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N. E. O. S  作者: オルトマン
崩落
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滅びの幕開け

「N.E.O.S…!?」

「ホモ・エクセルサスの胚を組織作る母体、そして、N.E.O.Sの元となった素体の生物を積極的に排除する役割を持つ。生き残った旧人類を掃滅し、地球上に新人類のみを残すことができる。」


 ギルバードは都市部へと進んでいくNEO LILITHを眺めながら続ける。

「人間社会、文明のシステムの大部分は停止し、衰退する。無秩序となった世界で生き残った人類は、派閥を組み、争い、殺し合い…勝手にその数を減らしてくれる。N.E.O.Sは共通の敵となりうるが…絶対的に人類は一つになることなどはできない。必ず、水面下で足を引っ張りあい、不意なところでそれが露呈し、さらなる混乱を生み出す。」


 彼はエリーに問いかける。

「…さて、これから君はどうするのかね?」

「あんたを…殺す…!」


 首をかしげながら彼は続ける。

「殺す、か。…意味のない。仮に私を殺せたとして、全世界で、この地上の空へと飛翔したNEO LILITHをどうするというのだね?」

「多くの国が指をくわえてみてるわけないでしょ。軍が出動すれば被害はそれほど…。」

「残念だが、軍はほとんど機能しないだろうよ。ヘカトンケイルの無数の黒い手によって、主要な軍事施設はパニック状態だ。現に、NEO LILITHが現れたというのに何の音さたもない。」

「それは…まだ…!エクスシスさんがきっと何とか…!」


 エリーは続けようとしたが、彼の言葉にさえぎられる。

「さぁ…新たなる誕生の序章が始まるぞ。」



 都市の中央部分まで到達したNEO LILITHが大きく翼を広げると、そこに局在化している産生したウイルスを蓄積させる嚢胞状組織が破裂していく。

「ちょ…なんだよあれ?」

「本物!?」

「そんなわけないじゃん、なんかの撮影でしょ。」

「もしかして、宇宙人!?」

「なんだよ、あれ!?やばいんじゃないのか!?」


 多くの民衆は突如として現れたあれがなんなのかは当然わからず、逃げ惑うものや興味を示して集ってくるものが交差し、都市はパニックに陥った。

 その最中、一人、また一人と体調不良を訴えていた人々が地面へと伏し、激しい痙攣を始める。ある者は体中から血を吹き出した後に溶解し、また、ある者は体から無数の触手が突き出して、個々に、あるいは、周囲の者を巻き込んで猛烈な速さで変容していく。

 瞬く間に、都市は地獄へと変貌する。感染者は溶解して絶命するか、化け物へと変容して非感染者を積極的に襲っていく。逃げ惑う人々はNEO LILITHから散布されたウイルスの拡散スピードから逃れられず次々と感染していくが、建物の内部へと非難した者たちはウイルスの魔の手からは逃れることができた。

 


 都市の至る所から煙が上がり、人々の悲鳴が響いてくる。エリーの顔が青ざめていく。

「そんな…。」


 背を向けたままギルバードは言う。

「良い出だしだ。このまま順調にいけば、地上はN.E.O.Sの跋扈する楽園へと変貌するだろう。N.E.O.Sの数が多ければ多いほど、エクセルサス誕生の期待値も上がるというものだ。」


