第1話 暗殺者と神と転生
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今から十年ほど前の話である。
仕事でハワイに出張に出かけたときのことだ。その日は何の苦労もなくターゲットの暗殺に成功し世界各国に存在する暗殺業界の窓口、そのハワイ支部で報告と報酬を貰おうとした時の事だった。
八歳程度の少女が体中を傷だらけにして窓口へと向かって居たの出る。それが今の娘の最初の出会いだった。暗殺業界では年齢は関係なく殺すスキルさえあれば誰でもなれる職業で当時の娘は体の傷で顔を歪め暗めの印象だったのが今でも思い出せる。
その姿を見て私は十歳のころの自分を思い出し、思わず窓口の女性に少女のことを聞いた。どうやら親を亡くした孤児であるらしい。私は急いで彼女に駆け寄ろうとしたとき、大柄の男が道をふさぎ、
「俺のモノだぞ?」
とどこか下卑た顔でこちらを見た。
その瞬間私はその男を殴り飛ばしていた。そして男の元の顔が分からなく程めちゃくちゃに殴りつけた俺はそこでハッとする。
すでに男は動かなくなっていたからだ。当時の自分を思い出し感情的になってしまったのかもしれない。
私はフラフラと立ち上がると受付を見た。どこか観察をしている目を向けているが、私はそれを無視しいまだ座ってうつむいている少女に向かって手を差し伸べる。
「生きたければ、私ときなさい」
少女は私の手と顔を見てその顔を縦に振ると手を取った。こうして少女は私の娘となったのである。
そんな昔のことを思い出していると自分がいつの間にか真っ白な空間に佇んでいるのに気づき呆然とする。
「ここはどこなのでしょうか?」
声が空間に反響すると不意に真っ白な空間が歪がみ1人の少女が姿を現した。
少女の容姿は今まで見たこともないほど可憐な顔をしており、その身に纏う白いドレスがより一層幻想的に写している。
少女は微笑むとドレスのスカートの裾を摘み少し持ち上げると一礼(昔の英国の貴族のような礼儀作法)した。
「お初にお目にかかります。私はこの世界ヴァルハラスの2代目創造神ウィーネスと申します。この度白崎 一香さん、あなたは異世界転生する権利を得ることになりました。」
「はー。そうなんですか?」
「はい。あなたは今から第二の人生を生きてもらいます」
「へっと・・・。いまいち状況が分かっていないのですが?」
「そうですよね。いきなり転生といっても混乱するのは当たり前です。それでは白崎さんあなたはファンタジー小説を読んだことはないですか?」
「ないですね」
と私ははっきりとした口調で言う。
「・・・・・・・。それではテレビで魔法を使うものや死んだ主人公が別の世界へと生まれ変わるアニメなどは?」
「わたしはもう40ですし、うちの娘ならともかくそんなのは一切興味がありませんね」
「・・・・・・・・・。(ボソッ)あれ?可笑しいな地球の神は話がすぐ分かる人を送るとか言ってたのに話違くない?私だって2代目になってまだ1年もたってないのに説明するなんて面倒なことしたくないしどうすればいいのよ!」
と少女はぼそぼそとこちらに聞こえないように言っているのだろうがばっちり聞こえている。
「あの?」
「は、はい!」
「敬語なんか疲れませんか?いつも通り話されて結構ですよ?」
というと少女はどこか驚いた表情になったが次にはもう砕けた表情になると現代の若者のような口調へと一変した。
「ありがとう。いや私の父に少しでも丁寧な態度で接しろとか言われてたから」
「いえいえ」
「ところであなた本当にわからないの?」
「そうですね。たとえ今知ってたとしても私は転生には興味がありません」
「困ったわね・・・」
「私よりも別のそちらに詳しい方々のほうがよろしいと思いますので、地球のあの世に返してもらってもよろしいですか?」
と言う私の言葉にどこか苦々し気な表情を浮かべた少女は言った。
「できないのよ」
「え?」
「だから!あなたはもう地球には戻れないの!」
私はその言葉に衝撃を受ける。
そして少女に掴み掛らんとする勢いで迫ると少女は顔を赤くして私を見つめた。
「なぜですか!」
「いやだって、そもそもこの転生は地球の神がずっとそちらにいてもいいですよて言う人を決めて送ってくるだけだし、私はまだ詳しいことはわからないもん。どうしようもないじゃない・・・。」
だんだんと小さく気弱な声になっていく少女の声を聞き私は冷静さを取り戻した。
娘のその後を死んでも見守るつもりだったのでそれが出来ないことを知りつい興奮してしまったのだ。
まさかそれもできなくなるとは私は親失格だな・・・。
そんなこと思い私はいまだ涙目で鼻をすする少女を慰めるためにハンカチを差し出し優しく声をかけた。
「すいませんでした。少し興奮してしまったのでつい」
少女はハンカチを受け取ると鼻水をかぐ淑女にあるまじき行為だがそこは目をつむろう。
