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N. E. O. S  作者: オルトマン
起源のしるべ
29/71

撃破

 ゴア・ドールの猛烈かつ、熾烈な攻撃が3人を襲う。その戦闘に対して洗練された動きは実戦に関しては半人前のエリーはともかく、経験豊富なブレイドすらも防ぐことで手一杯であり、浅羽も同様であった。時折見せる隙に攻撃を放つも、まるでその動きが読まれているように躱されてしまう。


「何なの、こいつ!!?」

 エリーの高速移動から出される攻撃は尽く躱され、彼女のいら立ちは募っていく。


(エリーの奴…覚醒してから短気になっているな。このままエリーが怒りに任せて動いてしまうと俺達まで危うい。何とかしないといけないが…!!)

 ブレイドがそう思っているときに、浅羽の刀がゴア・ドールを捉える。手ごたえはあったが、強靭な皮膚組織に阻まれたためか、かすり傷程度しか与えることができない。ゴア・ドールは後方へと距離を取る。


「きいてない…!?」

「いや…ほんの少しだけ、傷を入れることができた。」

「ホントにほんの少しじゃん!!」

 浅羽は自分の刀を見ながら言う。


「鋼鉄をも切り裂く日本刀型高周波ブレード、万切丸…。この右腕の筋力が伴えば、切れぬものはないが…。あいつの攻撃を食らってからの回避へ転じる反射が早すぎる。」

「浅羽さん…。あいつの動きは洗練され過ぎているように見えます。攻撃から、回避、間合いの取り方など…まるで、以前に多くの場数を踏んできたような…。」

 浅羽は答える。


「…ああ、こいつらは研究所に配置される前に選別を受け、生き残った個体だけが実装される。」

「やはり…。訓練されてたってことですか。」

「訓練なんて生易しいものじゃない。生きるか死ぬかの殺し合いだ。…その幾多の修羅場を乗り越えた個体にのみゴア・ドールと言う名前が与えられる。」

「そんなことはどうでもいいのよ!!どうやったらこいつを殺せるの!?」

 息を切らし、苛立ったエリーが言い放つ。


「口の悪いお嬢ちゃんだ。…どんな奴にもクセはいくつかある。それを逆手に取ってやるまでだ。」

「あの化け物から癖を見つけるですって!?防ぐのに手いっぱいなのに、何言ってんのよ!!」

「ああ、だから君とブレイドが主だって相手をして、奴のクセを誘発させろ。そこに私が渾身の一撃を与え込む。」

「はあああ!?アンタ頭沸いて…」

「エリー!!」

 エリーをブレイドが制する。


「ごちゃごちゃ文句を言うのは後だ。やるしか道はない。」

「しょ、正気!?」

「正気も何も、やるしかないだろ!俺はこんなところで死ぬのはごめんだ!!」

 そう言い放ち、ブレイドはゴア・ドールの方へと突進する。


「…それもそうよね…!」

 エリーはブレイドに続く。

 再び、熾烈な攻防が始まる。二人は攻撃を最小限にとどめ、ゴア・ドールの攻撃を誘発し、その行動のクセを引き出そうと努める。また、ゴア・ドールの意識を浅羽に向けることがないように。

ゴア・ドールから放たれる攻撃は瞬時に行われ、また、一度の攻撃後に幾つもの派生へと転じるので、それを躱す当人たちはそのクセを見破るどころではない。もし、躱すことから意識を放してしまったら、その鋭い鉤爪と牙で瞬時に肉塊にされてしまうことだろう。


 二人の戦う姿を少し離れた場所から浅羽は、意識を研ぎ澄ませ、ゴア・ドールの姿を紅い右眼で追う。彼の右眼はゴア・ドールの皮膚に隠れた筋肉の微小な動き、そして、それが戦闘時には常に両目を透明度の高い瞬膜で覆っていることを捉えた。そのため、それは目を閉じる必要がなく常に敵を捕捉し続けるため、付け入るスキを与えないことが分かる。


(瞬膜か…。恐竜の生き残りとされる鳥類が持っているから、何となくはあると思っていたが。それより厄介なのは…奴の体捌きだな。状況によって幾つもの派生があるのは当たり前だが、多すぎて見極めるのは非常に困難だ。どれが来るのか考えているうちに、引き裂かれてしまうだろう…。)