 彼はゆっくりとエリーの方へ振り返る。

「後は…邪魔者を始末するだけだが…。君の返答次第では見逃してやらんこともない。」

「…どういう意味よ。」

「君はLILITHの遺伝子を持っている。エクセルサスとは程遠いが…サピエンスと比べれば種間の距離は圧倒的にこちらに近い。」


 彼はそっと手を差し出す。

「私は慈悲深い。意外かもしれないがね?君がこちら側に来るのであれば…」


 彼が言い終わる前に、エリーはその手にめがけて発砲する。弾丸は命中し、指を2,3本吹き飛ばす。

「…!?」

「これが答えよ、ギルバード・スペンサー!アンタはここで殺す!!」

「…なるほど。君の意志は理解したよ。」


 千切れた指の場所から黒い触手が伸び、瞬時に指が再生される。

「ならば、ここで無駄に命を散らすがいい!」


 ギルバードの姿が一瞬にして消え、背筋に強烈な寒気が走る。エリーは咄嗟に身を躱す。

けたたましい音を置き去りにして、コンクリートの地面が深く抉れる。

「こんのやろおおおお!!!」


 彼女は素早く銃を構え、彼めがけて乱射する。打ち出された弾丸のほとんどは彼の体を打ち抜くが、彼は平然と立ち、倒れることはなかった。

「な…!」


 彼は軽くほくそ笑む。

「エクセルサスを脆弱なサピエンスと同等にしてもらっては困るな。そんなものでいくらこの体を打ち抜こうが、この私を殺すことなんぞできん。」


 彼は手を前にかざす。その手のひらから鋭い黒色の触手が複数生え、エリーめがけて勢い良く伸びてくる。彼女は高速移動でこれを躱していくが、風を切るような速さで迫りくる触手の猛攻に次第に押されていく。

「このっ…!ちょこまかと!…きゃあああ!」


 触手が彼女の頬をかすめ、血が宙を舞う。それが彼女の目に入り、視界が一瞬だけ奪われる。その束の間に、2本の触手が彼女の腕に絡みつき拘束する。

「しまった!クッソ…!離しなさいよ!」

「実戦経験が少ないとはいえ、この程度か。まぁ…所詮、君はエクセルサスの能力を確認するために作った人形だ。」


 触手の鋭い先端がエリーの目の前に定まる。

「死ね。」


 触手がまさに彼女の額を貫こうとしたとき、屋上に銃の発砲音が鈍く響く。

「…なんだ?」


 こめかみに痛みを感じたギルバードが手を触れる。手には血がべっとりと付着していた。彼は発砲音がした方向へと顔を向ける。そこには銃を構えたブレイドが立っていた。

「まさか…ゾームが人間如きに…?」


 ブレイドはすぐさま彼に向って銃を撃つ。放たれた弾丸は彼の額を貫き、彼はそのまま後ろへと倒れる。エリーを捉えていた触手もそれに呼応するようにほどけていく。

「ブレイド!」


 彼女はブレイドの元へと駆けていく。

「無事だったのね!ここに来たってことはあいつを倒したの?」


 彼は首を横に振りながら言う。

「いや、ノメリアがあいつを引き受けてくれたんだ。」

「ノメリアさん居たんだ…。おかげで助かったわ。でも…。」


 暗い表情をする彼女を見て彼は察する。

「間に合わなかったか…。とりあえず、エクスシスさんに連絡を取…」


 無線機を取り出したブレイドが目を丸くして固まる。彼の目線はエリーの後方に向いていた。

 嫌な予感がしつつも彼女は後ろへと振り返る。そこには頭を打ち抜かれ絶命したと思われたギルバードが立っていた。

「な!?」


 彼は口を綻ばせながら言う。

「頭を打ち抜かれる体験は初めてだったのでね。私としたことが…ほんの少し、意識を失ってしまったようだ。」

「なんなのよ…!不死身だって言うの!?」


 狼狽え、焦るエリーに彼は答える。

「別に不死身ではない。君たちがエクセルサスの殺し方を知らないだけだ。」


 そう言い放った彼に対して、ブレイドはブレードを引き抜き構える。

「撃ってだめなら、バラバラにすればいいだけだ。そうだろ?」


 それを聞いてギルバードはあざ笑い、余裕の表情を見せる。

「ゾームを倒したくらいでいい気になるなよ、小僧。貴様らの力なんぞ、エクセルサスの足元にも及ばんことを身をもって知るがいい。」


 エリーもブレードを抜いて構える。

「あいつ…初めの任務であった女のシールド能力も持ってるわ。気を付けて…!」

「了解だ。行くぞ!!」


 啖呵を切ってブレイドがギルバードへと飛び掛かる。彼は一瞬で姿を消し、ブレイドの背後へと回り込む。

 それをエリーが高速移動で追い、追撃をくわえようとするが、その行動を読まれたように彼女に向って鋭いシールドの切っ先が伸びてくる。

「!やっばい…!」


 高速移動のスピードが乗ったエリーはそれを完全に躱せず、右肩を貫かれる。

「ぐっ…!くっそ!!」


 体勢を崩したエリーにギルバードがもう一度シールドを展開しようとするが、それに気づいたブレイドが阻止する。彼は直感で後方のギルバードへとブレードを振るう。ブレードはギルバードの髪の毛を数本切断しただけだったが、その後の彼の攻撃を阻止することができた。

