんじゃねえか?』

「…次弾に備えろ。」

『へいへい…。』

 セブンスは着弾地点へと歩を進める。煙に紛れて、黒い触手が幾重にも現れ、彼に向って勢いよく向かってくる。


「やはり、あれくらいでは…。」

 彼に伸びる触手だが、遠方から放たれる銃弾に次々と撃ち落されていく。


「まさか…君がここに来るとはね。どういうつもりだ?」

 煙が晴れると、そこには先ほど受けていた傷を全治しているギルバードがいた。


「アンバー、ジェイド、援護しろ。フィフス、フォース、隙を狙え。」

『了解。』

『了ー解!』

 ギルバードは不敵な態度を崩さない。


「ヘイブンに籠っていれば、死ぬことはなかったのになあ?…私の善意を蔑ろにした罰を受けてもらおうか。」

 彼の姿がセブンスの目の前から消える。一瞬にして背後を取ったギルバードは彼の延髄めがけて一撃を放つ。


「そうは…。」

「させない。」

 ジェイドがギルバードの攻撃を銃弾で阻む。そして、息を合わせるようにアンバーが彼の両足を打ち抜いて体勢を崩す。


「…小賢しい。」

 セブンスがブレードを振りかざそうとするが、彼は即座に触手をはやして距離を取りかわす。


「…。」

「やってくれるな…。だが…いつまでも、有利な状況は続かない。」

 セブンスに無線が入る。


『すまねえ、セブンス!援護が難しくなった!』

「どうした…?」

『敵襲が…!何なの一体!?』

「フィフス!ジェイド!何があった!?」

 焦りを隠しながら、セブンスは彼らに応答を仰ぐ。しかし、彼らからの応答は来ない。彼の異変に気付いたギルバードはにやりと口角を上げる。


「どうやら…支援は望めないようだな、セブンス?」

 セブンスの額から一筋の汗が流れる。ギルバードの一挙手一投足も見逃せない状況となったことに、彼は大いに焦燥する。確実な死が迫ろうとしていた。


「最後に聞いておこうか。なぜ、ヘイブンを抜け、ここに…私と対峙した?」

 彼はセブンスの表情を窺う。


「確かに…これまで、色々と君らをこき使った。君らがやりたくないこともやらせた。かつての仲間もその手にかけさせた。“仕事”と割り切れなかったこともあるかもしれないが…私は約束を果たしたはずだ。」

「…ええ…そうですね。」

 その答えに彼は首をかしげる。


「…では、なぜだ?」

「…これ以上…。」

「うん?」

 溜めた言葉を彼は吐き出す。


「貴方が苦しまないように…です。」

 その発言にギルバードは目を見開くも、すぐに表情を元に戻す。


「戯言を抜かしおって…。そろそろ、終わりにしよう。」

 彼の姿が目の前から消え、セブンスの眼前に現れる。


「!!」

 鋭い手刀が彼の喉元へと迫る。それを何とか反射で躱すが、すぐに次の攻撃が襲い掛かり、彼の胸元を深く切り裂く。


「く…そ!!」

 咄嗟に反撃に出ようとするも、それがギルバードに届く前に彼は蹴り飛ばされる。空中で体を翻し、何とか地面に膝をつきながら着地する。


「仲間の助けがなければ、この様か。」

 彼の背後からギルバードが語り掛ける。


「死ね、セブンス。」

 セブンスはすぐに振り、反撃に転じようとする。間に合わないのは分かっていたが、自身の死と引き換えに少しでもギルバードに爪跡を残そうと覚悟したまでだった。

 ギルバードの手刀がまさに彼を引き裂かんとした時、見知らぬ二人の少女が突然現れ、その腕を切り飛ばし、さらに、腹部から胸部を引き裂く。それを好機と見たセブンスは乗じて、渾身の一撃を彼の胸へと放つ。