 そう考えているときに、ゴア・ドールがエリーに噛み付き攻撃を繰り出す。息を切らしていた彼女は完全によけきることができずに、肩のほんの少しだが一部を削り取られてしまう。


「クッソ…!!この野郎!!!」

「エリー!!抑えろ!!」

「ッ…!!!」

 後先考え無い反撃をしようとした彼女だが、ブレイドに諭され、それをやめる。


 その一部始終を見ていた浅羽は、勝機を確信したかのようにニヤリと笑い、鞘に刀を納めて抜刀の体勢に入る。そして、再び彼らの激戦を見据え、時が来るのをじっと待つ。

 二人がいよいよゴア・ドールの猛攻に疲弊してきたときに、それの首と顎の筋肉の収縮が起こり始める。その一瞬を待っていたとばかりに、浅羽は思い切り地面をけり上げて、急接近し、渾身の力を込めて抜刀する。


 放たれた刀身はゴア・ドールの開いた口へと向かい、口端を出発点として切り進み、顎を残して頭部を切り飛ばした。切り飛ばされた頭部と体からは鮮血が噴き出し、浅羽の白衣を赤く染める。


「や、やったのね…。」

 疲弊したエリーはそのままペタンと座り込む。息を切らしたブレイドは、膝に手をつく。


「はぁ…はぁ…。」

 浅羽は刀に着いた血を振り払って、鞘に納める。


「二人ともよくやった…。おかげで、こいつを倒すことができた。」

 息をついたブレイドが浅羽に聞く。


「こいつのクセは何だったんですか?」

 ぴくぴくと筋肉が痙攣しているゴア・ドールの死体を見ながら、浅羽は答える。


「詳細はわからんが、こいつは外部情報を視覚に大きく頼っていたんだと思う。こいつは常に戦闘時は瞬膜で目を覆っていた。それは、眼の保護と同時に、相手の動きを一瞬たりとも見逃さないことにも一役買っていた。だが、口を使った攻撃の時はそうではなかった。」

 彼は切り飛ばした頭部の元へと歩み寄り、しゃがんでその眼をまじまじと見る。


「エリーに喰らい付こうとしたときに、こいつは目を閉じたんだ。瞬膜で常に保護しているのにも関わらずにな。瞬膜を持っている大抵の動物は、獲物を捕らえる時は瞼は閉じないんだが…。まあ、いい。」

「…浅羽さん。」

「疲れたことだし、少し休憩しようか…。積もる話もあることだしな?」




同時刻―スペンサー管轄第4リブリ海底研究所、セントラルホール。

ノメリアとアリアがセントラルホールへと足を踏み入れる。そこにはモニターの光に照らされた血まみれの赤髪蔵馬が横たえていた。


「赤髪博士…!」

 アリアは悲しげな表情で口元に手を押さえる。


「久しぶりの再会がこれか…なあ、赤髪。」

 ため息をついたノメリアは赤髪の元に歩み寄り、屈んで彼の顔を見る。


(安らかな顔してんなぁ…目を閉じたのは”Queen”の誰かか。…大事に育てた娘たちから殺される気分ってのは、どんなもんだったんだろうな?)


「…?」

「ノメリア…」

 ノメリアはアリアの方に振り向いて言う。


「すまねえ…ちょっと、一人にさせてくれねえか?」

「…わ、分かったわ。」

 そう言って、彼女はセントラルホールから出ていく。それを確認したノメリアは赤髪の顔を見て鼻で笑う。


「なるほどな…。こいつは少し、面白い展開になりそうだ。」

 ノメリアは紙切れに何かを書き、それを目立つように赤髪の胸ポケットへと入れる。彼は立ち上がってから、アリアの待つ出口の方へと向かう。そして、最後に赤髪の方を一瞥してニヤリと笑いセントラルホールを去る。


「…別れは済んだ?」

 待っていたアリアが彼に聞く。


「ああ…数少ない俺の友人が減って、悲しいもんだ。」

「赤髪博士は良い人でした…。誰にも分け隔てなく接してくれる…優しい人でした。それがこんな形になるなんて、残念で仕方ありません。」

「…そうだな。ともかく、先に進もうか。」

「ええ…。」


 2人は廊下の奥へと消え


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