 彼はエリーとブレイドの二人から少し距離を取った先に移動し、何かを感じ取ったのか、後方の空の彼方を気にかけていた。

「大丈夫か、エリー!?」

「直ぐ塞がるから大丈夫よ!いってぇ…!」


 二人をよそに後方を気にしだすギルバード。彼の耳には後方の空の彼方から響く低い音が入っていた。

「…なるほど、報復ということか。」


 その時、ブレイドにエクスシスからの無線が入る。いつもの冷静な口調ではなくかなり焦ったものであった。

「エリー、ブレイド!応答しろ!私だ!」


 それを聞いたブレイドはすぐに応答する。

「こちら、ブレイド。エクスシスさん…」

「早くそこから逃げろ!!」


 その言葉とともに、空の彼方から3機の戦闘機がこちらに向かってきた。

「混乱した議会が報復措置としてギルバードの抹殺を決行した!奴ら、タワーに直接攻撃を仕掛ける気だ!」

「ええ!?」


 3機のうち2機は途中で離れ、都市を浮遊するNEO LILITHの方へと向きを変え、1機だけがタワーの方へと進んでくる。空の彼方にその影が視認できるまでに来ると二人は目に見えて焦りだす。

「ちょっと待って、マジ!?」

「…かなりまずい状況だな。」

「撤退を命じる!すぐに脱出しろ!」

「無茶な!そんなの間に合うわけ…!!」


 その時、戦闘機からミサイルが数発発射される。いくつかはタワーに直撃し、爆音と衝撃が響き渡る。

「きゃああああ!!マジで!?マジで撃ってきた!!」

「脱出するぞ、エリー!!」


 二人は脱出しようと階段の方へと走り出す。その一方でギルバードの方は特に取り乱す様子もなく、空をかける戦闘機を目で追っていた。

「…。」


 引き続いて戦闘機はタワーめがけてミサイルを放つ。その内の一発が屋上に着弾し、爆発と爆風が階段へと駆けて行ったエリーとブレイドを吹き飛ばす。

「きゃああああああ!!!」

「ぐおおおおおお!!!」


 タワーの外へと吹き飛ばされる二人。自由落下がまさに始まるその瞬間、ブレイドがエリーの腕をつかむ。

「ブレイド…さん…?」

「…じゃあな。」


 ブレイドは吹き飛ばされた反動を利用して、思い切りエリーを屋上へと投げる。彼女は勢いよく屋上へと投げ戻され、床を転がる。

「ぐっ…!ブ…ブレイドさん!!」


 すぐに起き上がって駆け付けるも、ブレイドは遥か下の方へと落下していき見えなくなっていた。

「そんな…嘘よ…。」


 呆然とするエリーにギルバードの声が届く。

「人の最後とは存外あっけないものだな。」


 エリーは怒りの籠った眼で彼を睨みつける。

「ギルバード…!」


 さらにミサイルがタワーに着弾し、タワーが大きく揺れる。

「きゃああ!!」


 姿勢を崩して膝をつくエリーとは対照にギルバードはなにも動じない。彼はタワーに攻撃をしている戦闘機を目で追っていた。そして、戦闘機が再びこちらに攻撃をしようとタワー方向へ向かってきたとき、彼は待っていたとばかりに小さく笑う。

「目障りなハエは叩き落さないとな。」


 彼は足元にあった細長い鉄骨を拾い上げて構え、タワーとの距離を縮めた戦闘機の方へと思い切り投げる。鉄骨は弾丸のような速さで飛んでいき、戦闘機のコックピットへと命中する。パイロットの頭部はぐちゃぐちゃに吹き飛ばされ、操作不能となった戦闘機はそのまま少しずつ高度を下げながらタワーへと直進してくる。

「おっと…これは少しマズったか。」


 煙を上げながら、戦闘機が屋上へと接近してくる。

「噓でしょ!?ちょっと…ちょっと待って!!」


 エリーとギルバードがその場から逃げ出す暇もなく、戦闘機は屋上へと墜落し爆発する。


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