「ぐ…が…!ば…馬鹿な!!?」

 油断していたギルバードは吹き飛ばされ、受け身も取れずに地面に叩きつけられる。


「…君たちは…?」

 セブンスは二人の少女に目を向ける。


「感謝しなさいよ。私のおかげで助かったんだから!」

「…そうですね、エリーさん。」

 ギルバードがふらつきながら起き上がる。その目は二人を睨みつけている。


「エリー…エミリア…!なぜだ…!」

 彼らの前に現れたのは行方不明になっていたエリー・ブライトと、ギルバードがノメリアに抹殺させたはずのエミリアだった。


「アンタを殺すために地獄から蘇ったってわけよ。」

「皆の仇は…討たせてもらうわ。」

 彼は表情を強張らせる。


「ほざけ…!!」

 すぐそばにあった巨大な瓦礫を触手で掴み、思い切り投げつける。


「パパ!!」

 エミリアがそう声を上げると、3人の前に大きなシールドが現れ、それを防ぐ。


「なん…だと…!?」

 3人の後方から一人の男が歩いてくる。一見普通に見えるが、その顔には黒色の血管状の模様が浮かんでいる。


「長官…久しぶりですね。」

「君は…!」

 彼の姿を見たギルバードはすぐにそれが赤髪蔵馬だと認識した。


「その姿…浅羽と同じく、LILITH遺伝子を…!」

「…パパは隠れていて!」

「……分かった。」

 エミリアの忠告を素直に聞き入れ、彼は近くの物陰へと避難する。


「まあ、いい…!ここで君らを皆殺しにできれば…後が楽になる…!」

 狼狽えながらも彼は再び攻撃を仕掛けようとする。しかし、体に異様な違和感を覚え、それを取りやめる。


(思うように力が…入らない!まさか…!!)

 彼は胸部の傷に手を触れる。切り裂かれた胸部は未だに癒えておらず、吹き飛ばされた腕も再生しない。それどころか少しばかりの崩壊が起こっていた。


「こんな…ことが…!ぐ…!!」

 彼は地面に膝をつく。エリー、エミリア、セブンスが詰め寄ってくる。


「ここで終わりよ、ギルバード。」

「…ほざけ。ただのまぐれで粋がるな!…この…私を本気にさせたことを!後悔させてやる!」

 彼の体から複数の黒い触手が生える。


「なっ!?」

「離れろ!!」

 その触手が彼の体を包もうとした時、彼方から微かな風切音が聞こえてくる。それを耳にした彼はほくそ笑む。


「ククク…そうか。私が手を下す必要はなくなったようだ。」

「はぁ?何言って…」

 エリーが言い切る前にセブンスが彼女を制する。


「ちょっ…!何よ?」

「何か聞こえないか…?」

 何かを感じたエミリアがそれに続ける。


「強大な何かが近づいてくる…!」

 晴天の空の彼方から黒い影が猛スピードでこちらに接近してくる。ギルバードは隙を見て大きく跳躍し、離れたビルの瓦礫の上へと降り立つ。彼は大きく深呼吸をして、気持ちを落ち着かせる。


「ふぅー……少し油断しすぎた。次に会うときはこうはいかない…。次があればだがね?」

 彼はそう言い放ち、その場を立ち去ろうとする。


「クソ!待ちなさい!!逃がさな…!!」

「危ない!!」

 彼を追おうとするエリーをエミリアが引き留める。空から放たれた衝撃波がエリーの目の前に降り注ぐ。


「きゃあ!!!?」

「伏せろ!!」

 すぐにセブンスが2人の頭を押さえて地面に伏すと共に、彼らの頭上を衝撃波が走る。


「ちょちょちょ!!何なのよ!!」

 切れ気味のエリーに構わず、セブンスは冷静に新たに現れた敵を捉える。巨大な黒い影が彼らを覆う。


「こいつは…一体…。」


 彼らの前に現れたそれは巨大な両翼を備えた、飛行型リリンの上位種であった。


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