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1−9

――今まで明るかったよ、さようなら……懐中電灯さん――




 彩穂の心のささやきと行動。

 それはなんと――、無線をいじっている男が目を反らしている間に、近くに置いてあった懐中電灯をこっそりと蹴飛ばしていたことだった。すると懐中電灯は、石段を跳ねていきながらもカツカツと小気味よい音をたてて階下に落ちていく。


「お、お穣ちゃん! どうしたのー?」と驚く男。


「かっ、かたみの、かっ、かいちゅーでんとーが……えっ……ぅっ……」


 ぽろぽろと涙をこぼして、その場でしな垂れる彩穂。やっぱり目薬はいらなかったみたい、と先ほどの獣耳やりとりを述懐する。

 そしたら、その様子を見た男が素っ頓狂な声で、

「かっ、かたみ……?!」と慌てふためき、彩穂が

「――そうなの……」とふぇーんなんて泣き叫びそうな顔を差し向けるのだ。


「……なら、今から取りに行ってあげるから」


「でも……、あんなに下まで……いっぱい時間がかかる。だから――」


 ここで一度引いて不自然にならないように。警備の男にはこれ以上怪しまれないようにしなくちゃと、慎重に策を弄する。


「じゃあ、一緒に――」


 あっ――、まずいっ! 彩穂は慌てふためき咄嗟にこういった。


「あっ、あっ、あのーそのーあ……しが……」


「足?! そうかそうか……」


「あー、しー……」


 とりあえずは顔を伏せて足を投げ出す素振り。


 すると、「あー、じゃあ俺が――」とか切り出し始め、やけに凛々しい顔を向けて言いかけたセリフを芝居がかった動作で止める。

 きっとその後のセリフは決まっているのだろう。

 あの仰々しいまでの仕草と誇らしげなその表情は、目の前の十五になったばかりの女の子に――そう、今まさに、後数センチばかりで気持ちが完全に傾くこの瞬間に――いいように騙されてしまうことを微塵も考えていない表情だった。それは滑稽で見事なまでの間抜けさ加減を表わしているというのに。


「――今から取りに行ってあげるからな」


 計算通り。

 月夜に照らされた彩穂の瞳が妖しく光り、男の瞳もその光を別の意味に受け取って輝いた。


「す、すいません……」


 心とは裏腹に、これでやっと駒を動かせたと思う彩穂。


「いいってことさ。こんなにも美人さんなお穣ちゃんの涙を流させないこと。それがこの場でのおじさんの運命なんだから」


「あっ……」


「いーい、男ってのは一生のうちに何人の女性の涙を止められるかが大事なんだよ」


 語る男のその姿がいくらさまになっていても、これからの流れだとその言葉が詭弁そのものだ。


「……」


「だからこれを持って、待ってなさい」とさらに言って、手に持っていた懐中電灯を手渡す。


「あの……?!」


「大丈夫。心配しなくてもすぐに帰ってくるよ。君のために――」


 男はキザなセリフを連発して階下へと消えた。

 しかし、ほんのひとかけらも心に響かなかった彩穂は、残酷にもこう思う。

 女が強くなるには、自分の弱さで武装することなのに。それと、懐中電灯のスイッチを消しておけば、あの駒は完璧なる安全パイだったなー、と。

 さあ、急がないと――。

 今の時間だとぎりぎり間に合うぐらいだろうか。あの警備の男に何も連絡が入っていないところから考えると、優介はきっと見つかってないはず。捕まっていなければ、もう入口にたどり着いているはずだから――。

 思い出したようにサクラミステリーの入口に向かって駆けだす。

 くすりと笑いながら。

 あの男の白々しい台詞が頭をかすめながら。

 それでも、心の底から真剣に言われてみたいと願いながら。

 やっぱり彩穂は、あまり颯爽とはいえない動きながらも懸命に走っていたのだった。













































はい、ここまで目を通してくださった方ありがとうございます。今回は短くてすいません。

どうしても次のところを考えるとここで切らなくてはいけませんでした。

そしてとうとうジャンルをファンタジーに変更してしまいました。それと作品名を『蒼月の誓い、サークルの空』から『夜明けの月、サークルの空』へと試験的に変更します。実は某人気小説にあやかろうとしています。また変更するかもしれませんのでご了承くださいませ。

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