「ありがとう」
「はー。それでは私はその異世界で過ごせばいいのですね?」
と私が言うと少女は私を見上げる。
「いいの?」
「地球には戻れないのですし、それにいい大人がグチグチ言うのも恥ずかしいです。娘にも前だけ見て進みなさいと昔から言い聞かせてきました。親である私がそれを行わなけば親の面目が潰れます」
「ありがとう」
と少女は花が咲くような満面な笑みを浮かべる。
「それではまず私は何をすればいいのですか?」
「えっと、まずあなたの転生先を決めなければならないんだけどどこか希望はある?」
私は少し考える。これはあれだ不動産屋にいった気分になる。私はとりあえず自分が希望する物件、いな転生先を口にした。
「そうですね。あまり欲はありませんがしいて言うなら身体能力が高くて不老とは言いませんが長寿命で、不死まではいかずに瓦礫に埋もれても怪我だけで済むような体がほしいです」
「思いっきり欲が出てると思うけど?」
「そうでしょうかね?」
と私が言うと少女は手をあげブツブツと何かをつぶやく、
「万物創造発動」
すると足元に奇怪な模様が出現すると骨が出現しその骨を埋めるように肉体が徐々に出来上がって行く、そして最後には背丈が私くらいで金髪の端麗な顔を持つ青年へとその姿を完成させたのである。
「こ、これはいったい」
「私が使えるスキルっていう特殊能力の一つよ。生物を作れる唯一の能力」
「すごいです。これが私の転生先ということでしょうか?」
「その通りよ!あなたの希望通りほかの人種よりも長寿命で怪我をしてもすぐに再生する体を持ってるし、どの人種よりも身体機能が上どっちかっていうと私たち神に近い存在を作ってみたわ。神人って名付けましょう」
とどこか得意げな顔をする少女は持ち上げられさらに聞いてきた。案外ちょろいのかもしれない。
「あと欲しいものはない?私のできる範囲なら今みたいなスキルでもあげられるわよ?」
「あなたがほしいです」
私は何のよどみもなく堂々と言い放っていた。
「へ?」
とどこか間抜けな少女の声が響くと、私は繰り返し淀みのない口調で言い放つ。
「ですからあなたが欲しいです」
それを聞いた少女の顔は先ほどの得意げな表情からたちまち真っ赤になるとボフンッ!音を立ててこちらを向いた。
「それはどういう意味・・・?」
「私はあっちでは女性との関係はありましたが、結婚は仕事のせいでできずに死にました。
そしてここにきて今まで見たことがないほど可憐なあなたに一目ぼれしたようです」
「ひ、ひとめぼれ!」
私の心からの言葉に少女の顔がさらに顔を赤くする。
「私は本気も本気です!必ず幸せにします!」
少女は俯くといきなり大きな声を上げ、肩から荒い息をする。
「転生したあなたが死ぬまで私は見守る。それで私があなたのものになるかそこで判断するは!」
「その言葉忘れないでくださいね?」
と少女は顔を赤くしながら腕についている時計のようなものを見た。
「そろそろ時間ね・・・。あなたをこの肉体に移すからこっちに来て」
「わかりました」
少女は息を吐くと目を瞑る。私もそれに習い目を瞑ると突如体が暖かくなったかと思うと体に浮遊感が生まれる。
「な!」
と声を上げると少し元の自分の声より高めの少年の声となり驚いて目を開くとそこには笑みを浮かべた少女が写っていた。
「成功よ。これであなたものこの世界の住人になった訳だけどご感想は?」
私いや、僕は手を開いたり閉じを繰り返して、腕を動かし体に異常がないかを確認すると頷いた。
「すごくしっくりきます。まるで昔から使っていた体みたいな感じです」
「あなたの肉体の一部を使わせてもらったからだと思うわそれと・・・。」
少女は腰についていたバックからさらに別のバックを取り出すと僕にそれを渡した。
「何ですかこれ?」
「これから行くために必要なものを一式。1年間分の食料とお金それとあなた分からないだろうから本を10数冊入れてるわ」
「そんなに入ってるんですか?」
「これはマジックボックスって言って見た目よりもたくさん入る仕組みになってるの。しかもこれは入れたもの状態が止まるから新鮮なまま食材を使えるしあと城1つ分くらいの容量はあるわよ」
まさか体ももらってそんなものまでもらえるとはますます彼女のことが好きになって行く、
僕はもらったマジックボックスを腰へとつけると神ウィーネスを見つめる。
「ありがとうございます神様。何から何まで」
神ウィーネスはどこか照れた表情をするとそれを隠すようにそっぽを向く、
「ウィーでいいわよ」
「!。わかりましたウィー。僕のこともイチカと呼んでください」
「いいわよ。イ、イチカいってらっしゃい」
と僕の目をしっかり見てウィーは言った。僕はどこかうれしく頷く、
「行ってきますウィー。」
そうして僕は異世界へと転生したのであった。
私から僕へと変わりました。
一香はとっても大胆です。
次回に重大発表が!